zu029ku    《庫さん、瀬戸内の小島で潮風を切る》
☆サザン・セト大島ロードレース☆
                  (開催日・平成16年2月1日)


 現在64歳で修行ランナーを自称する庫(くら)さんは、50歳を越えてからジョギングを始められ、すでに130回以上全国各地のジョギング大会に参加されている。参加されると毎回しっかりした記録を残されており、それに感心し、ひとつを借りてここに紹介する。かなりの長文であるので一部省略していることをご承知おき下さい。


 自分のように齢を重ね、老境の域に達すると寒さが身にしみて冬はとかくすると冬眠状態になりかねない。
しかし、"修行"は継続することが肝心なる故、いずこに遠征しようかといろいろ検討したところ、瀬戸内海の小島にほどよいマラソン大会を見いだし、走友と参加することにした。場所は山口県柳井市の沖合いに浮かぶ「周防大島(屋代島)」である。この島は瀬戸内海の島々のうちでは3番目に大きく、淡路島、小豆島の次である。
ここには4町があり、平成11年の夏、島内の「久賀高校」が甲子園の全国高校野球大会に出場し、島民が大挙こぞって甲子園へ繰り出したというエピソードがある。
ふるさと寒きころに温暖な瀬戸内の小島で海岸沿いを走行するのはさぞかし快適だろうと期待して勇躍出かけることにした。
往路は名古屋・広島間を金曜日の高速夜行バスを利用し、土曜日には広島や岩国で観光スポットを探訪してのち、大島に渡り宿泊。日曜日にはマラソン大会に参加。その夜には広島・名古屋間を高速夜行バスで帰るというものである。少々強行軍かもしれないが、これが修行というものであろう。ただただ我慢するのみである。

 1月30日(金)の午後10時10分に走友とJR名古屋駅で落ち合い、しばらくカフェにて雑談にふける。
高速夜行バスは午後11時きっかりにスタート。走友は高速夜行バスは初めての経験とのこと。指定席が2階の最前列のため前がつかえて足を投げ出してリラックスできないので、後列のほうで空いている席に変わる。 
(中略)
2月1日(日)午前6時頃起床。睡眠十分で気分良し。外はうす曇。
午前7時に朝食に向かう。昨夜の二人ずれと挨拶を交わし、雑談しながらの朝食。
朝食後、部屋に帰り、準備をしながら窓から眺めるとマラソン会場が望見される。徒歩で15分ほどだろう。午前8時に民宿を出立。例の二人ずれが車で送ってくれた。
5分で会場近くの駐車場に着いた。手前から陸上競技場、総合体育館、道の駅「サザン・セトとうわ」と並び、これらすべてが今回の会場となっている。
受付を済ませ、総合体育館内の一隅を確保して着替える。ジャージを着たまま、隣のグランドにて軽くウオーミングアップしつつ、今日の着用シャツを決める。例によって半袖万博Tシャツを持参してきたが、風があって小寒いので長袖Tシャツを着用することにした。ランニング用に着替えたものの、時間も十分あるので、トイレの用を済ましつつ、出店や道の駅など見て臨戦気分を盛り上げる。
スタートは隣の陸上競技場のグランドである。舗装ラバーの感触は足に気持ち良い。
やがてスタート時間が迫ってきた。400メートルトラックの第4コーナーがスタート地点である。天候はうす曇で少々冷たい風が吹いている。

午前10時15分に号砲一発。中段くらいからスタート。スタートラインは約10秒遅れで通過。グランドを一周と4分の1して外へ走り出てゆく。これよりひたすら国道437号を海岸沿いに東へ向かうのである。この大会のために国道を通行止めにするとは都会では考えられない。こういう地方の過疎地帯ならでこその措置であろう。
800人弱のハーフマラソンランナーはいよいよ瀬戸内の海岸沿いに出て軽い向かい風を受けつつ東へ向かってゆく。左手は海である。
軽いといっても向かい風なのでなるべく大柄なランナーや集団の後ろを追走する作戦に出る。年に一度のイベントであるからであろうか、寒い中をお年寄りたちが集落ごとに出てきて応援してくれる。この素朴さがランナーには程よい活力となる。
海は少々荒れているのか白波が出ている。時折海岸に狭まった山陰に入ると風の冷たさが身にしみる。こんなときはなるべく日当たり部分を走行するか、我慢して通り抜ける。
沿道には海水浴場や釣り客相手の店が垣間見られ、その季節には本土から海水浴客や太公望がドッと押し寄せてくるだろう。
定期バスにすれ違う。日に数便しかないのであろう。これだけは通行止めに出来ないようだ。5キロ過ぎに給水所があった。水コップを取ったが、それほど暑くはないので、軽く口に含んだだけである。国道はほとんど海岸沿いを走るので道路の海岸側には高さ1メートルほどの防波堤があり、海水浴場では階段が付けてある。こういった風景はわが愛知県の知多半島に似ている。ただ砂浜が多く、海の色が美しい。
沿道の集落ごとに寺社が目に付く。このあたり古くは村上水軍が荒らしまわったところだろうから、島民たちはそのお加護にすがったのかも知れない。そんなことを思いながら走っていると8キロ地点あたりでトップ集団が続々と折り返してきた。広島経済大学の選手が多い。過去の大会では彼らが記録を持っているとアナウンスしていた。このレースは彼らのトレーニングの場であるようだ。いずれにしても若い人たちが大いに肉体を鍛え、次代の日本を背負ってくれることは頼もしい。
10キロ地点は50分きっかりで通過。いつもより随分早いがそれほど苦しくもない。まもなく折り返しの逗子が浜海水浴場が近づいてきた。神社のところで星野哲郎歌碑の案内が出ている。帰りに寄ってみることにした。500メートルほど走って折り返し点を52分20秒で通過。
神社の境内に星野哲郎の歌碑があった。歌詞は船村徹作曲になる『なみだ船』である。哲郎はご当地出身の売れっ子作詞家だそうだ。
歌碑を見たため30〜40秒ロスしたが気にしない。帰り道は追い風なので少々楽に走れそうだ。見覚えのあるおばちゃんたちのエールに応えながら頑張る。「がんばってえ〜」の声援に、手を振って「ありがとう〜」と応えるのが普通だが、「がんばっとるよ〜」とか「もうフラフラだよ〜」とか応えると爆笑が跳ね返ってくる。
そんなこんなであと5キロ地点を1時間20分00秒で通過。
今回の大会では女性の参加者が少ないのか、ここまで同じような力量で楽しく併走出来る女性ランナーに巡り合えなかったのが残念といえば残念である。残り5キロ弱ともなると前を行く女性をターゲットに頑張る。ゴール地点のアドバルーンが見えてきた。
残り3キロほどになったとき、苦しいですねと50歳くらいの男性ランナーが声をかけてきた。ここらあたりが我慢のしどころである。彼と併走することにした。結局ゴールまで相前後して駆けた。トラックに入ると道路舗装面と違って、さすがに足触りの感触が気持ちよい。かといってトラック内だけでのハーフマラソンは御免である。やはり変わり行く風景を見ながらの走行には捨てがたいものがあろう。
ゴールは1時間44分20秒である。


しばらく呼吸を整えて芝生の上で一息。近くにいた背の高い黒人ランナーに声をかけたら、彼は1時間32分ほどでゴールしたそうだ。岩国基地からやって来たとのこと。
スポーツドリンクを取り、一緒に飲んでいると彼の走友が続々ゴールして来る。
わが走友を見つけ、更衣室の体育館に戻る。途中温かいレモンジュースをいただくと内臓にしみわたり、生き返った気分である。
館内のステージではいろいろイベントを始めるようだが、帰ってきたランナーたちで場内は騒がしい。着替えを済まし、外へ出てお店を下見するが、人気のある食べ物屋は長蛇の列である。缶ビールとホットドッグを買い入れ、付近に腰を下ろして雑談しつつ、腹ごしらえ。このときがいつもながらの達成感のあとの至福のひと時となる。
このあと道の駅に立ち寄り、お土産を購入。広島で買えばいいだろうと思っていたが、走友の強い勧めでここで手にする。
今日は夕方8時頃までに広島へ着けばいいので時間は十分にある。二度と来れないこの周防大島の雰囲気を楽しむべく再度場内に入り、のんびり足を伸ばして閉会式を観察。
最後に抽選会があって、14:00過ぎに閉会となった。


会場前のバス停「周防長崎」にて14:39分発の大畠行きに乗車。ランナーの乗客は数人、先のバスで行ってしまったのだろうか。まだまだ会場にはマイカーがわんさとある。来場者のほとんどは車で来ているようだ。車中で広島から参加した中年女性ランナーと言葉を交わし、いろいろアドバイスをいただいた。途中眺望の良いホテルに立ち寄り、汗を流してゆくことにしたが、マイカーで道路が大渋滞。30分のところを1時間かかってしまった。 
大島大橋の島側のバス停「東瀬戸」で下車。5分ほど歩いてホテル「大観荘」へ入る。本日は大会参加ランナーに限って入浴代が半額の500円のサービスである。
お風呂は海峡を見下ろす高台にあって、室内には演歌風呂、室外には露天風呂がある。演歌風呂には常時演歌が流れ、星野哲郎作詞の演歌が多かったように思う。更衣室にはたしか「兄弟船」の歌詞が掲げられていた。
大会の汗をすっかり流し、さっぱりする。1時間ほど滞在して次のバスに乗る。数分後の16:55にJR山陽本線大畠駅に着いた。17:11発の広島方面行き普通列車に乗り込む。 
高速夜行バスの出発は21:45である。復路も指定席が2階の最前列であったが、乗車率50パーセント強と余裕があるので、乗務員に申し出て後列に変わる。
翌日午前6時30分に定刻どおり名古屋駅に着いた。
少しばかりきつい行程だったが、充実した日々だった。


        落とせ体脂肪 
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             これぞほんとのマラソン修行


                                平成16年2月8日 回想
                                  (平成16年7月20日 掲載)
      


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