zu088   防犯灯から見えたこと
              

 今年は町会長職を務めることになって当初から外国旅行は当然ながら国内旅行もあきらめていた。いつでも速やかに対応できるようにしておくためである。そして、数ヶ月たつがこの覚悟は正解であった。少々のことまで含めれば何もない日は1日もないと言っていい。と言っても、昨年までと比べて実は余裕があるのである。昨年などは50日以上旅行などに出かけていた。旅行は終日時間をとられる。町会長の用事で1日中とられることは少ない。数十分から半日くらいである。よって反って余裕があるのである。作文の会「朗人」の題材に例年なら1回か2回は旅行のことを取り上げていた。今年は全く書けない。代わりになる話は当然町会長職に関わる話にならざるを得ない。現在までのできごとの中で防犯灯を素材に少し書いてみよう。

 一宮市では防犯灯とは「屋外照明で、地域防犯のため必要な箇所に、道路を照らす照明として町内会が設置するもので、終夜点灯し、料金支払者が町内会であること」とある。そして私の地域でも防犯灯と言われるものは確かにこのようになっている。その防犯灯の設置について市から補助金が出るし、また電気料金についても補助されている。他の市町村でもこのようになっているのだろう。


 4月に市からもらった「町会長の手引き」という冊子に防犯灯のことが書かれていた。「既存の防犯灯器具を廃灯し、新たに防犯灯器具を設置する場合も、新設補助金の交付対象になる」とあった。蛍光灯をLEDに代えても補助金が出ると言うことか、このことから興味を引かれた。最近よく聞くようになったLEDと以前からの蛍光灯とはどのように違うのか、わが町内ではどのような実態になっているのか、調べてみる気になった。電気業者からも資料を取り寄せた。そして知ったことを簡単に個条書きにしてみよう。
1)LEDの寿命は約10年であり、蛍光灯の約7倍である。
2)20ワット蛍光灯と同程度のLEDの電気量は10ワット程度である。
3)10ワット程度のLEDの工事代は1基2.3万円位であり、補助金は2万円である。よって実質負担は1基3千円程度である。
4)私の町内には160基の防犯灯が設置されており、その内15基が水銀灯、 12基がLEDであり、残りが蛍光灯である。
5)電気料金は定額であり、昨年の場合年間約47万円であった。うち補助金 が23万円であった。
6)修理費は70基約21万円であった。修理費に補助金は出ない。 
  蛍光灯の寿命が平均約1年半と聞いて、そんなに短いのかと驚いたが、町内の昨年度の実績でもそんな程度であることを知って納得した。電気料金については今年の5月実績で水銀灯460円、蛍光灯232円、LED118円となっていた。


 これらを知って、町内にとっては細かな計算をしなくても自分には明らかにLEDに変える方が得策に思える。現在12基とは多分、新設分のみをLEDにしたのであろう。なぜ既存のものを取り替えようとしなかったのであろうか、疑問に思える。自分のとらえ方に間違いがないか、また何基でもよいのか、5月30日に市役所に出向いて聞いた。たくさん取り替えてくれることを期待する言葉使いである。市役所としては一時的に取り替えに多くの補助金を要しても、電気料金も補助しているのだから長い目で見れば得策なのであろう。また、電気量の少ない器具にすることは国の政策でもあろう。補助金申請書をもらってくる。
 ここまで知ってどう対応するか。数日考えて、3年計画で全蛍光灯をLEDに変えることを決断する。一度に全灯を変えると、故障するときも集中してしまうだろう。3年計画なら5、6年にばらつくだろう。また補助金が出るといっても一度は工事費の全額を払わねばならない。補助金をもらうには領収書をつけねばならないのである。これも全灯では少しきついのである。


 こう決めたら早速に電気業者に来てもらった。そして水銀灯を含む50基を取り替えるように調査を依頼した。これが6月初旬である。6月中に計画を作り、7月早々の役員会に諮る段取りである。ところが、電気業者は数日で調査し、計画書と見積もり書を持ってきた。そして、これだけの数量の取り替えをしたことがないし、できれば工事は暑くなる前にやらせて欲しいという。市がいくら勧めているといっても予算枠があるはずである。やるからには早いに越したことはない。しかし、いくら良いことだと思ってもこれだけのことを一存でするのは少し独断が過ぎる。とは言え、これだけのために委員に集まってもらうのも気の毒だ。副町会長に話し、町内の委員には文書で通知し、意見を聞くことにする。そして、ここまでに書いたようなことを簡単に書き、意見を聞く。特に異論は反ってこない。市へ申請を出す。そして6月18日に補助金交付決定通知書が届く。すぐに工事をする地区に工事案内を回覧する。数日おいて業者が工事に入る。そして、6月末までにおおかたの工事を完了する。7月5日に工事の完了確認をし、市へ完了届を提出する。


 自分が思っていた以上にスムーズに事は運んだ。そして工事を終えた今、たったこれだけのことからいろいろなことを学んだ。小さなことだが、少し拾い上げてみる。まず、15基あるはずだった水銀灯が全部蛍光灯に変わっていた。いつからか知らないが、長いこと倍の電気料金を払っていたのである。多分これは、故障した時、今更水銀灯でもあるまいから蛍光灯に変えておこう。ということで変えたが、中部電力への変更はしないままであった。1灯は面倒だし、誰もそこまで気づかなかったのかもしれない。電気料金の違いも知らなかったかもしれない。話してもらわないと分からない。独立ポールに防犯灯がついているものもたくさんある。今回これらの多くを電柱に付け替えた。独立ポールの場合、そのポールは町内のものだが、事故が起こる前にその安全性を町内でチェックすることはまずあるまい。灯具が切れたらその灯具を取り替えるだけで終わってしまうだろう。倒れたりして事故が起こると町内の責任である。こうしたことも器具を取り替えたからできたことである。話してもらって分かったことである。こうした話を他の町内の人に話したら、保険に入っているという。わが町内は入っていない。考えねばならないことである。やはりいろいろ知らないといけない。


 町内会のことは誰も仕事でしているわけでもなく、本職でもない。また望んでその職についている人もほとんどいない。おおかたは素人がボランティアでしている。町会長は別にしてその他の役員は輪番制である。目の前のことが処理できればそれでいい。そして任期が無事過ぎればいい。人によって多少の違いはあるだろうが、おおかた似たり寄ったりである。私も全く同類だ。特にわが町内は、他の諸団体も含めてすべての役員が1年任期である。知らないままに任期が終わることも、知った頃に終わるということも多かろう。数年努めておれば知ることもできることも出てこよう。問題はここに大きく起因している気がする。たかが防犯灯の問題から、町内会の組織問題まで気づかされてしまった。

 実は、今年度最初の町内会役員会の議題は、何十年ぶりかの町会費値上げであった。値上げはすんなり決まり、大筋を回覧文にして町内に知らせた。特に苦情は聞こえてこなかった。町会費は大まかに言って持ち家、事業者、借家によって違っている。持ち家、借家については額がほぼ統一できているが、事業者についてはいろいろな状況の違いがあり結構バラバラになっている。できるだけ考え方が統一できるように調整したが、長い経過もあり一度には調整しきれない。徴収漏れも数事業所ある。なぜ何年も見逃されてきたのであろうか。多分前年のまま納入通知書を作っただけであろう。私が副町会長の時もそうだった。今回は町会費の値上げと言うことがあって、いろいろ気づいたまでのことである。ここにも1年役員の弊害を見た感じである。8月に入って副町会長と事業所にお願いをして回った。また、昨年まで前期後期の2回に分けて徴収していた。560戸からあるので大変な事務量である。そこで一括納入のお願いを回覧板で回した。値上げした上一括納入とはいささか片腹痛いが、来年度以降の役員の負担軽減、また納める方も一括の方が世話ないと思われる人もあろうと思ってである。9月上旬に徴収するが、何割の人が一括納入に応じてくれるか、興味津々である。

 
私が今一番気になっていることは災害時の対応である。元の職業柄、また今の会社の業務から、わが町内の災害時の対応はどうなっているのだろうか、町会長になる前から気になっていた。これだけ世間で騒がれながら、わが町内に特に動きがあるとも思えない。そして、先にも書いた「町会長の手引き」に「速やかに自主防災会を作ってください」とある。市はやはり何か動いていたのだ。早速市役所に出かける。「一宮市の自主防災会の組織率はどんなものですか」と尋ねれば98%という。わが町内は残りの2%の部分か。担当者は「調べてみます」といってパソコンを覗けば、平成3年に組織されているという。こんな話聞いたこともないし、引き継ぎもない。当時いわれて市に申請を出したものの、そのままで終わっていたようだ。近くの町内会に聞いてみれば、皆組織されているのである。どんな活動になっているか、まだ聞いていないが、少なくとも今の住民で組織ができているのである。愕然とした。私の地域は、土砂崩れはまずないだろうし、水害も比較的受けにくいところである。しかし、近頃の土砂降りである。いつ何があるか分からないし、大地震に至っては報道の通りである。このことを知ってから、私は少し話し込むとすぐこの話をしている。少しでも住民に問題意識を植え付けたい。まだ誰にも話していないが、今年度後半には防災講演会を開いて、皆に考えてもらう機会を作りたいと密かに思っている。
 町内の多くの行事はこれからだ。どんな思いになっていくのか、我ながら興味がある。後8ヶ月の寿命だ。 

                        (平成25年8月28日) 

 
川柳&ウォーク