現代川柳を味わおう
ちたの風 第255号
(平成13年6月号)
雑 詠
老いたなあ 箸が転がっても怒る 靖一
薬指の爪も新芽も伸びてくる 和子
旅情報 集めて捨てるいつも鬱 風子
少しだけ優しくなれるミントティー 千津子
小雀よ 争いなのか戯れなのか 典子
父さんが出かけた後に生える羽 八重子
無駄話の数だけ白髪増えている 英人
農協で青虫付きの野菜買う 白紅
新緑が眩しくなって風邪をひく 幸智子
母さんの抵抗です フライパン焦がす 愛
新しい挑戦怖くて踏み止まり 恵美子
どちらでもいいことだけは覚えてる 美保子
ゴーイングマイウエイという観覧車 和尾
沢 英人が鑑賞する今月の2句
作っては壊し、作っては壊すのが 積み木遊びである。当然のことを 言っている句であるが、作者はこ れを人生になぞらえるのである。 我々は毎日毎年、積み木遊びの ように同じことを繰り返しているの である。それを認めながら、少しの 工夫をし、少しの進歩を求めていき たいものである。 |
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男は敷居を跨げば7人の敵がいる のである。いつも緊張を強いられる。 いろいろな場に臨むのに少しでも 良い男を演じて、隙を与えないように しなければならない。 しかし良い男を演じているうちに それが本物になっていく。 「人は考えたとおりの人間になる」と 言う格言もある。自分の理想の男を 演じていくのも一つの方法である。 |
課 題 「作 る」
作ろうと思いレシピは溜めている 美保子
作られる前に壊れていく未来 靖一
鏡には五十二年の顔があり 和子
散歩道 新築中の家覗く 風子
泣き顔を作って無罪放免に 千津子
弁当を三つ作った日もあった 典子
半分に聞いてちょうどよい話 八重子
梅雨まぢか 積み木積み上げ備えする 英人
できるまでが楽しみだった我が住まい 白紅
作りたいものがない日はカレーライス 幸智子
巣作りはハトもツバメも隣です 恵美子
力こぶ小さくなった細い腕 昌利
思い出も作るのもよし初夏の花 和尾
(随想) 朝 の 散 歩 八重子 朝の散歩を始めて1ヶ月になる。 雨の日以外は朝7時から1時間近く歩く。 まだ田んぼが残っている自然の風景を楽しみながらの 散歩は、いろいろなことに遭遇する。 田起こしの耕耘機の後を、小鳥たちが虫を食べながら ついていく様子は何とも微笑ましい。 田に水が張られ、いつのまにか苗が植えられている ところもある。草の伸びていく速さがよくわかる。 以前一人で歩いていたことがあったけれど、長くは 続かなかった。やはり散歩は、2人がいちばんよいように 思う。他愛のないおしゃべりも体をリラックスさせてくれる。 (一部省略) |
(英人作品20句集)
ま わ り 道
遅咲きの桜 私はまわり道
BGMが流れ気がつく午後三時
友が来る 何がなくてもまずコーヒー
妻の出す苦いコーヒーにも慣れて
勝ち負けの続きに丸テーブルがあり
願いごと打ち明けている入道雲
雨雲があすのほうからやってくる
コート脱ぐ見栄も脱いで雨に濡れ
追伸に言い訳ばかり夏便り
ときどきは入っていたい金魚鉢
写真燃す煙の多さ悔いの重さ
いろいろな秋はあるもの昼寝する
隠れても無駄なことです金木犀
秋きたる 坂の向こうにある期待
暖簾押す 今日の疲れを取るために
魚焼く煙は僕のほうに流れ
澄んだ目を返してください半世紀
あと幾年 気負いを捨てて歩く足
ゆっくりと歩いて敵を避ける知恵
いろいろなまわり道して耐えている