現代川柳を味わおう
         ちたの風 第248号
         (平成12年11月号)


                          雑  詠 

  ただ食べて寝る幸せと言うけれど   ちづ
傲慢な心で孤独に飢えている  千津子


  口笛を止めてしまった風の中   靖一
 水害の水溜まりには鮒がいた   恵美子
友達の言葉が刺さる秋の虫  風子    
   クラス会みんな一病持ち集う   美保子  



   
 気がかりは犬のことかと考える   愛    
窓開けて金木犀の風を呼ぶ   典子
赤ん坊の客がなかなか帰らない   英人
 手も口も出したくなって菊匂う   八重子
 山道なりに咲いている彼岸花   民夫




幸せはこんなものかと芋を掘る   昌利
 芋を掘る 七人家族目に浮かべ   幸智子
 藍染めの服はわたしのお気に入り   白紅
 少しずつ風の流れが変わっていく  あきこ


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

 何の説明もいらない句。新しい命
の誕生についうれしくてあちこちと
知らせる。いい風景である。しかし、
孫を持つと言うことはそれだけ自分
が年を取り、老いたと言うことであ
る。作者はそれを知っているのだろ
うか?知ってなおうれしいのだろう
か。そうであれば、新しい命という
ものは素晴らしい力を持つもので
ある。
 長い人生、いろいろな困難があっ
たろう。そんなときいつも誰かに支
えられながら乗り越えてきた。誰も
が多かれ少なかれあることである。
しかし、それを気づかない人もいる。
作者は今そんな感謝の気持ちをサ
ラリと詠む。
              



課 題 「坂」

汗流し昇ればきっと見える町    愛        
      振り返ってみれば長い坂だった   白紅            



    満月も坂を登って出たと言う    典子
  
   坂の町越えれば視野に海の色   美保子
       見下ろせば自分の影が落ちている    靖一

    
幻想を抱いて坂を登りきる    千津子


           いろいろな坂を登って鍛えている      英人       
     幾つも坂を越えれば僕らの未来  昌利      
坂のある風景 四季を色濃くし   八重子

 坂の上の雲がこんなに遠いとは   幸智子



          ふる里に向かう山道苦にならず     民夫
            擦れ違ったのは風だった坂の途中     和子
               なんだ坂こんだ坂 しんどい坂     和尾   

      

         

      共 選 「雑 詠      

 1席   問題が解けないうちにバスが来る  幸智子

2席  
この坂も慣れてきました杖と足  ちづ

2席  路地裏に風も私も迷い込む  八重子    

2席  夜更かしが習慣づいて秋深かむ   八重子