zu024 グラウンドワーク・第3話
国づくりフォーラム
平成15年8月1日、名古屋東区の「メルパルク名古屋」において「21世紀型国づくりフォーラム」が開催され、先日その内容が冊子にまとめられた。このフォーラムの主催者である実行委員会に参加していたので、私の感想を加えながらこのフォーラムの内容を紹介します。 |
私が「グラウンドワーク東海」の会長・伊貝星治氏から「21世紀型国づくりフォーラム」実行委員会への参加要請をうけたのは、平成15年5月のことである。6月12日に初の会合がもたれ、12名ほどが集まった。伊貝氏からフォーラムの主旨、日程、内容等が説明され、ほとんど実施に移すだけの状況になっていた。運営委員の役割分担、開催までのスケジュ−ル等を打ち合わせ、その後5回の委員会を持って開催にこぎつけた。非常に短い準備期間であったが、こうしたことにセミプロみたいな人の集まりであったのでできたことであろう。どこの市民団体でも思いがけない情報や技術、豊かな人脈の持ち主がみえるものだ。これがこういった団体に参加する面白さ、楽しさである。 開催当日、私は仕事を休んで会場準備や受け付けに走り回る。私のできることはこんなことくらいである。300人の会場は満席となった。 フォーラムは予定通り順調に終わり、数ヶ月後その結果が冊子になった。私が今回この随想を書こうとした意図は、グラウンドワーク東海の推進委員となって半年たつが、いまだ何をなすべきか、何ができるのか、つかみきれない中にいて、このフォーラムの成果を自分自身でまとめることによって、少しは何かがつかめるのではないか、また、まとめたものをホームページで紹介することによって、何かの役に立つのではないか、といったことにある。では以下に冊子を参考にしながら私の観点でまとめたものを記述します。 まず、伊貝実行委員長の開会挨拶から始まった。 |
「21世紀型国づくりへ・住民参画について」 伊貝実行委員長の挨拶(要旨) ○新しい時代の地域づくり・国づくりは行政だけで行うものではなく、地域住民が 参画し、実践する「21世紀型国づくり」の時代となり、住民・企業・行政のパー トナーシップと協働が重要だと思われる。 ○今の日本人は「自尊心」や「名誉心」を失いかけている。職業やお金に関係 なく、日本人はもっといい意味での「自尊心」、「名誉心」を大事にして「豊かな 心」を取り戻すべきだと思う。そして、地域に住む人達の心が豊かになり、その 住民が地域づくりに取り組めば、地域社会の発展につながると考える。 ○住民・企業・行政のセクター、そして教育のセクターやマスコミのセクターが それどれの機能と役割分担を明確にしながら、他のセクターへの批判者や 評論家の立場を取るだけでなく、日本各地に「良好な環境」と「心の豊かさ」に 恵まれた地域社会実現のために他のセクターと協働していただきたい。 |
第1部メッセージコーナーは、まず、ソプラノ歌手下垣真希さんのミニコンサート「郷土愛を育む日本の歌」である。「浜辺の歌」「朧月よ」「長崎の鐘」「ふるさと」等の歌と共に日本の美しさに対する思いが語られる。 続いて、元(財)河川環境管理財団理事長の岩井国臣氏の「宇宙とのひびきあい」と題するお話である。グラウンドワークは「響き合いの場づくり」と結論づけられる話であった。 そして、第2部「トークコーナー・国づくりへの住民参画」である。コーディネーター・伊藤裕夫さん、パネラーとして地福由紀さん、寺本和子さん、水尾衣里さん、中井孝佳さん、西村隆司さんの6人で100分ばかりの討論が行われた。以下にその主張点を記します。 |
「トークコーナー・国づくりへの住民参画」 (中井孝佳・尾鷲生活創造圏づくり推進協議会顧問) ●住民参画の進め方 1.人づくり・・・住民は波のごとく、さっと押し寄せたと思ったらすっと引く。 適材適所で人の活用をはかる。組織の中心となる人を確立する。 2.参画する人は気づきを持つ・・・日頃自分の周りの環境に関心を持つ。 3.仲間づくり・・・最小限のルール作り。 4.活動の評価・・・住民は独りよがりになりがち。公益性・公共性について 評価する仕組みを作る。 ●歩きながら考える・・・アイデアの羅列で終わる可能性がある。実践してこそ 次のステップがあり、課題がわかる。 (地福由紀・日本グラウンドワーク協会専門委員) ●ワークショップを3つのタイプに分ける 1.物をつくるワークショップ・・・公共的な施設を計画していく。 2.市民の意識啓発をはかるワークショップ・・・地域の方の意識を変えていく。 3.小中学校を中心とした学校教育のワークショップ・・・地域と関わりながら、 総合的な子どもを育てていく。 ●ワークショップの大切な5つの考え方 1.一人一人が皆主役・・・全員参加で話し合う。 2.同じ目線で同じ土俵に立つ・・・住民も行政も、社会的な立場や地位を越 えて、水平な関係で参加する。 3.結果よりプロセスを大切に・・・時間をかけ、相互理解を図る。 4.みんなで楽しむ・・・理論よりまず実践で、気持ちのよい汗をかく。 5.地域らしさを大切に・・・地域の個性を大事に進める。 ●組織作り 1.行政は小さな活動、小さな芽を拾いながらバックアップし、育て上げていく ことが必要。 2.すべての年齢層が関わると、バランスのよい結果を生む。 3.将来のキーパーソンになる人を最初から育てていく・・・女性は元気だが、 組織体の管理は難しい。 (西村隆司・日経コンストラクション編集長) ●環境保全とか街づくりを主としているNPO法人からのアンケートでは、土木 技術者に対して不満が多い。 ・工事内容の説明が非常にわかりにくい。・市民に接する態度やマナーが 悪い。・自分の意見を一方的に押しつけてくる。・知識がなくて何をきいても 答えられない。・いいものを作ろうという意識が感じられない。 ●住民参画の良い事例のポイント ・住民のやる気、自主性を引き出す。 ・工期などの期限を決めず、腰を据えて話し合う。 ・参加者のメンバーを自由に公募する。 ・専門の司会進行役(ファシリテーター)を置く。 (寺本和子・NPO法人朝倉川育水フォーラム理事長) ●住民参加の段階 1.行政がつくったものを管理していく 2.行政の計画に、つくる前に意見を言う・・・行政が主体。 3.計画そのものを住民がつくる・・・住民が主体、行政は制約条件のみを提示。 住民がもっとも満足する。 ●建設分野でも住民参加が適した分野と適さない分野がある。 ・適した分野・・・身近な公園、河川、道路等の環境設計、景観設計。 ・適さない分野・・・災害、経済など住民が責任を負いきれない分野。しかし、 意見を言う機会は保証する。 (水尾衣里・名城大学人間学部助教授) ●まちづくりNPOの4つのグループ分け 1.国や自治体の外郭団体という性格の強いNPO。 2.同好会的な集まりで情報発信もあまり多くない団体。 3.特定企業の製品販売、PRという営業的なNPO。 4.まちづくりに関するポリシーを持つ本来のNPO的なNPO。 ●上記4番目のNPOに期待する3つの点 1.これまで整備されてきた社会資本と身近な自然環境の維持・管理・運営・・・ 住民・企業・行政の協働、パートナーシップというと責任が曖昧になる 部分ができる。あくまで、 官がリーダーシップを取り、民がサポートし ていく。 2.文化事業と文化の多様性の維持保存・・・地域固有文化がだんだん失われて いく中で、その維持保存は重要。民がリーダーシップを取って、行政が 支援していく。 3.議会制民主主義のサポート・・・行政や住民代表の議員に幅広い考えを伝え る。情報の共有化が必要。 ●公共事業に携わる人は自信と誇りをもっと全面に出すべきである。 携わる人の腰が引けていると、受け入れる住民はもっと不安が募るので、 自信を持って市民が分かるように説明する。 まとめ(伊藤裕夫・静岡文化芸術大学文化政策学部教授) ●21世紀の国づくりは協働、響き合いである 20世紀は官と民、生産者と消費者、男と女等役割分担がはっきりし、ややも すると対立する時代であったが、21世紀はそういった壁がなくなり、協働して いく時代となる。一緒になってぐずぐずになるのではなく、それぞれの立場、異質 性、違いというものをきちんと認め合っていくことが大前提であり、そのためには 情報公開、情報の共有ということが非常に大切である。 ●グラウンドワークとかNPOが中心となっていく 市民・住民というと人によってとらえ方が非常に違っており、都合よく解釈されて いる。それをひとつのセクターとして目に見える形にするにはキーパーソン、ある いは組織化ということが必要であり、グラウンドワークとかNPOがひとつの中心に なると思われる。その中で協働のルールづくりがなされ、それがこれからの国づく りのひとつの仕組みになるという気がする。 |
以上、私が理解し得た範囲でまとめてみた。肝腎の部分が抜けていたり、
勘違いがあるかもしれない。指摘をいただければありがたい。
また、少しでも皆さんのお役に立てばフォーラムの意義も大きくなり、幸甚である。
(平成16年1月10日)