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豆本「織姫の恋」


 豆本なるものを実際に見たのは、多分5年以上前のことだと思う。一宮市豊島図書館で、ある製本の会の作品展があったとき、知人の誘いで出かけてそこで見かけたのである。1冊頂いて帰ってきた。豆本とは、以前ははがき半分以下のサイズの本をいっていたようだが、現在では縦50mm以下の本を指すようである。そして、その本に次のような説明文が添付してあった。

           
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                 なぜ「豆本」が幸せを呼ぶか
 昔中国で、「科挙」と称される官吏登用試験に合格すると、名誉も高収入も美しい妻も思いのままといわれ、難しい試験に何年も何年も挑戦したという記録があります。そのとき、衣服に「豆本(小さな小さな参考書?)」を縫い込んで受験すると合格するという話が現代に伝わり、「豆本」を身につける(例・財布等に入れる)と「幸」が訪れるとの話です。
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 今、一宮歩こう会では7月24・25日開催の「第5回一宮七夕まつりツーデーウォーク」の準備に大わらわである。参加費では必要経費の半分くらいしかまかなえないので、その費用捻出にいろいろな工夫を凝らしている。その中で、豆本を作って記念に買っていただこうという案が出された。上記のように、身につけて歩けば幸せが訪れるという言い伝えを利用し、小瓶に豆本を入れ、リュックサックにつけてもらおうというわけである。ウォークの会の関連グッズとしてはなかなか面白い。幸い一宮市内で豆本製作の工房を開いてみえる松波先生という方がある。その松波先生に協力をお願いして、さる6月2日及び7日の2日間、ボランティアを募って豆本製作が行われた。延べ25名が参加し、250組くらいできたようである。歩こう会の行事にはほとんど参加したことのない妻であるが、幸いこの催しには参加できる時間ができて出かけていった。9時から午後3時まで楽しかったようだが、細かな作業で大分疲れて帰ってきた。



さて、瓶に入れた本の内容であるが、松波先生の創作話「一宮七夕民話・織姫の恋」という七夕まつりにちなんだ物語である。冒頭の部分を少し書いてみる。

          
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 服織神社の門前に住むみづえさん、機織り上手の乙女です。
神池の蒼みがかった青を織物に現そうと、訪れるたびに眺め、工夫を凝らし挑戦するのですが、もう少しというところが上手くいきません。
 ある日のことです。モヤモヤを抱きながら、神池のほとりにやってきました。よく腰をおろしてあれこれ想いをめぐらす、岩で若者が筆を走らせていました。
 なにげなく覗いたみづえさん、激しい衝撃を受けました。これぞ私の求めていた色ではないか。声をかけて、教えを請おうとしたとたん、若者は・・・・・・・
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 この後どんな展開になるかは買っていただく人の楽しみに残しておきます。もちろん、結末は“めでたしめでたし”です。
 さて、豆本についてインターネットで少し調べてみると、添付されていたような話は見つからなくて、科挙の試験でカンニングに用いられた話ばかりである。出題の中心になる「五経」等をびっしり書き込んだ豆本を試験会場に持ち込んだというのである。あまり良い話ではないが、科挙試験に合格すれば栄耀栄華が約束されるのであるから、幸せのためのグッズというのもまんざらでもない。
 ヨーロッパでは16世紀頃、手頃に聖書を持ち歩くために作られたのが始まりといわれる。
 日本での始まりは江戸時代からで、今の文庫本くらいの大きさで、女性や子供むけに作られた。静岡県藤枝市には「現代豆本館」という博物館もあり、約1000冊が展示されているようである。
 ギネスブックには、縦横1.4mm、1ページに0.07mmの文字50字が印刷されている本が登録されている。
 さて、このグッズが会長や会の思惑通り売れて、「織姫の恋」のように“めでたしめでたし”といくか、新たな楽しみである・・・・などと呑気なことをいっている場合ではないが・・・。自分たちで作って、自分たちで買うなんて羽目にならないことを切に祈るばかりである。
 豊島図書館で見かけた豆本は、今回お世話になった松波先生のものであることはいうまでもない。初めて見てから何年後かにこんなところで結びついたのである。聞くところによると、松波先生はすでに70歳を越えた方で、先ほどの製本の会を始め、自分史の会、民話の会などで市民を指導してみえるとのことである。私にまだお会いする機会がないのは残念だが、今後どんな展開があるのか、これも楽しみにしておこう。
 
 結果が出るのはそんなに遠いことではない・・・・続編を楽しみにお待ちください。
                             (平成16年6月12日)

(付録)
「一宮七夕民話・織姫の恋」に出てくる服織神社、八龍神社、神池を紹介しておきます。
いずれも真清田神社境内にあります。     (平成16年6月28日)
服織神社

ご祭神は「萬幡豊秋津師比売命
(よろずはたとよあきつしひめの
みこと)」であり、真清田神社の
ご祭神「天火明命(あめのほあ
かりのみこと)の母神で、別名を
七夕祭の織姫「棚機姫神(たなば
たひめのかみ)と言われている。
この地方の地場産業の「織物の
神さま」として古くより信仰を集め
昨今七夕伝説より「縁結びの神
さま」として、若い女性の信仰を
集めるようになった。

八龍神社

神 池


(続編)
 延べ2000人以上の参加をいただいて、第5回一宮七夕ウォークは成功裏に終わった。
 さて、豆本の行方であるが、まずいくらで売り出すかが問題となった。1000円という案が出された。このように小さなものに(小さいから価値があるのだが・・・・)1000円も出す人があるのだろうか。しかし、実際に作った人から、500円ではその苦労には引き合わないという声もあって、結局1000円になった。私にはいかにも高く思われたが、珍しい縁起物ということに期待した。
 当日は一宮市内の女子大生2人が浴衣姿で売り歩く応援もいただいて、結果的には約150組が売れた。
 大当たりとは言えないかもしれないが、マアよかったと言えるのではなかろうか。会員も豆本製作という機会がもてたし、参加者にも豆本というものを知ってもらうことができた。私もこんな文章を書くネタができたし、また、松波先生と知り合うこともできた。いろいろできる体制があればやってみればいい。しかし、一部の人の負担が過大になっていなければよいが・・・・・・
                          (平成16年8月25日) 


川柳&ウォーク