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会期半ばの愛知万博雑感
 開催まで大変な紆余曲折のあった愛知万博も、今年3月25日、開催にたどり着いた。9月25日まで185日間、一大イベントが繰り広げられる。入場者も、当初は様子見の人が多かったようだが、大型連休明けから次第に多くなり、7月4日の102日目で1000万人を超えた。この状況で行けば、目標の1500万人は軽く超え、1800万人に達するという予測も出てきている。この万博について、会期半ばを超えたところで、私なりに少しまとめてみることにする。


 愛知万博は、公式には1988年10月、鈴木愛知県知事と西尾名古屋市長、中部財界人が万博開催構想を推進すると合意したことに始まる。90年2月、開催地元県として愛知県が万博会場を瀬戸市東南部の海上(かいしょ)の森を選定したことから、自然保護団体の猛烈な反発にあい、それ以後、会場について、開催理念について大きな議論を経ることになる。しかし、97年6月、BIE総会でカナダとの投票の上、日本開催が決定し、このほどの開催にこぎ着いたのである。愛知万博の公式ホームページから理念等を少し拾い出してみる。
 正式名称は「2005年日本国際博覧会」、略称が「愛知万博」、愛称が「愛・地球博」である。テーマは「自然の叡智」、サブテーマとして @宇宙、生命と情報、A人生の“わざ”と智恵、B循環型社会を掲げている。そして、「巨大化した人類の活動は、地球自然の許容量を超え、さまざまな危機を知らせるシグナルが点滅し始めている。地球上の総ての『いのち』の持続可能な共生を、全地球的視野で追求することが、21世紀における地球社会の構成員総ての課題となった。この課題を解決するために、私たちは愛・地球博のテーマである“自然の叡智”を縦糸に、豊かな交流を横糸にして、地球社会を包む、柔らかく、豊かさと美しさにあふれる織物を織り上げようと思う。」と書かれている。このテーマと趣旨の実現のために、環境に配慮したエキスポ、地球大交流を目指すエキスポ、市民が参加するエキスポ 、IT時代のエキスポを唱え、それに沿う企画、実施、展示をしているということになる。


 私は愛知県民として、愛知万博の動きは気になるところであり、少し遠くからではあるが興味を持って眺めてきた。経緯はいろいろあったが、ともかく決まり始まったのである。生涯に二度とない機会である。大いに参加し、享受しようと思った。万博ボランティアにも応募し、年間パスポートも購入した。開催してまもない3月28日にまず行った。そして、7月3日の入場で9回目を数えた。といっても、年間パスポートを持つ気楽さで、終日いることはない。午後から入場したり、1日の勤務を終えてから出かけたこともある。
 さてこういった催し物では、いつもながら人気パビリオンは大変な込みようである。入場に何時間待ちは通例のことである。この万博ではその解消の手段として、インターネットによる事前予約や整理券配布などいろいろな工夫がされているが、何時間待ちのパビリオンが毎日いくつもある。先日行ったときなど、330分待ちの表示がでていたが、それでも人は並んでいるのである。私はこういった行列は全く苦手で、9回も行きながらまだ入っていない人気パビリオンがいくつもある。
 しかし、毎回十分に楽しみ、新たな感動を持って帰って来るのである。これから行かれる人の参考になることも願って、思いつくままに感想や私見を述べていきたい。


1)約170haの敷地に121カ国、4国際機関が参加している万博である。何も人気パビリオンに何時間も並んで入場しなくても、数回程度の入場なら他で十分に楽しめる。日本全国から、世界各国から人や文化が集まっているのである。オープンステージも何カ所もある。こんなに一堂に見られるのは万博こそである。ガイドさんと一緒に森林を探索したり、供給する電力のシステムを見学するコースなど思いもしなかった趣向もある。私は個々には不満なこともあるが、総合的に判断して全く素晴らしいと思っている。

2)人気パビリオンの入場について、インターネット予約をするのがよいが、私も何度も試みているが、混んでいてなかなか難しい。かなりの根気と運がいるようである。現地で配布される整理券を手に入れる方法もある。数館を除けば、比較的容易に手にはいると思う。
 7月4日付け朝日新聞に「整理券の出し方を工夫すれば、待ち時間を30分以内にできるはずだ。主催者は来場者の待ち時間を最少にすることが最低限のサービスである」といった投稿文が掲載されていた。まもなく日立館ではほぼこの提案に近い形の整理券方式が導入されるようだ。冷凍マンモスの展示では、当初と比べかなり待ち時間が改善さている。日々いろいろな工夫、改善がされているが、これから本格的な暑さになる。ぜひもうひと工夫をお願いしたい。

3)7月4日の中日新聞に「万博に行ってきた人の話を聞くと“楽しかった”という人は大勢いる。だが、自然の叡智を感じたとか、これからの未来に向かって人類、自然、地球のことを考えさせられた・・・・という人には、あまり会えない。現場に関わる人たちからは、“あほらしい・・・”というあきらめの言葉さえ聞こえてくる、会期半ばだ。」という記事があった。“あほらしい・・・”という言葉が何を意味しているのか、戸惑うところであるが、このことについて触れてみたい。
 この万博について議論が進む中で“自然の叡智”という難しいテーマに決まったのだが、高尚な理念だけでは人は集まらない。人を集めることが重要ではないという意見もあろうが、日本ではもう二度と開催されないだろうと言われる万博である、まず入ってもらうことが先決である。それにはやはり楽しい仕掛けが必要だ。そして、楽しかったという声は、そのように企画されていたと言うことである。だから年間パスポートが約40万枚も売れるし、10回以上入場される人もたくさん出てくるのである。そうした中でテーマの話しとなるのだが、私は他のイベントに比べれば、大いに意味があると思っている。
 各パビリオンには程度の違いはあるが、テーマが組み込まれていて、意識しないうちに何かを感じていると思う。何度も入場している人はだんだんテーマを正面に取り組んだ会場にも足を運ぶ。例えそうではなくても、これだけの会場でほとんどゴミは落ちていないし、分別もきちんと行われている。想定以上にゴミが少ないという記事も出ていた。ボランティア始め会場係員の働きもあるが、ほとんどの人がゴミの意識をしているからだと思う。

4)地球市民村や瀬戸会場の市民パビリオンでは、環境問題を正面から取り組んでいる。見逃すのがもったいないようなイベントが毎日組まれている。参加者は増えてきているようだが、まだまだ寂しい。何度も入場できる人しか参加されないかもしれない。
 こうしたものは静かな雰囲気が必要で、あのように離れた場所になったのかもしれないが、私はもっと正面入り口に近い、企業パビリオンがある位置にした方がよかったと思う。多分企業の協力を得るために、あのように最も良い場所が企業パビリオンに割り振られたと思うが、企業パビリオンはどんな場所であっても人は向かうであろう。その導線上に正面からテーマに取り組んだものを配したら、先ほどの新聞記事はもう少し違ったものになったのではなかろうか。

5)この万博が猛烈な反対にあったのは、先にも書いたように海上の森という里山を開発して行うことにあった。この地区だけの自然環境を考えれば、環境万博でもしない方がよかったろう。では何もしない方がよかったろうか。私は地球環境を考えると、もう何もしないのが一番良いと思っているが、残念ながら人間何もしないわけにはいかないのだ。今の日本にあっても、多くの国民は景気がよくなることを願っている。景気がよくなるということは活発な経済活動をすると言うことである。また、人間がいつまでも活発に、生きがいのある生活をすることに誰も異論はないだろうし、むしろそういう生活を勧めている。しかし、活発に過ごすということはエネルギ−を使い、廃棄物を出すと言うことである。我々が今できるのは、地球環境を考えながら、そのエネルギーをいかに有効に使い、地球の破滅を少しでも遅れさせることである。そのために、環境をテーマにしたイベントが開かれたことは何よりもよかったと思う。
 そして、この万博の意義を少しでも大きくするには、多くの人が参加して、地球環境について多くの知識を持つことである。7月10日の毎日新聞に、環境経済人委員会代表の横山氏が「できるだけ多くの国民に環境博に参加してもらえる工夫を政官財民が協力して行うことが大切だ。会場を訪れた人たちに現状をよく理解し認識してもらう努力と工夫が大切だ。日本でこの時期に環境博が開催されたということは、世界に地球環境問題の深刻さと取り組みの大切さを発信していく大事な役割が日本にあるということだ」と言う趣旨のことを書かれている。

6)7月9日の中日新聞に、海上の森保全を求めて万博開催を反対してきた、日本最大の環境保護団体「日本野鳥の会」が参加することになったという記事が出ていた。いつまでも反対だけでは主義主張にとらわれているだけになる。始まったからには、その中に参加しながら自分たちの主張をすればいい。私はこれで環境万博の効果はより大きくなったと思う。



 最後に万博ボランティアに触れておきたい。
 15000人の募集に24000人以上が応募した。これには誰もがびっくりし、時代は変わってきていると感じられたと思う。このおかげで5日以上参加の条件が全員が5日となった。研修会があった。皆さん強制されたわけではなく、自発的な参加であったので活発であった。そして、主催者もこの研修を万博のためだけではなく、その後の社会で活動してもらうという意図の研修であった。
 私は5月が第1回目の当番になっていたが、あいにく仕事の都合で参加できなくて、6月24日が最初の機会となった。私の持ち場はメインゲート(北ゲート)での案内、整理であった。分からないことは聞けばいいので、さほど大変とは思わなかったが、それでも5時間ばかり立つのである。いろいろなことがある。一番厄介なのはペットボトルの持ち込み禁止への対応である。持参のペットボトルから用意した紙コップに移し替えてもらうわけであるが、当然ながら誰もいい顔をしない。憤慨する人も多い。テロ防止対策と言うことであるが、警告程度の意味はあるかもしれないが、あの程度の検査で本気の人を防ぐことができるとは思えない。表だって言えない理由があると思うが、それにしても人騒がせな策を採ったものだ。
 計算してみると、毎日650人のボランティアが活動していることになる。この力は、今後いろいろな分野において大きな働きをするであろう。

 先日も帰ってきて万歩計を見たら、20000歩以上を示していた。軽いウォーキングである。取り立てて用事がない限り、万博期間中は万博ウォーキングを楽しもうと思っている。そして、環境への配慮やボランティア意識など万博効果が持続し、より大きな発展になることを願うのである。
                                               (平成17年7月14日)



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