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週  休  4  日


 第二の職場も5年が過ぎ6年目に入った。一つの区切りである。この機会に週3日の勤務にしてもらった。理由をつけるとすれば今年から毎年地元役員が舞い込むことが予想されること、そして少し余裕がほしくなったことである。
 慣れない勤務に当初戸惑いもあったが最近は落ち着いてきた。週3日勤務ということは週4日休みということである。4日も休みがあるのである。今までなおざりだった農作業にもう少し時間が割けるということはあるが、これだけでは週休4日のメリットがよく見えない。そこで思いついたのがトレーニング室へ通うことである。そして、輪番制ながら今年は組長(私の村では区会役員という)が回ってくることが分かっていた。組長にもいろいろな役割分担がついてくる。与えられた担当が地元霊園の管理委員長という大役であった。この2つが昨年までと違うことなのでまだ4ヶ月過ぎたばかりであるが、この2つについて感じたことを書いてみようと思う。


 行こうと思っていたトレーニング室は隣市の体育館にあり、最寄り駅までの途中にある。全く好都合な位置にある。このトレーニング室を利用するには事前に講習を受けねばならないが、実はもう20年も前になる平成3年にその講習を受けていたのである。そのときは数回通って挫折していた。それだけに気になっていた。もう一度講習を受けねばならないか確認したらその講習実績はまだ生きていた。チャンスである。高齢者は筋力がどんどん衰えていく。筋力の衰えがつまずきやいろいろ障害を起こす。私は高齢者が健康を保つ努力をすることは高齢者の仕事、義務と考えている。昔の人は筋トレなどしなくて、生活の中で鍛えていた。しかし、生活の中で鍛えられる筋力は片寄っているし、寿命も短かった。高齢者にも筋トレの効果はあるし、長寿社会となった今は筋トレもしなければならないのである。

 4月に入って週2回を目途に通い始めた。週3日の勤務に慣れない4月5月は間隔が開いたが、最近はかなりきちんと出かけられるようになった。自宅から自転車で15分位である。自動車で行ってエアロバイク(自転車漕ぎ)をしているのは何とも愚かしい。自転車で行くことにする。最近は自転車に乗り慣れ、車で行っていたところも自転車で行くことが多くなった。面白い効果である。1回2時間程度してくる。体力増強はあまり考えなくてもいいが、こうした筋力トレーニングをしたことはないので10数回もすると増強が見えてきた。回数や時間が増えたり、ウェイトが重くなっていく。当初は顕著であろう。効果が見えると面白くなって熱が入ってしまうが、ここは無理をしないことに心がけねばならない。
 利用料は1回200円、11回回数券が2000円と民間に比べるとかなり安い。また管理が民間に委託されるようになり、正月休み以外年中無休となった。また最近昼休みが無くなり、朝9時から夜9時までいつ行ってもいいようにもなった。利用者は1日70人、1ヶ月延べ2000人前後という。顔ぶれは500人程度のようで、毎日の人もあるが平均すると週1回位になる。私が行く日中をみていると60代の人がかなりあるように思われたが実際には2割程度のようだ。中心は40代で30代、50代も多い。筋トレというと高齢者にはそぐわなくみえるが(私もそう思っていた)実際には若い人以上に必要なのではなかろうか。若い人の筋トレは他のスポーツや競技のため、高齢者の筋トレは体力維持、健康のためである。どちらがより必要かは言うまでもなく高齢者である。

 野外でジョギングをしていた時代はランニングマシン(ラボード)の上で走ることを馬鹿にしていた。野外で走れば景色も変わり気分も良いのに何でお金をかけて室内でするのか、理解できないなどと言っていたが、最近はそれも始めた。スピードが分かり調整できるのはいい。目標も立てやすい。今年の冬には20数年ぶりに市民マラソン大会参加も夢みている。とかく頑張りがちになる自分であるので、無理しないことに心がけ、楽しく長く続けることを念頭にしていきたい。真夏の日中にエアコンの効いた室内で汗を流す、愚かしくも豊かな生活である。
 
 次に霊園管理の話であるが、私の村には村管理の700区画ばかりの霊園がある。以前は独立した団体が管理していたが、平成元年から町内会管理になった。私の先祖の墓もこの中にあるが、管理委員長になるこの4月までこの霊園についてほとんど何も知らなかった。我が家の墓をみていただけである。この5ヶ月近くで管理する組織、管理費の徴収、霊園の清掃、行事などおおよその現状は分かった。一部改善を加えたこともあるが、多くのことは前例に従って実施してきた。結構忙しい数ヶ月であった。そして管理費の徴収は一部であろうが、今後問題化していくものがあることも分かった。さらに大きな問題は霊園の返却である。ここ数年年に10件近い返却が生じてきている。今年度に入っても4件ある。墓地を引き継ぐ人がいないのである。この問題についてつい先日の8月12日に書いた「話・話」「(第1485話)娘だけの家の墓」の文を紹介する。
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 “現代では、子どもが「娘だけ」という家族は多い。その娘が結婚して夫が長男というケースも、少子時代にはざらにあるだろう。この娘だけの家の墓は誰が守るのか。
 実は私の生まれた家族も、「両親に姉と私」という家族構成。三十年前、母が亡くなり墓を建てることになって、問題が起こった。長男と結婚した娘が実家の墓を継いだとしても、娘の子の代になると母方の墓まで継承できず、無縁化するというのだ。三十年後の今、継承者の性別はさほど問われなくなったが、当時、戦後の教育を受けた私にはとうてい受け入れがたい事実であった。
 学んでみれば、民法にも「娘では墓を継げない」とは書いていない。「墓には継承者がいなければいけない」という条文もない。問題は、父系男子で家を継いできた戦前の「家」意識が、墓地に関する法律や使用規則等に色濃く残っている点である。日本の墓は継承者が必要で、その人が管理料を払う限りにおいて永続使用できるが、継承者が絶えれば無縁墳墓として片付けられるのである。
 少子高齢化、核家族化、生き方の多様化が進んだ現代社会で、どれだけの人が代々継承者を確保できるというのか。「家」意識の残存による、永続規範に支えられた墓の継承制が、いま制度疲労を起こし人々を縛りはじめた。”(7月26日付け中日新聞)

 「紙つぶて」という欄から東洋大の井上治代教授の文である。墓にはあまり興味がなかったが、今年地元霊園の管理委員長を仰せつかってこのことに多くの時間を費やしている。そして、考えさせられることも多くなった。
 日本の慣習が次から次へと変容を見せているが、お墓などと言うものは最も長く残る日本の慣習だろうと思っていた。ところが管理委員長をやってみて分かったのは、近年毎年10件近くの墓地返還者が出ていることである。継承する人がないのである。全部で700区画程度の霊園であるが、返還する人もあれば購入する人もあるので今のところ20区画位の余りであるが、今後どのようになるであろうか。少子化がこんな所に大きな影を落としていたのである。
 ボクの家庭も筆者と同じである。娘2人は相手の姓を名乗っている。我が家の墓には3代6人の墓碑銘が記されている。このことについてまだ娘と話したことはないが、近くにいるので面倒を見てくれるだろうと勝手に思っている。お墓のあり方についてよく考えていかないと無縁仏ばかりになってしまう。
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 井上教授の言われるように、現在の日本社会は父系男子で家を継いできた戦前の「家」意識がまだかなり大きく残っている。ほとんどが男子姓を名乗るのもその現れであろう。現実は勤労者家庭が多くなり、家のことは母系女子の方が好都合になってきているのにである。男は独立し1軒の家を持ち、墓も持つ。この少子社会では数代と続かないだろう。無縁墓地になる前にキチンと処理をしておかなくてはここにも荒れた社会が出現することになる。
 こう考えると返却の手続きをされる人は誠実な人だ。無縁仏になってしまったら霊園管理者は大変だ。簡単に取り壊すこともできないし、また取り壊すにしても大変な費用がかかる。
 確かに今の墓の風習は疲弊している。井上教授は継承者を必要とせず、桜の下で眠るという桜葬墓地を造ったと言われる。墓地を返却して寺院の納骨堂に納めたという人があるが、この場合は継承者は必要がないのだろうか。ともかく新たな手法が必要である。今墓地のある人は後々のことまで考えておかなくてはならない。人間死ねば終わりとは行かないようだ。この担当を指名されてまた一つ社会問題を学んだ。
                           (平成23年8月21日) 

川柳&ウォーク