zu087   町会長職3ヶ月


 平成25年3月3日に町会長当選の通知を受けてすぐに引き継ぎを受け、25年度の準備が始まった。よって町会長職を始めてもう3ヶ月以上経つことになる。ここらで一度感想をまとめておきたいと思う。少し前になるが、川柳連れ連れ草第136号(平成25年4月号)で「町会長1ヶ月」と題して句を掲載したのでそれを交えながら話を進める。
 私の住む町内は昭和30年代までは120戸程度の純農村であった。その後どんどん戸数が増え、今では570戸を越える大町内になっている。今も毎年増え続けている。専業農家は数軒になったが、それでも住民意識はやはり伝統ある農村であろうか。町会職は元々の住民の中から選ぶなど昔の意識が未だ潜んでいる気がする。


    これ以上拒むと春は遠ざかる
    覚悟決め町会長を引き受ける

 町会長、副町会長選挙はその時の役員等で選任委員会を作って次期候補を3人ずつ選ぶ。その中で選挙をするのであるが、これは形ばかりで、本命が分かるようになっている。今年の場合でも私が370票、次点が20票であった。いろいろな選び方があるが、私は比較的良い方法だと思っている。
 実は以前にも候補になる声が聞こえてきたことがあったが、まだフル勤務だったので待ってもらった経緯がある。それだけに今回は打診があった時潔く引き受けた。このようにある程度事前調整が図られるし、とんでもない人が選ばれると言うこともない。
 候補は69歳以下と言うことになっている。65歳が定年となって来ている現在、これはどうかと思う。この句はこれ以上拒むと完全に逃げることを言っている。春とはいささか雰囲気が違っているが、やるからには春と思ってやり遂げたいと思っている。


    
 当面の終着駅と見極める
 霊園管理委員長、老人会会長、檀家総代等ここ数年いろいろな地元の役が回ってきていた。この町会長が当面思いつく地元役員の最後であろう。昨年までは町会長の前段階で、それを経験しての町会長は仕上げとしてうまく順番が回ってきたと思う。そしてやるからには楽しくやり終えたいと思う。そんなのんきなことが許されるとは思えないが、それでも心がけ次第、気持ち次第の部分はあると思う。


     
選挙終えすぐに準備をせかされる
 冒頭にも書いたが、当選後すぐ引き継ぎがあり、新年度に向けて準備が始まった。輪番制の区会役員(組長)が26名あり、土木、公民館、防犯、廃棄物等役員の割り振りである。ほとんどの区会役員さんの人柄が分からない中、情報を得ながらの選任である。そして予算書の作成である。今回、何十年ぶりの町内会費値上げの案件が待っていた。もう少しよく理解してから判断しようかと思ったが、それが許されない状況にあった。
 4月、第1回の役員会でこの値上げの案件を提案した。役員会は無事通ったが、住民の反応が気にかかる。回覧板を回し様子を見たが、今のところ特に苦情や意見は聞こえてこない。


     
来客が多くなり妻戸惑いぬ
     来客がいつあってもいい服を着る
     電話取る役目もいつか僕になる

 新年度のこともあってか、来客が急に多くなった。それまでは自宅にかかる電話のほとんどは妻の用事であったが、私の方が断然多くなった。電話が鳴ると私に「出てよ」と言われるようになり、今ではまず私が取り上げることになってしまった。夕方ともなればもう誰も来ないからと、いつどんな服装に変えてもよかったが、そうもいかなくなった。人前に出てもいい服装を買いに出かけた。

     
何気なく見ていたものが気にかかる
     ゴミ置き場見て回るのも役目です
     切れている防犯灯はないですか

 今まで何気なく村の中で見ていたものが気にかかるようになった。例えば、壊れた幟旗があれば目障りである。粗大ゴミが捨てられている。これも目障りである。ゴミ置き場はキチンと管理されているだろうか、切れている防犯灯はないだろうか。不都合なことを何とかするのも自分の役目ではなかろうか。何の役にもついていなければ、そのような処理をするのも人目が気になるし、する気にもならなかった。しかし今の自分がしていれば、町会長さんは大変だな、と思われるだけなのである。先日などゴミ置き場のネットを直していたら、見た人が手伝ってくれた。最近は村の中を自転車で回っていると「ご苦労さま」と声をかけられることがあるようになった。自分の家庭と同じだと思えばいい、今ではそう思い何でも気楽に出来るようになった。


      前例に従うつもりで話聞く
      改変をする意志ないが変えている
      つもりはつもり行動は別物で

 1年の役である。残念ながらというか、申し訳ないというか、この村を変革しようという考えも思想も野望もない。前例に従うつもりで引き継ぎを受け、いろいろな話を聞いている。しなしながら、気分よく進める為には自分が納得しなければならない。納得できないことは納得できるように変え、この方がいいと気づけばそれを実施しなければならない。これだけの気持ちで進めているが、もういくつ変え、いくつ新たなことを発したことか。この先が思いやられる。

      
思っていた以上に多忙で日が暮れる
 4月以降、町内のことに全く係わらなかった日があったであろうか。電話や訪問の数分、数時間から半日、1日も月に何度かある。ゴミのポイ捨てや騒音などの苦情もある。ある程度分かっていたつもりであったが、これほど用事が多いとは思っていなかった。自分の思いつきもあり、更に忙しくしている。
 今まで町会職に就いたほとんどの人は農業や自営業、勤め人なら退職した人である。多くの時間を家にいたり、自由に振り替えることができる人であった。私は半人前ながらまだ勤めに出ている。また一宮友歩会の運営もある。その分、妻に負担がかかっている。電話や訪問があって、私への取り次ぎだけでは再度手間をかけることになる。少しくらいのことは受け答えができるようにしておく必要がある。そんなことで話してもいいことはできるだけ話すようにしている。妻が協力的で助かった。


     
したいこと見つかって夢描いてる
 いろいろ分かってくると、したいことも浮かんでくる。これはもう夢である。しかし、どうせやるなら夢も描きたい。無理をする気はないが、話して進む、話して応じる人があれば話していこうと思っているこの頃である。


 
3ヶ月、今の段階でももういろいろな面が見えてきた。私の地域は市内でも、また連区と言われる地域の中でもはずれである。はずれというのは何かにつけて分が悪いし、遅いものである。ある程度分かっていたことであるが、悪い面がたくさん見えてきた。そうなる第一原因は、町内すべての役員が1年交替であることにある気がする。これは私が以前から思っていたことである。今時、地域の役員のやり手は少ない。ほとんどの会が選任に苦労している。ましてや今更数年となると更にやり手はないだろう。しかし、1年では少々やり方を変える位がいいところで、前例踏襲がほとんどである。大きな新たな施策などほとんど無理である。これでは遅れるのも無理はない。時代に合わないことも続けられる。今、自分で良いと思い、できることはドンドンしている。それでもジレンマに陥る。かといって、例え懇願されても2年、またそれ以上続ける気は毛頭ない。

     
一年後どんな言葉で語るだろう
 始まったばかりでまだ10ヶ月ある。この間にどんな気持ちを経ていくのだろう。終えた時どんな感想を持つのだろう。自分ながら興味を持つ。


                                 (平成25年6月22日) 

 
川柳&ウォーク