zu032gl    グラウンドワーク・第5話

大江川の水に親しむ

 グラウンドワーク・第4話で記したように、(財)河川環境管理財団の河川整備基金助成の活動について、大半の企画が終了したので顛末を紹介します。


 地域住民、企業、行政がパートナーシップを組んで地域環境改善活動を進めているグラウンドワーク東海は、昨年(平成15年)9月に、特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を取得した。この取得を機会に活動を広げようということになるが、広げるには何よりも財源が必要となる。各種の助成制度が拾い上げられ、担当が割り振られた。私には(財)河川環境管理財団の河川整備基金助成申請をつくってほしいという依頼であった。事業内容も考えてくれという依頼にはいささか面食らったが、多くの人の知恵や協力で今年2月13日付けの申請に漕ぎつけた。各種申請が不採択になる中であまり期待もできなかったが、6月に入って採択されたという情報を得た。そして、5月28日付けの決定通知書が届いた。助成金の限度額いっぱいの500万円の申請に対して200万円の決定であったが、その後いろいろ聞くところによるとかなり幸運であったようだ。快哉を叫びたいが、理事長の活動を始めとし、今までの活動も評価されたのではないかと私は推量している。
 さて申請の内容であるが、「第1回水環境グラウンドワークin東海・大江川の水に親しむ」と題し、「大江川をステージに、水生生物の観察等を通じて河川環境についての啓発を行い、その成果を発表すると共に東海3県下の河川環境改善団体の活動内容や体験発表などを行うフォーラムを開催する」とした。一宮市の中心部を流れる大江川を舞台に企画したのである。具体的には、小学生による大江川観察活動、河川改善団体の活動パネル及びビデオ作製、フォーラム開催等である。しかし、助成額が要望の半額以下になったことにより、事業をどのように縮小するか、再検討をしなければならない。ところが世の中よくしたものである。舞台裏で何があったか詳しくは知らないが、大江川の改修事業に携わる新濃尾農地防災事業所から、フォーラムの部分を事業所主催でやってもいい、という申し入れがあったのである。この部分を引き受けてもらえれば、ほぼ当初通りの事業を行うことができるのである。グラウンドワーク東海で事務局を持つことにして、各種の事業が進行を始めた。
 グラウンドワーク東海にとってフォーラム等の開催はもう手慣れたことであり、メンバーも充実している。最も気がかりは小学生による観察である。企画するに当たって、小学校の了解を取っているわけでもなく、その下地もできていない。進行を始めてからの私は、主にこの部分にかかわった。といっても、ほとんどは一宮市職員でグラウンドワーク東海の推進委員でもあるIさんを中心に、一宮市職員の方にやっていただいた。また、小学校に顔なじみのグラウンドワーク一宮実行委員会のSさんの存在も大きかった。Iさんと連絡を取りながら方針をまとめ、7月8日、8月16日には関係者一同の会合を持ち、指導していただくカウンセラー、観察実行日などを決めていった。また、IさんやSさんにより小学校への説明もしてもらい、参加する児童も募っていただいた。


9月19日、第1回目の大江川観察会が向山児童館で開かれた。市内中心部の向山小学校、大志小学校貴船小学校から各5名の小学生が集まった。予定などを説明の後、ペットボトルを活用して生物の採取器作りを始めた。私もこのような工作をするのは久しぶりであり、楽しく手伝いをした。全員ができあがると、それを持って大江川に出かけた。できた採取器に紐を付けて橋の上から流した。そして、紐をたぐり寄せて引き上げるが、流れが速いせいか収穫物はほとんどなかった。Ph、BODの水質検査も学校ごとのグループに分かれ、大江川の管理者である宮田用水土地改良区の方々の指導で行った。
 第2回目は10月17日、この日は大江川の歴史や施設を知るということで、大江川河畔を歩いた。これぞ私の出番であったが、愛知県ウォーキング協会の例会日と重なり、私の役割もあって欠席となってしまった。今もって残念であったと思う。
 第3回は11月7日、この日もまず大江川に水質検査と生物採取に出かけた。水量がかなり減っていたので、指導者の方が川に入ってタモを使い、魚や貝類などを採集された。結構さまざまなものがいるものである。その後、この活動を11月20日のフォーラムで発表するための検討が午後3時までかけて進められた。私は用事があって途中退席した。



ペットボトルを利用して採取器の制作

採取器を大江川に流して生物採取

水質検査

児童館でのお話し
さてこの助成事業の総まとめ的な実行日を11月20日に決めた。この日は一宮グラウンドワーク実行委員会が開催する「第6回大江川クリーン作戦」の日である。午前はこのクリーン作戦に参加してもらい、午後はフォーラムに参加してもらおうというわけである。
 そして、11月20日は絶好の日和となった。クリーン作戦は午前8時30分より大江川河畔の大乗公園に集合して始まった。私はそちらのほうに参加できなかったが、報告によると、例年通り800人ばかりの人が集まり、河川内、堤防上と清掃が行われた。(参考に第4回目の状況は大江川クリーン作戦をご覧ください)
 私はフォーラムの会場である一宮スポーツ文化センターに朝から詰めた。午後からの来場者のためにグラウンド活動の紹介パネルを展示するためである。パネル作製及び搬出入経費に1団体あたり2万5千円の補助を出すことにしたら10団体より参加申し込みがあった。午前中、この展示会場の責任者として準備に当たった。パネル作製を補助することによって、今回のグラウンドワーク東海の事業に協力してもらうと共に、今後の活動にも活用してもらおうという趣旨である。
 午後のフォーラムは「大江川 水土里(みどり)フォーラム」と名付け、副題を「水はたからもの」とした。最初に「秋のおしゃべりコンサート」というアトラクションで気分を和らげていただいた後、中日新聞論説委員の飯尾歩氏の「水はたからもの」という基調講演である。そして、「子どもたちによる大江川に関する取り組み」として、小学生3団体の活動報告、最後に「大江川の歴史と潤いのある地域づくり」と題したパネルディスカッションである。会場の入りが気になったが、何と300席の会場に400名以上の人が押しかけ、大盛況の中で始まった。
 私の期待は何といっても一宮市内3小学校による活動発表である。最初に行った美和町、稲沢市の小学生はすでに何回も経験があるようで慣れたものである、素晴らしい。最後に一宮市となったが、3小学校が「大江川の今」「大江川の歴史」「未来の姿」とテーマ分けして発表した。Iさんから11月7日の後の状況を聞いたとき、今の小学生は達者だ、活発だと聞いていたが、全くそうであった。カウンセラーの方の指導もあろうが、美和町、稲沢市に劣らない堂々とした発表である。寸劇には会場全体が爆笑で包まれた。

フォーラム(パネルディスカッション)

フォーラム(小学生活動発表)


展示会場風景


こうして、フォーラムも盛況のうちに終わった。展示会場も結構にぎわっていた。後はビデオテープの納入を待ち、会計をまとめ、河川環境管理財団への報告を今年度中にするという作業が残っているが、記憶が薄れないうちにと思ってこの文を書き始めた。次にこれまでの感想を書いてみる。

●最近の小学生の行動を新聞等でみるにつけ、自然に触れる機会の重要性、必要性を感じていた。それがこのような形で実現した。参加した小学生、学校の先生にこの活動の感想を聞きたいと思っている。
●仕事以外で助成を受けて事業を進めることは始めての経験である。報告書を書いて助成金が手元に届かないと終わったと言えないが、これからは行政もNPOなどの活用を考えているようなので、この体験を今後に生かさねばと思う。
●フォーラムを別の事業で行ない、河川整備基金助成はビデオやパネル、のぼり旗の製作などに多くを使った。これは今後の活動に活用できるもので、財産として残ったのはありがたい。
●今回「第1回水環境・・・・」としたことは今後も行うということである。この助成は二度と受けられないので、来年度以降どのような形で行うのか、苦労、いや、楽しみの種が残った。
●グラウンドワーク東海は有識の人が多く、私にはとても無理と思えることをみごとにこなしていく。ただ人材に片寄りがあると思う。もう少し年齢層を始め、幅広く参加してもらう必要がある。
●私にとって辛いのは、ウォーキング活動とグラウンド活動が、共に土曜日・日曜日で重なることが多いことである。ウォーキング活動を優先と考えているが、そのようにいかない場合も多く、共に中途半端になることは避けねばならない。

最後に、フォーラムの主催者である新濃尾農地事業所からいただいたお礼状から一部を紹介してこの文を終えたい。



 『私たちは、このフォーラムを通して、3つの“すごい”を見つけることができました。

◎一つは、大江川の改修事業に携わる私たちの仕事が、1000年の歴史の
流れの中から、現在、そして未来に向けて、さまざまな人々や子どもたちの
大江川に対する思いや希望が一つに連なった大きなベクトル(方向性)を持った
“すごい”ものであることを、自覚することができました。
◎二つ目は、子どもたちの“すごい”です。水・土・里について大人以上に
一生懸命に考え、なんとかしよう!なにかしなければならない!と、
力強く訴え、会場の大人たちに新鮮で“すごい”感動を与えてくれました。
◎三つ目、最後の“すごい”は、会場に来てくれた大勢の皆さんの“すごい”
熱気でした。私たちは、今回、一宮市、水土里ネット宮田用水(土地改良区)、
グラウンドワーク一宮実行委員会やグラウンドワーク東海と協働して準備を
進めてきました。そして、会場の皆さんは、私たちに、環境を守り、潤いのある
地域作りを進めるためのこのような取り組みに、さらに勇気を与えてくれました。』


                              (平成16年12月21日)

川柳&ウォーク