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癌奮戦記(その4)
・・・尿漏れ記録・・・


 
  私の前立腺ガン手術も、術後の尿漏れさえなかったら、何の痛痒も感じずに終わったことである。ところがこの尿漏れが最悪であった。退院してから尿漏れ記録を書いてきたので、ここらでそれを抜粋して一文とします。

◎退院から2月20日(土)まで
 手術後7日目の平成28年1月28日、尿の垂れ流し状態のまま退院した。動けば当然ながら溜まらない。座っていたり寝ていると少しは膀胱に溜まるが、動けばすぐに漏れてしまう。これではパットの数も多くなるし、漏れるときの気分も嫌である。そこで家では、ペットボトルの頭部を切り取り、屎尿瓶代わりにして持ち歩いた。最初の頃は水分をたくさん摂れといわれていたので、大変な量であった。ぐっすり寝ていて衣服まで濡れてしまったこともある。
 人間は1時間に60cc前後の尿が出るという。パットには約200cc程度保てるので、3時間程使える(パットの説明書では400cc以上の容量があるが、重くなって動くには不都合である)。垂れ流し状態で出かけても2〜3枚取り替えれば済む。活動はできる。退院して4日目から出勤した。
◎2月21日(日)
 手術してちょうど1ヶ月、始めて改善の兆しを感じた記念すべき日である。途中漏れながらも数m先のトイレで少し出たのである。毎回とは言えないが、何回か成功する。
◎3月10日(木)
 岩倉駅から名古屋駅まで車中で立っていた。駅のトイレへ行ってみたら出た。立っていて溜まったのは始めてのことではないか。
 尿漏れをこらえられるかどうかは意識がかなり左右する気がする。さあ歩くぞと意識して踏み出せばかなりこらえられるが、無意識に踏み出せばすぐ漏れる。咳が出るぞと意識してすれば漏れないが、無意識に咳をすると漏れてしまう。意識すれば自然に尿漏れを防ぐように筋肉が働くようだ。
◎3月25日(金)
 駐車場から岩倉市役所まで約100mを歩いて行って始めて用が足せた。更に豊橋駅、三河港務所などでも用が足せた。かなりの改善の気がする。
◎4月1日(金)
 昨日は永代経で6時間近く円林寺で座っていて、1時間毎くらいにトイレに行く。行く度にかなりの量が出る。帰ってパットの重さを量ると30g位程度の増えである。座っている生活なら今でもさほどの支障はないが、動きたい人だから困る。
◎4月5日(火)
 夜寝ている時の尿はよく分からない。少ない時は400ccくらい、多い時は1000cc近くになる。多い時は何度も夜中にしてるのだが、それで尿漏れが少ないという訳ではない。少ない時は20ccくらいの時もあるが50ccを越える日が今でもよくある。
◎4月11日(月)
 昨日は正高寺でお華束作りの行事があり、約1.3kmを20分ばかりかけゆっくり歩いて行った。トイレで出たのである。大進歩である。でも帰りはダメだった。午後は疲れるので、朝のようにはいかない。これはいつものことである。
 4月7日より尿漏れ数量の記録を付け始めた。出勤前から帰宅後まで、夜寝るまで、出勤前までと1日3回ほどに分けてつける。行動と結びつけるためである。こんな表ができるほどに減ってきたのである。これをグラフにしたら傾向がかなりはっきりつかめるだろう。
◎4月13日(水)
 津島駅から栄生駅まで座って帰る。そして栄生駅から岩倉駅までは立っている。実際はよく分からないが、気持ちだけは一生懸命漏れないようしている。そして、岩倉駅でかなり出た。
◎4月26日(火)
 昨日出勤前の7時にパットを取り替えた。2時頃帰り計ったら30ccであった。夜寝る前の10時に計ったら90ccであった。朝7時に計ると110ccである。そして朝起きるまで夜中に1度も尿をしなかった。何と24時間でパット1枚、110ccとは何と凄い成長の日であろうか。1日の過ごし方によって大きな違いがあろうが、こんな日が増えてくれば楽な気分になろう。
◎5月14日(土)
 一進一退である。昨夜寝ている間の尿漏れはほとんどゼロであった。これは初めての気がする。寝ている間はコソコソ動くせいか意外に多いのである。
 自宅でのペットボトルの屎尿瓶はいつの間にか使わなくなってもう数週間になろう。
◎5月31日(火)
 昨日は雨の中、12000歩以上を歩いた。家を出てから9時間で40ccであった。そして寝ている間はこの3日間、10cc未満である。次の段階に上がった気がする。
◎6月19日(日)
 ここ3日間、毎日100ccを切っている。勤務に行ったり畑仕事をしたり、終日家の中にいたりと様々な日になっているが、安定している。
◎7月13日(水)
 昨日は朝方畑仕事をし、その後家の中で過ごしたが50ccであった。夜も一度も起きず20ccである。記録し始めた4月からをグラフにしてみた。行動等は無視し、ただ記録した数字のみを表した。おおよそであるが4月末230cc、5月末150cc、6月末100ccの感じである。これは尿漏れ記録をグラフにしたから分かることである。いい日と悪い日の幅は大きいが、明らかに改善の変化が見られる。
◎7月21日(木)
 昨日は退院後4回目の診察であった。PSA値は0.01で安定している。がんについての話しはもうない。尿漏れのグラフを見せたら驚かれ、スキャナーで撮られた。
◎8月10日(水)
 その日の行動によるが、50cc、または50ccを切る日が増えてきた。でも暑い日が続き、パットを入れていると蒸れ、また、粘着部が肌につき、なかなか苦痛である。夜中は10ccくらいとなり、全く起きない日も出てきている。この夏を乗り切ればかなり楽になろう。
◎8月22日(月)
 昨日は朝除草剤を撒いたくらいで、その後は家の中で静かな生活であった。そのせいだろうか、始めて30ccを切った。ここ1週間はよく動いたせいか、50ccを越えていたので少し悲観していたが、これで少し自信を持った。
 8月16日に秤を買い換えた。それ以前は10g単位で、それもかなりバラツキがあった。今度は1g単位であり、何度計っても違わない。それもデジタル表示である。古いものをいつまでも使っているのが賢いことではないことをまた知った。 
◎9月4日(日)
 昨日は一宮友歩会10月例会の下見であった。尿漏れがどうなるか、非常に関心があった。6時間、28000歩、約50ccであった。朝起きて8ccである。7月例会時には200ccであったことを思えば、これはもうかなりな改善である。
◎9月17日(土)
 20cc〜80ccと変動が大きく一喜一憂の日が続く。ただ夜は10ccを切る日が多くなり、起きるのも1回、また起きない日も出てきた。
◎9月28日(水)
 まだ多い日もあるが、ここ数日20ccを切り、15cc前後となっている。夜中は漏れが分からない日もある。
◎10月10日(月)
 グラフからは7月末60cc、8月末30cc、9月末25ccくらいとなっている。しかし、妻の言葉もあり10月に入って少し行動を積極的にした。案の定数値は増え、100ccを越える日もありびっくりする。普通に暮らせば30cc前後であろうか、9月から改善は停滞気味である。この状態が続くのであろうか。そして本当に治りきるのであろうか。

 妻の言葉とは「数値を余り気にするな」と言うことである。尿漏れ量をグラフにしているので状況がよく分かり、改善を目で確認したくなる。それが行動を規制してしまうのである。自然に任せて、もっと動いた方がいいというのである。確かに体重も増えてしまった。これはまずいと、先日から食事の量を減らし運動も始め減量に務め始めた。これだけの量になれば行動に支障はない。涼しくなってきた。これもあってパットを着けていることもあまり気にならなくなった。妻に言われなくてももう尿漏れは何も考えず行動したい。長引くものは長引き、治る時には治る。行動を控えても結果は同じである。一宮友歩会の29年度例会の下下見も始まる。庭木の剪定もしなくてはならない。外国旅行はまだにしても国内旅行にはどんどん出かけよう。自分で自分を縛ってはいけない。その期間は過ぎた。

                                 (平成28年10月18日)


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