“もう父が逝って二十八年が過ぎた。昨日、妻が「これ覚えてる?」と、古い電話帳を持ってきた。手に取ってみると、懐かしい父のきれいな字が、何ぺージにもわたっていっぱい書かれた電話帳だ。
今の地に越してきた五十五年前に、父が母と苦労して作っていたことを思い出す。めくっていくと、所々、四年前に逝った母の宇で加筆や訂正もされていた。本当に懐かしい思い出いっぱいの電話帳だ。仕事の関係もあって、県や市の役所から、さまざまな商店に至るまで事細かく網羅されていた。きちょうめんな父の性格が表れており、父母や私、妹も、みんなで電話帳を利用していた。私たち家族はみんな、きれいな父の字が読みやすく、大好きだった。
妻も父とは二十年近く一緒に過ごしたのだが、今でもこの電話帳を使っていてくれたのだと知り、とてもうれしかった。私もすでに、父の年を超えている。多少の加筆をして、この電話帳に私の痕跡を残したいなと思う。私の子どもや孫は将来、この電話帳を見たとき、懐かしんでくれるかな。”(8月3日付け中日新聞)
愛知県豊橋市の浅野さん(男・67)の投稿文です。古い電話帳、こんなところにも父の思い出があった。何でも新しい方がいい、少しでも捨てた方がいい、これがすべてでないと言うことである。そして几帳面な人のものは役に立つのである。
携帯電話やスマホが増え、固定電話が減ってきたと言ってもまだまだ固定電話は多い。ところが今は、個人情報保護と言って電話番号が公開されることは全く少なくなった。これが全く不便である。急ぐ時に困り果てる。ボクの村では固定電話の一覧表が配布されていた。それが平成13年度版で最後になった。話しているとこれを今も活用している人が多いことを知る。大切に扱っている。ボクの家もまさにしかりである。この一覧表にいろいろなことを書き加えている。後日子供達の役に立つことはないだろうか。