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私 の 宝 物
このことを始めるきっかけになったのは、昭和40年頃、Yさんというお年寄りと知り合ったことにある。当時私はまだ20歳、Yさんは70歳くらいだったと思う。Yさんは何でも保存しておく人であった。昔の人の常というような尋常なものではない。旅に出ればパンフレットや入場券は当然のこと箸袋や時にはアイスクリームの蓋さえ持って帰る。それをきちんと台紙に張り、少しコメントを加え製本される。たちまち立派?な旅行記になる。 常日頃から私はこの人を尊敬の目で見ていたからその影響を受けるのは早い。私もどこかへ出かけたり何かあると、アイスクリームの蓋とまではいかないが、記念や記録となりそうなものがあると持ち帰るようになった。パンフレットやチラシ、入場券、箸袋、領収書、土産や弁当の包装紙・・・等々。そして、関連した新聞記事を見かければそれを切り抜き、時には感想文や行動記録を書きそれらと一緒に綴じ込んでおく。また、家庭内でも捨てるのが惜しい手紙や子供の絵などがあればそれらを分類して、まず仮のファイルに綴じる。そしてほぼ1冊になったところで、背巾の調整がきくB5サイズのファイルに綴じ直す。表題も「路」とつけ、背表紙に項目や期日を書いておく。 |
量が増え始めたのは、行動が活発になった昭和50年頃からである。それが今や厚さ8cm前後のファイルが110冊を越えた。自室の鴨居に棚を付けて並べてきたが、もう2間の長さ2列(7m20cm)が満杯になり、別室の本箱に納めるはめになっている。私にしてはよく続き、よくためたものである。日帰りや数泊の旅行、宴会や親睦会の行事をひとつの分類にしているが、やはりこれが最も多く34冊になっている。約22年続いた川柳東浦の会などの川柳関係のものは10冊ある。最近はウォーキングや登山の記録が毎年2冊のペースで増えており、22冊にもなっている。その他、映画・演劇の鑑賞、家計簿、保健、職場関係等と分類している。 ここまでくるとこれはもう「私の宝物」である。お金で買うことができない貴重品である。「火事になったら真っ先にこれを出してくれ」と家族に言っている。しかし、困ったことに家族にとっては全くの紙屑、ゴミでしかない。「これだけあると棺桶にも入らない」と言って嘆いている。嘆かれても私はまだこれからどんどんためるのである。活動すれば増えるのだから、増えなくなったらもう私の終焉である。 家族は紙屑だと言うが結構役に立っている。あそこへ行ったのはいつだったろうか、時間や費用はどうだったろうか・・・多々開いてみることがあるのである。最近、10数年ぶりに四国と秋田へ行く機会があったが、その時も開いて確認して出かけた。見れば記憶も戻ってくる。これだけ物忘れが激しくなると更に役立ってくる。書くこともひとつの楽しみにしている私には、過去の体験を引き合いに出して文章の構成にすることも多い。そんな時は大いに役立つ。もちろんこのホームページの作成にも役立っている。 紙くずのようにいう妻であるが、夫婦を30年以上やっていると似てくるもの、同調してくるものである。最初は私だけの趣味?であったが、妻と一緒だったものはできるだけ妻に整理してもらうようにしてきた。最初はブツブツ言っていたが、いつの間にか黙っていても自分でするようになった。そして、自分だけの関係のものも同じように整理しているのである。 |
多くの人はいろいろなところでもらうパンフレットや説明書をどうされているのだろう。一度見て捨てられているのだろうか。取っておきたいものあったときどのように保存されているのだろう、袋に入れて段ボール箱ということはないだろうか。ありがたいことに私はこの保管場所を持っていることで何ら悩むことなく、多くのものを整理して保存できる。ここで特に大切にことはためないですぐ整理することである。私はほとんどの場合、当日か翌日には整理を終えている。そしてこれだけ多くなると、いくら分類別に、年順に綴ってあるといっても探すのに結構苦労する。そこで日付と題目を書いた目次ノートを1冊作った。これだけでかなり楽に見つけだせるようになったが、それでも記憶が頼りなので苦労するときも度々である。今の時代、パソコンの利用を考えるといいだろうが、それは将来の暇つぶしの材料にしておこう。 このように書くと非常に几帳面のように見えるが、実は全くずぼらで、すぐ忘れるくせにメモも取らないし、服装のことではいつも妻に叱られている。 (補足説明) わが家を訪れれた人が、この冊子を目にされるとほとんどの方はびっくりされる。またこのきっかけになったYさんの家族の方が知られたとき「それを受け継いでくれたのは君だけだ」と言って大変喜んでいただいた。そんなことがあって、ホームページでの紹介を思いついたのだが、この冊子の紹介についてはすでに平成10年、別誌に書いており、今回はその時のものを加筆修正して掲載した。このホームページを愛読してくださる皆さんの、何かのヒントになれば幸いであり、また、Yさんへの恩返しにもなる。 (平成15年9月18日) |