現代川柳を味わおう
ちたの風 第246号
(平成12年9月号)
雑 詠
生年月日 人に預けてございます ちづ
五十二歳 たっぷりとかける塩胡椒 和子
香水が果てて八月なお暑く 千津子
窓越しに月の欠けるを眺めいて 恵美子
追伸に言い訳ばかり夏便り 英人
体調を整えあすは再検査 幸智子
瓜・トマト 美味しくなって酷暑へと 昌利
手を打てば鳥居の向こうの時止まる 典子
墓参りでもしてみよう五十三の夏 愛
計算はぴたりと合って午後十時 八重子
らくがんの甘さも夏の午後三時 和尾
二万歩は歩き 今夜は眠れそう 風子
情熱はあるが隠しているだけよ 美保子
カーテンが揺れて夏にはいいことが あきこ
沢 英人が鑑賞する今月の2句
蝉が地に落ちて、腹を上向きにして まだ鳴いている。地中に長いことあっ て、この世を満喫するのは1週間、落 ちても最後の最後まで鳴き尽くす。作 者はそんな蝉をじっと眺めている。何を 考え、何を悟る? 多分それは人生にも通じるものがあ る。長い短いは捉え方の問題、人生も また短いのである。最後まで人生を問 い、全うしたいものだ。 |
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どうしていても暑かった今年の夏。そ れでもやらねばならないこともある。主 婦は掃除もやらねば気が落ち着かない。 かけ声をかけて立ち上がる、けなげな 姿である。 こうして家庭の平和と、作者の安穏 が保たれる。しかし、無理をされないよ うに。 |
課 題 「煙」
現実はフライパンから煙出る 和子
食べて寝て煙の流れに似た暮らし ちづ
いやな人 煙にまいてティータイム 風子
浦島は煙の中から立直る 美保子
ゆっくりと煙りたなびく里の夕暮れ 白紅
手離した魔法のランプと気づかずに 千津子
黒煙は花火の下の暗闇に 靖一
煙突の少なくなった街に住む 昌利
写真燃す煙の多さ悔いの重さ 英人
外で焼くサンマの匂い父の匂い 幸智子
煙だけ残って最後の花火かな 典子
ウナギ焼き商店街も活気づく 愛
煙から生まれる話 散る話 八重子
友だちを煙に巻いて帰るなり 和尾
(随 想) 特 効 薬 和 子 それって更年期の特効薬よ。 そうだよね。 そうよ。 もう、更年期はしっかり抜けたよ。 かもしれないね。 電話を通して友だちと盛り上がっている。 久しぶりにドキドキしたのだ。 人を好きになる感情なんて すっかり忘れてた。 まだ残っていたのだ。 ほんの一瞬の できごとだったけど。 |
共 選 「雑 詠」
1席 花に水 気になる人は五人ほど 八重子
2席 遠花火 意地はすっかり消えている 幸智子
2席 道のりは長いから身軽に生きる 靖一
2席 友が手を振る 遮断機の向こう側 和子
(お知らせ)
川柳みどり会主催の 『第9回センリュウトーク』は
平成12年10月28日
朝日新聞名古屋本社15階朝日ホールで開かれます