zu020 グラウンドワーク・第2話
グラウンドワーク東海 (T)


 昨年(平成14年)からグラウンドワークという地域活動に、少しずつ係わるようになった。フォーラムにも出席し、大江川クリーン作戦という実践活動にも参加した。NPOの研修会にも参加した。そして「グラウンドワーク東海」という団体の協力会員となった。その後正会員にもなった。
          
(大江川クリーン作戦は次をクリック 「グラウンドワーク」
 その「グラウンドワーク東海」は7年間の活動実績をもとに、特定非営利活動(NPO)法人の認証を得ようと、平成15年6月7日に設立総会を持った。その席上、私は推進委員の委嘱を受けた。グラウンドワークが何たるものか、自分の中にきちんとした理念ができたわけではなく、また、自分に何ができるのかはっきりしないままの受託である。難しく考えたら引き受けられないし、これから体験や勉強しながら培っていけばそれでよいという態度である。そして、私が何もできなくてもそれは私の責任ではなく、私に委嘱した人の責任であると考えると全く気楽である。


 それでは、グラウンドワークとは何か、グラウンドワーク東海は何をめざしていくのか、設立主旨書によって記してみる。
 グラウンドワークは1980年代に英国で始まった「地域の身近な環境(グラウンド)を整備・改善する(ワーク)運動」で、その最大の特色はグラウンドワークの手法を実践する非営利の組織(グラウンドワークトラスト)を中心に、住民や自治体、企業など、地域の関係者がパートナーシップを組んでプロジェクトを遂行する。美しい景観や地域の有形・無形の伝統文化の保全・復元から、親水公園づくり、地域の社会環境・教育・福祉の改善まで、非常に広い意味の環境創造活動である。
 日本においては1995年9月に(財)日本グラウンドワーク協会が設立された。東海地域では、1996年5月に「グラウンドワーク東海地域連絡協議会」を設立し、今日に至った。特定非営利活動法人グラウンドワーク東海は、地域住民・企業・行政がパートナーシップを組んで、それぞれが汗をかき、知恵を出して、具体的、かつ、身近な環境改善を実践するグラウンドワークを普及・啓発する。それと共に、グラウンドワーク活動団体を支援する諸行事を行うことにより、広く一般市民に対し豊かな環境の実現や地域社会の発展に寄与することを目的としてあげている。
 いささか堅い文からの引用であるが、要点はいろいろな立場の人が垣根を取り払って協力しあい、地域環境を良くしていこう、そのためにグランドワーク東海は支援をしていきます、というわけである。

 設立総会の後、グラウンドワークフォーラムが開催され、名古屋大学教授をコーディネーターに(財)日本グラウンドワーク協会の専務理事、NPO法人水環境北海道の事務局長、NPO法人グラウンドワーク福岡の理事、NPO法人ちばMDエコネットの代表、さらに、グラウンドワーク東海の推進委員らによるパネルディスカッションがもたれた。この中で様々な活動があること、驚くべき大きな活動ができることを知ると共に、私にとってキーワードになる言葉がいくつもあった。
  ・会員が楽しくできること。会員にメリットのある会にすること。
  ・共感できる人を大切にすること。人を得たら離さないこと。
  ・会員を増やす活動を常にすること。
  ・地域にあった良い企画をすること。
  ・実績を積み上げること。活動が目に見える形にすること。

等々である。


 さて、環境というキーワードで私に何ができるのか、私は何をめざしていけばよいのか、いくら無責任でも考えてみなければならない。  
 私が得意なこと、楽しくできること、それは言わずもがな、ウォークである。幸いウォークにも環境というキーワードがある。グラウンドワークと結びつくであろうか。
 
 ウォークと相対するものは自動車である。自動車は便利である。しかし、その利便性を追求するあまり、環境面、健康面、いろいろな面でその弊害が大きくなってしまった。
 (1)そこで、自動車の影響が大きい大気環境、つまり排気ガス問題にまず目を当ててみよう。大気汚染も自然浄化ができる範囲内で収まっている間は、問題にならなかったが、今はそれをはるかに越えている。便利さゆえにいったん越えたものはなかなか元に戻らない。排気ガス問題について、ウォークが効果があるかといえば、今まで自動車に乗って用を足していたことを歩くことに代えれば、効果がないとは言えない。「1駅、2キロ、3階」というウォークの勧めがある。1駅間は、2kmまでは、3階までは歩きましょうというのである。これは健康上いっていることで、こうした生活上必要な行動を自動車からウォークに代えることの環境上の効果はさほど大きなものとは言えないであろう。
 自動車が減ることは騒音問題も少し解決するが、ウォークが自動車の代わりになることはわずかな部分である。
 (2)次にゴミ問題に目を向けてみよう。自動車で通れば汚れたところも一瞬に過ぎてしまう。車の中という閉鎖領域が自分の居場所ゆえか、私自身でも歩いている場合に比べて苦になる度合いはかなり小さい。歩いていると逆に回りすべてが自分の領域と感じるのか、捨てられているゴミは気になるものである。特に緑の中のゴミは苦になる。これは万人がそうであろうと思う。気持ちの良い環境を体験すれば喜びであり、悪い環境には嫌悪を感じ、それが改善の意識に働く。自動車では見過ごしがちな自然や地域環境を自らの領域と体感して次の行動に移すことに効用があるのではなかろうか。ゴミ問題についてウォークは、ウォークそのものによる直接的効果より、ウォークによって得られた体感の間接的効果に大きな意味があると思う。
 (3)ゴミ問題以外についても、人間の効率化を求める欲求に野外環境は瀕死の状態に陥っている。道路や河川始め至る所のコンクリートやアスファルトコンクリート化、生活排水の垂れ流し、多量強力な農薬の使用、公徳心の欠如等々である。しかし、行き過ぎを憂える人々によって改善が図られ始めた。地域環境を優しい良いものにしようという動きである。行政もそういう団体の後押しを始めている。これらの活動は一部の積極的な人々だけでは成り立たない。多くの理解者、協力者が必要である。野外を愛する人々が、こうした活動に参加する可能性は大きいと思う。屋内に閉じこもりがちの現代人を、ウォークによって野外を知り、野外を愛する気持ちを育てる。風が吹けば桶屋が儲かる式の話ではあるが、ここにウォークと地域環境を結びつける因子がある。環境改善にボランティアから入るより、ウォークからの方が入りやすい。
 こうして論法を進めてくると、ウォークとグラウンドワークが結びついてくる。
 1)ウォーカーの集まる場所でグラウンドワークの話をする。
     気持ちよく歩くためには気持ちよい環境が欲しい。そのために、小さくても
    いいし、わずかな時間でもいいから環境改善運動に加わろう、楽しく歩かせ
    ていただいているお礼にそんな活動に参加しよう、と呼びかけよう。
 2)グラウンドワークの実践の場でウォークの話をする。
     堅い話、働くだけでは楽しみも少ないので、付加価値をつけるために、
    健康づくりの話としてウォークの話を取り入れる。グラウンドワーク活動の
    後にウォーク大会を催すということも考えられる。ウォークの中で更に
    グラウンドワークの目が育つということもあろう。
 いささか掘り下げ不足で、ひとり勝手な論法であるが、今の私にはここらあたりが働き場所であろうし、ここらあたりで活用していただければありがたい。   


 現在グラウンドワーク東海は、正会員106、協力会員68の個人・団体の参加者である。会長が挨拶の中で、今までは「知恵を出し、汗をかいて」としていたが、今日からは設立趣意書の中にもあるように「汗をかき、知恵を出して」と逆にしたといわれた。これは常日頃から私の信条とするところで、大いに共感する。現代人(知識人)は論ばかりして行動に移さないことが往々にある。まずは実践である。そして出てきた知恵は地に着いた知恵である。これからどのような歩みを見せていくのか、多くの協力者を得ながら活発な活動がなされていくのを祈るのみである。こういったことを書くと、ますます会長の罠にはまる気がするが、そこは十分に心しておかねばならない。
                              (平成15年6月20日)


川柳&ウォーク