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 桜 探 訪 記

 

 毎年のことながら桜の花が咲くと、町にも村にも山にも、こんなにも桜の木は沢山あったのかとびっくりさせられる。桜が咲くとパッと明るくなる。花が咲くとは本当にこのことをいうのであろう。桜日本をつくづく感じる。
 今年の春は妙に桜に縁づいていた。桜についての知識も得た。見にも行った。と言っても今の私が仕事以外の話をしようとすると、ついウォーキングとインターネットに結びつく話になってしまう。

 3月24日に「第4回早春淡墨桜浪漫ウォーク」に参加した。一宮市の真清田神社から根尾村の淡墨桜公園までの60kmを歩くのは第1回目以来のことである。上天気の中、快調に歩き、9時間を切って淡墨桜公園に着いた。この淡墨桜は第1回のこの大会で見たのが初めてであった。しかし、このときはゴールに着く前から雨が降り出し、真っ暗となりよく分からなかった。今年は時間もありゆっくり鑑賞できた。といっても3月に花が開いているわけではない。花も葉もない幹や枝だけの裸木であるが、さすが1500年の老木はそれだけでも十分に見応えがある。大正11年に内務省天然記念物に指定され、幹の目通りは10m、東西の枝張りは27m、南北は20mという見事なものである。

 私の参加しているメーリングリスト・DMAでは3月26日に私がテーマを出す当番に当たっていた。私の予定したテーマは「私の(町の)桜便り・花便り」というもので、この時期うってつけとその日を待っていた。ところがあれほど寒かった今年の冬も3月半ばになると急に暖かくなり、南の方から開花情報が聞こえるようになった。もう26日まで待ておられない、3月23日にテーマを出してしまった。フライングであるが、それも一興と受け入れられた。そして、次々と開花便りが報告されてきた。

 淡墨桜ウォークは24日に続いて25日もコースが設定されている。25日は一宮コース15kmに参加した。一宮の木曽川堤もコースに含まれている。この堤は「お囲い堤」と呼ばれ、江戸時代に尾張藩を守るために岐阜県側より1m高く造られたというものである(明治になって逆に岐阜県側の方が高くなった時期もあったようだ)。そして、この堤に植えられた桜は国の天然記念物になっている。しだれ桜が特に美しく、本数も多い。この日はまだ数本がチラホラの状況だった。歩いていて「桜の開花宣言は何をもって宣言されるのか」ということが話題になった。そして、その日の夜のニュースで岐阜県の開花宣言が報じられていた。思わず目がいく。「標本木」という文字が目に付く。インターネットで調べてみる。各県の気象台、またはその近くに標本木という桜の木が指定されていて、その木に数個の花が開くのを確認して、開花宣言するということが分かった(標本木はつい最近まで標準木と言っていたようである)。DMAでこれをクイズにしたら、曖昧ながら知っている人が何人もいた。


 その後、愛知県でもいろいろなところの桜便りが聞かれるようになるが、急激に寒さがぶりかえす。4月4日までこの寒さは続いた。まさしく花冷えである。この時期は新しい年度が始まり、歓送迎会がいたるところでもたれるが、大変な寒さの中で花見をした記憶が私にも何度かある。今年もまさしくそんな風景であった。4月6日私は仕事帰りに妻と娘と待ち合わせて岩倉の五条川の桜を見に行った。両岸から水面すれすれに桜の花が垂れ下がる見事な景色である。寒さも去り、暖かいお花見日和に大変な人出である。散策し堤で弁当を食べ、良い時間を持てた。昨年に続いて2度目のことであるが、毎年の過ごし方にしたいと思っている。この五条川の桜は「(財)日本さくらの会」が選定した「さくらの名所100選」に入っている。犬山から清洲まで約28kmの両岸ほぼ全線に渡って桜が植えられている。
 「さくらの名所100選」にはどこが入っているのか調べてみた。全国全県に渡っているが、愛知県はこの五条川、山崎川、鶴舞公園、岡崎公園が選ばれている。東京の5カ所に続いて、京都と共に4カ所で第2位に多いのである。愛知がそんなに桜の名県とは驚いた。

 
4月8日は愛知県ウォーキング協会の例会で、三好町から刈谷市、豊明市と約22kmを歩いた。三好町というと桜で売り出している町という印象があった。来てみればいたるところ桜だらけである。特に愛知用水調整池の三好池は見事に咲いている。昼食場所は「さんさんの里」という丘であったが、回りには沢山の桜の若木が植えられていた。木1本づつに品種名と植えた人の名前を書いた札がつり下げられている。数年後には見事な桜の丘ができあがるであろう。そして、植えた人が親しみを持って集まるであろう。
 その後、刈谷市の洲原公園に行った。この公園の近くの小堤西池は日本三大カキツバタ自生地の一つで国の天然記念物になっている。洲原公園は刈谷市の桜の名所で、凄い人でにぎわっていた。どこもかしこも宴会の真っ最中で、このさわやかな上天気の中、これが平和日本春の風景といった感じである。本当にこの日は一日中桜を見て歩いていた。
 4月15日、知人と岐阜公園、金華山およびその近くの水道山へ行った。昨年、この時期に妻と水道山へ来たのだが、ミニ吉野山という様子で、近くでこんな風景が見られることに感激した。そこで今年は知人を誘って出かけたのだが、残念ながら大方もう散り果てであった。それでも井奈波神社前の通りはしだれ桜、八重桜の並木が今が満開と素晴らしいものであった。   


 4月22日はDMA設立1周年を記念して名古屋でオフ会を開くことになり、その幹事を引き受けていた。オフ会とはオフライン・ミーティングの略で、オンラインで知り合ったメンバーが実際に会って話をしたり交流を深めたりする集まりである。遠くから泊まりで来る人も想定して、前日の21日に淡墨桜を見に行くことを企画した。結局幹事3人で出かけることになったが、私には花の咲いた淡墨桜が見られることを大いに期待した。しかし、例年に比べ開花は早く残念ながらほとんど散っていた。それでもわずかながら残っており、吉野桜の花びらに比べ、かなり小さく白く清楚な花であることを知ることができた。

 このように今年のこの1ヶ月は桜・さくら・サクラで過ぎた。日本の国花は桜である。お花見と言えば他の花ではない、桜である。「桜が咲いた」と言えば合格通知である。「鯨が釣れた」という地方もあるようだが、これも「桜が咲いた」からもじったものであろう。桜前線と共に旅をしたいと言っている人もいる。桜に魅了された人は多く、日本人に桜は切り離せない関係にある。この1ヶ月、桜と共に暮れたという紹介だけのとりとめもない雑文で終わってしまったが、春の日のつぶやきと受け止めてもらいたい。
                     (平成13年4月23日)


川柳&ウォーク