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食 の 心 得

 「健全な精神は健全な肉体に宿る」といわれるがごとく、人間は心と体の健康が相伴って始めて健全が保たれる。「第二の人生の心得」はどちらかというと、心の持ち方、精神的な心構えであった。そこで今回は「話・話」から肉体の健康、特にその基となる食に関する話を拾い上げ、まとめてみたい。

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              (注)【 】:引用文、   2004,7,11:掲載年月日

(第17話)食事時間                2004,7,11
 朝日新聞の記事から抜粋する。
 【製菓会社ロッテが専門家の協力を得て、各時代の食事を復元、食事時間とかむ回数を推定した(86年発表)。弥生時代は51分3990回、平安31分1366回、鎌倉29分2654回、江戸末期15分1012回、戦前22分1420回、現代11分620回だった】
 どうやって推定したのか知らないが、専門家というのはいろいろなことができるものだと全く感心する。食事は万人共通の最大の楽しみ、喜びである。人間はこのために働いていると言っても言い過ぎではない。それが時を経ると共に短くなるとは・・・・豊かになったというより貧しくなったのではないか。こんな楽しみこそ自分で自由に獲得できる楽しみである、自ら放棄することではない。
 そして、早食いは肥満の原因、体にも良くないと言われてる。統計からもその結果は出ている。作ってもらう人に感謝しながら、ゆっくり楽しく食事をしたいものだ。これは自戒の話題である。

(第19話)野菜摂取量             2004,7,17
 第17話で食事の話をしたついでに、野菜摂取量についてちょうど新聞記事で見かけたので紹介しておきたい。 
 【『厚生労働省が実施した2002年の国民栄養調査によると、1人1日あたりの野菜の摂取量は平均269.7gだった。60歳代が最も多く325.3g、次に50歳代の304.3gで、若い世代ほど少なく、20歳代では246.5gにとどまっている。厚生労働省が取り組む運動「健康日本21」では、ガン予防の観点などから「成人の野菜摂取量は1日350g以上」としてることから、この目標からは遠ざかっているのが現状だ。』
 そして、野菜摂取量は減少傾向だと言うことである。】
(2004年7月7日付け読売新聞より)
 私は農家育ちであったせいか、極端ではないが昔から菜食主義者である。今の日本で外食すれば肉類はどうしていても食べてしまうので、野菜を食べることだけを意識していればいいと思う。日本は欧米と比べて野菜は多いと思いがちであるがどうもそうではないようで、韓国と比べたら6割だそうだ。成人病予防のためにも、また、食糧自給率を上げるためにももっと日本野菜を食べるようにしたいものだ。

(第113話)いい歯の日               2004,11,13  
 11月8日は、語呂合わせではあるが「いい歯の日」であるそうだ。その1月8日付け中日新聞に、愛知県歯科医師会会長・宮村一弘さんと女優・柴田理恵さんの対談記事が載っていた。その中で、宮村さんの言葉から抜粋。
 【最近は虫歯や歯周病の増加が指摘されていて、実はこれも生活習慣病で、内科的ないろいろな病気を加速させているのではないかといわれます。動脈硬化や、老人に多い誤嚥性肺炎などもその40%は歯周病が原因ではないかと。
 80歳で20本以上の歯を保とうという「8020運動」を進めていますが、これも相当意味のあることで、20本あると、例えば握力まで全然違ってくる。片足立ちも、20本ない人の3倍、30秒間できます。
 虫歯も歯周病も細菌感染ですから、ブラッシングという生活習慣を続ければほとんど予防できるのです。】

 私はちょうど今、歯の治療中である。2年ばかり前に2本を入れ歯にしたのだが、強く噛めないし、何よりも食事がうまくない。そこで、それがかなり解消できるという「インプラント」という治療を施すことにした。2本で50万円近いという大枚がかかる治療である。これから40年使うつもりなら引き合うだろうという大英断だが、何とも金のかかるものである。歯は大切にしたいものだ。

(第160話)「やけ食い、ドカ食い、ながら食い」防止法    2005,1,2
 肥満の弊害については今更いうことでもない。山陽新幹線での居眠り運転で話題になった「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」も肥満によるケースが多いという記事の中で、肥満に結びつく「やけ食い、ドカ食い、ながら食い」の防止法をアドバイスしていた。
 【@食事記録ノートをつくる!・・・・毎日どんなものをどれだけ食べたかを記録する。おおよそのカロリーも記録する。体重が減り始めると記録をつけるのも楽しくなる。
 A冷蔵庫はガラガラに!・・・・毎日買い物をするようにして、冷蔵庫に余分な食べものは入れない。
 Bテレビの周辺に食べ物を置かない!・・・・特にカロリーの高いスナック菓子など禁物。
 C行動修正療法を行う!・・・・ちょっとやせ始めた人は、もっとも太っていたころの写真をドカーンと部屋に貼っておく。】
(プレジデント 2005.1.3号)
 肥満防止、ダイエットの方法ほどたくさんの手法が書かれているものはないという。確かに本だけでもどれほど多く発行されていることか!それほどに難しい。そして、この正月、皆さん大丈夫でしょうか? ボクは身長171cm、体重63kgの肥満と縁遠い体だから、食べたいだけ食べても全然問題ない。

(第168話)ホンモノを食べてみて         2005,1,12
【たとえば「ダイコンおろし」。自分でおろさない限りホンモノを食べることは不可能です。すり下ろした冷凍品、冷凍の輸入品が広く使われていて、ほとんどの人が気づかずに、というより無関心で食べています。とくに若い人がそうです。
 そりゃま、別に構いはしませんが、しかし、情けない。栄養や健康に良い悪いという以前の問題で、こんなことでは命のつながりが見えてこないばかりでなく、農家は野菜を作る目的が分からなくなってしまいます。たとえダイコン一本でも生きものなのです。命があるんですよ。こだわって育てているのです。】
(12月26日付け朝日新聞)
 作家であり、農業者である山下惣一さんからの伝言である。ホンモノを食べてみてよという叫びである。
 私は専業農家の家庭で育ったから、小さな時から野菜作りを見て育ち、ホンモノを食べて育った。そんな私は、野菜には旬というものがあり、年がら年中でている野菜は野菜の顔をしているだけだと思っている。本当に冷凍のダイコンおろしってあるのですか?

(第210話)食品「たちつてと」            2005,2,27
 いろいろと語呂合わせを考えてくれるものである。今回は健康アドバイザーの美波紀子さんの話。
 【「食事の栄養バランス」については、30品目の食材をそろえるとか、一汁三菜の献立にするなどの一応の目安がありますが、私自身が実行して健康的に12キロのダイエットをした栄養バランスの取り方を紹介します。それは毎日「たちつてと」の頭文字の食品を必ず食べる、と言うシンプルな方法です。
 「た」・・・大豆製品→植物性タンパク質。
 「ち」・・・チーズなどの乳製品→カルシウム。
 「つ」・・・ツナ(まぐろ)の仲間の魚介類→DPA、DHA(動脈硬化予防)
 「て」・・・てん草などの海藻→植物繊維とミネラル。
 「と」・・・トリ肉などの肉類→動物性タンパク質。
 これに加えて主食となる炭水化物や野菜、果物が必要です。野菜は信号の「赤・黄・緑」の三色をそろえる、と覚えてください。】
(2月17日付け毎日新聞)
 「たちつてと」と信号色野菜か・・・。私は奥さんを信頼しているから、難しいことは言わなくて、奥さんの作るものは何でも食べる。昼食は外食だが、これは日替わり定食と決めている。人任せである。自分で選んでいると、ほとんど毎日同じ類のものになる。要はいろいろ何でも食べればいいのだ。

(第461話)咀嚼の効果               2005,11,19
 先日高校全体の同窓会があり、還暦の歳が当番ということで参加した。その同窓会で、同級生の金沢大学口腔外科教授の山本さんの講演があった。高校卒業以来初めて会ったが、かなりソフトな感じになっていて、話も上手で面白く、分かりやすかった。さすが教授である。講演は「生活習慣病と咀嚼」という内容で、この「話・話」にふさわしい話でもあるので、いただいた要約のプリントから「咀嚼の効用」の部分を紹介します。
 【咀嚼の効用「卑弥呼の歯がいーぜ」
ひ:肥満防止(一口30回噛むことで過食前の満腹中枢作動)
み:味覚の発達(唾液アミラーゼが穀類の甘みを誘導)、味蕾刺激)
こ:言葉の発達がはっきり(咀嚼筋、表情筋の発達)
の:脳の発達、刺激(噛むことで脳の局所血流量の増加=ぼけの防止)
は:歯の病気予防(虫歯、歯周病、顎関節)
が:がん予防(唾液中の消化酵素等に解毒、抗癌・抗菌作用)
い:胃腸の働きを促進(噛むことで胃液、膵液の分泌を促進)
ぜ:全身の体力向上・全力投球(一流スポーツ選手は噛む力が強い)】

 ともかくよく噛むこと、噛むとは強く噛むことではなく噛む回数を増やすことを力説された。噛むことが肥満防止になることはよく聞く話であるが、言語の発達、がん予防効果は知らなかった。ちょうど11月14日の毎日新聞に、噛む回数が減少して顎が未発達になり、日本語が危ないという記事が出ていた。今の子供が、口がきちんと開けて話せないほどになっているとはびっくりした。
 高齢者では歯が残っている人ほど知的・肉体的活動が高いという話もあり、同級生からせっかく聞いた良い話は実行しなければなるまい。

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 さて、これまでの文から得られることは、@バランスの良い食事をするA歯の健康に心がける、この2点に絞られる。具体的には「野菜の摂取に心がけ、よく噛んで食べる」、たったこれだけのことになる。
 しかし、これだけではあまりに味も素っ気もないので、一宮市にある山下病院理事長の服部さんが「味な提言」と題して、中日新聞に数回にわたり食を中心にした提言を執筆され、2008年3月30日の最終回でまとめ的に書かれていたので、この中から紹介しておく。メタボ症候群を減らすためとして、

 【1.ごはん、だしを基本に魚、大豆製品、野菜、海藻を加え、肉は減らそう。
  2.ファストフード、アルコール、清涼飲料水、スイーツ、スナック菓子を減らそう。
  3.朝食をしっかり、タ食軽く、間食・夜食をやめ、腹八分目を心がけよう。
  4.よくかんで、ゆっくり食べよう。
  5.自動車に乗ることを減らし、歩こう。
  6.エレベーター、工スカレーターを減らし、階段を上り下りしよう。
  7.日常生活の中でこまめに動こう。
  8.休日には野山を歩き回ろう。】

 そしてメタボの原因として、国による戦後の栄養改善運動の行き過ぎを指摘されていた。
 【学者やジャーナリストを使って「米を食べるとバカになる」「米を食べている限り、欧米人に追いつけない」と日本人の食生活の基本である米とだしを悪玉にし、肉、油、ミルク、パンを勧めた結果、五十年後にメタボが生じたのです。】
 人間の健康を左右するのは、まず第一に体に入れる食物であろう。体格のいい欧米人を見て、あのようになるには食事を同じようにしなければという発想だったようだが、行きすぎてしまい、弊害が生じてしまった。日本食の素晴らしさが見直されているが、まだまだのようだ。食糧自給率を昔のように上げるのは並大抵のことではないが、食事内容を変えるのはそんなに難しいことではない。こうした記事などで知識の普及を図らねばならない。
 そして、体を動かすことである。本来体を動かすことは生活のためであったが、これも便利さが行きすぎてしまって、生活の中で動かすだけでは健康が保てなくなってしまった。人間の愚かさを感じるが、でも補わなければならない。
 最後に蛇足的になるが、今の日本には食糧自給率の関わることも重要なことだと思うので紹介しておきたい。
 食糧自給率は40%を切るという国、その上年間2000万トン以上もの食べ物を捨てているという浪費大国、輸入し捨てる、何とも食については傲慢不遜な国・日本である。そんな国に対して食の浪費防止に関する主婦からの提言である。

 【まず、家庭でもできることを考えてみた。食品の賞味期限は「0.7の安全率」を見込んで設定されており、保存テストで出された期限の7割の期限が書かれているため(例えば、10カ月を7ヵ月に)、期限を過ぎてもすぐに捨てる必要は本来ないと知ってほしい。
 外食の際は、予約を取る店や、少ないコースメニューから選ぶ店を選択する方が、食材の無駄も少なくて済むし、廃棄する食材の価格を値段に乗せずに済むため値段も安く済む。仕入れのし過ぎは食材の大量廃棄につながることをお店も認識してほしい。冷蔵車の中身をできるだけ捨てずに、あれこれ工夫する主婦感覚からの意見です。】
(2007年7月20日付け毎日新聞)
 東京都の主婦・柴田さん(47)の投稿文からです。賞味期限きれの食材を使って断罪されている会社がよくニュースになる。規則を破っているのだから、責められるのは当然かもしれないが、少しヒステリックな責め方ではないかという気がしている。本来食材の賞味期限などは保管状態で全く違ってくるものであり、一律に律するものではない。昔は食べられるかどうかは匂いをかぎ、少し口に含みなどして自分で判断したものである。これだけ大量輸入、大量廃棄している国の賞味期限については、再考を要するのではなかろうか。
 柴田さんの外食の話も面白い。ボクがよく行く店の昼食メニュ−はひとつである。注文の必要もないし、席に座れば同時に出てくる早さである。この早さと安さと家庭的な味が魅力で行くのであるが、柴田さんの指摘で食材の無駄のなさに気付いた。それが安さにつながっていたのだ。主婦感覚はエコ社会に重要のようだ。
                      (平成20年4月18日)


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