ウォークの勧め
「ウォークの勧め」を12回にわたり「NPO法人グラウンドワーク 東海」の会報誌に掲載して頂きました。その文をここにも掲載し、 参考にして頂こうと思います。第1回掲載から2年半の間に変化 した部分もありますが、会報掲載時の内容とご理解ください。 (平成20年2月12日) |
(第1回)ウォークの世界・その1 【会報第11号・2005年6月発行】 健康志向からウォーキング人口は大変な勢いで増えていて、3000万人とも4000万人とも言われています。ただウォーキングと言っても、家の周りをゆっくり散歩する、朝晩に友人と連れだって歩く、鉄道会社等のイベントに参加するといったことが一般的かと思いますが、私はウォーキングの会に入会して活動していますので、そういった世界から紹介していきます。●日本のトップにはまず(社)日本ウオーキング協会があります。その傘下に各県協会があり、さらに支部があります。愛知県には9支部あります。私は、日本ウオーキング協会、愛知県ウオーキング協会、さらにその支部の一宮歩こう会に属しています。団体の大きさは、愛知県協会が会員約400名、支部は50名位から300名位まであります。愛知県の場合、県も支部も基本的には月1回の例会を持っていますから、参加する気になれば、月5回くらい参加できます。 (第2回)ウォークの世界・その2 【会報第12号・2005年9月発行】 今回は例会や大会がどの程度の規模で行われているか紹介します。まず例会ですが、歩行距離は10kmから20kmくらいでしょう。会によってはショートコース、ロングコースと能力に応じて選べるようになっています。参加者は会の規模によりますが、50名くらいから250名くらいです。●大会はさまざまな大会があって手短に説明するのは難しいのですが、愛知県協会では「名古屋ツーデーマーチ」と言う2日間の大会を実施しています。歩行距離は5kmから35kmまで、数コースが選べます。昨年の参加者は延べ約2500人でした。また、今年から「熱田・伊勢125km初詣でウオーク」を実施しています。4日間で125km歩きますが、参加者は延べ1400人でした。一宮歩こう会では「尾張一宮七夕まつりウォーク」実施していて、これは5kmから25kmです。過激なものとしては一宮の真清田神社から根尾の淡墨桜まで歩く大会がありますが、1日で60km歩きます。日本で最大の大会は埼玉県東松山市で行われる「日本スリーデーマーチ」で、3日間で10万人が参加します。●こうした大会がほとんど全国全県で実施されています。その気になれば、毎土・日に全国に出かけ30km以上歩く大会に参加できます。 (第3回)「アル中」のきっかけ 【会報第13号・2005年11月発行】 歩くのに夢中の人を我々の世界では「アル中」と言っていますが、私は「軽度なアル中」を自称しています。きっかけは平成6年に行われた「熱田・伊勢125kmウォーク」に参加したことです。●前回、今年から始まったと書きましたが、実は平成2年から6年まで5年間行われていたのです。そのとき、全国から集まったアル中さんたちに、前回までに書いたような私の知らないウォーキングの世界を連日聞かされました。大変な刺激でした。これをきっかけに私の修行?が始まりました。それまでは年数回の例会参加だけでしたが、例会参加も多くなり、全国的な大会にも参加するようになりました。私はこの催しを「私のウォーク原点」と呼んでいます。●そして11年後、再開することになった熱田・伊勢ウォークに、実質の企画・準備をする準備委員として参加しました。準備委員は電子メールを使える人で構成され、時代の流れを感じるものでした。また2日間副隊長を務め先頭を歩きました。これを人生の因縁というのでしょう。どなたにもこういったエピソードがあるのではないでしょうか。こうして人生が形作られていくのかと思うと、面白いものです。 (第4回)ウォークの効用 【会報第14号・2006年1月発行】 歩くことついて、生活習慣病などの予防効果、治療効果、さらには健康の維持・増進など、その効用はいたるところに書いてあります。私が今さら言うことではないのですが、愛知県協会の2人の会員の文から紹介しておきます。●10年前定期健診でコレステロールの数値が高く高脂血症と診断され、食事療法もうまく行かず、何とかしなければと思っているとき、ある本で『ウオーキングはからだに酸素を取り込んで、脂肪を燃やし筋肉を動かす有酸素運動で、肥満・高血圧症・高脂血症・など生活習慣病の運動療法として実践されている』ということを知り、毎日歩くことに決め翌日から実行しました。歩き始めはあまり気負わず、歩く楽しさを探す感じでのんびりと歩き、だんだん歩行距離を延ばしていきました。●私の持病は高血圧と心臓病と糖尿病でした。今は各ウオーキングの協会や団体に所属して,毎週,土日の休みはどこかの催しに参加しています。おかげで血圧は以前は薬を飲んで,180・90前後が今は薬を飲まなくて120・70で落ち着いています。血糖値は350から現在は80前後で安定しています。体重は85sから53sになりました。 (第5回)快適な歩き方 【会報第15号・2006年4月発行】 各所でウォーキング教室が開かれるようになりました。私もウォーキング教室の講師を頼まれて話をしたことがあります。愛知県協会では「指導員会」を設置し、今年初めてウォーキング教室を実施しました。ほとんどの方は生まれてこの方歩いているのに、何が今さら歩き方だと思われるでしょうが、実は私もそう思っているのですが、話してみると意外に感心されるのです。●@良い姿勢を保つ(両手の指を組んで裏返し、頭の上に伸ばし体全体を引き上げ、体をそのままに手を下ろす)A膝を伸ばしかかとから着地する。(膝を伸ばし、腹をひき、少し歩幅を広くとる)B かかとからつま先へ、足の裏を転がすように重心を移す。つま先に重心を残す。C10〜15m先を見て歩く。Dややきついと感じる速さで歩く。ひじを軽く曲げ、腕をコンパクトに元気よく振れば、さらに早く歩けますが、無理はしないようにしましょう。 ●簡単に5項目だけ書きましたが、この5項目を意識して歩くと、多分今までの歩き方とかなり違和感を感じられるでしょう。それだけ今までの歩き方は我流になっていたということです。快適な歩き方が効果のある歩き方にもなるのです。 (第6回)服装・持ち物 【会報第16号・2006年7月発行】 たかが歩くだけですから、スーツにビジネスシューズでも歩けます。でも、真夏や真冬、距離も10km以上となると服装・持ち物にも適したものがあります。●特に足は重要ですから、靴はウォーキング専用のものが良いと思います。私は最初のころ、数千円のスポーツシューズを履いていました。長距離や速く歩いたときなどよく肉刺(まめ)を作ったり爪を痛めたりしていました。それこそ清水の舞台で、2万円の専用シューズを買いました。ピタリとできなくなりました。それ以来、その靴の信奉者です。肉刺ができるのは、蒸れが一因ですので、それを防ぐには5本指ソックスが有効です。●ズボンはジーンズなどの木綿製は、濡れると全く重いし、冬は体を冷やしますので不適切です。私は上着にポケットの沢山着いた網目状のベストを愛用しています。手帳、カメラ、財布などよく使うものが沢山入っています。夏にはペットボトルも入れます。●私の独特の工夫に、手袋、タオルがあります。手袋は右手の親指と人差し指の第1関節のあたりにハサミを入れ、指を引っ張り出せるようにしています。こうすると寒くても手袋を外さず、字を書いたり、カメラのシャッターが楽にできます。タオルは年中首に掛け、夏は汗ふき、日焼け防止にし、冬は防寒に役立ちます。普通のタオルですと少し短いので、スポーツタオルの短辺を半分に切ったものを使用しています。こうした工夫も楽しいものです。 (第7回)楽しく続けるために 【会報第17号・2006年9月発行】 ダイエットだ、健康のためだと言って毎朝、毎晩義務的に歩いている方も多いと思いますが、それも結構ですが、できれば楽しく続けたいものです。それにはただ歩くことを目的にせず、楽しくする別の目的も持つことです。ウォーキングにはそれができるのです。●@公園巡り、寺社巡り、史跡巡りなどの目的を持つ。Aスケッチ、写真撮影、草花観察、俳句・川柳などの趣味を兼ねる。Bウォーキング会に参加するなど歩く仲間を持つ。C鉄道会社、市町村の行事などいろいろな大会に参加する。Dウォーキングの記録をとる。●私は第1回目に書きましたように、ウォーキングの会に属しています。おかげで沢山の歩友がいます。出かける機会にも事欠きません。私が特に心がけていることはテーマを持った観察です。寺社へ行けば、狛犬、神の使い、手水舎等、また欄干のデザインにも注目しています。写真に撮り、ホームページで公開します。今の私にとってウォーキングとホームページ作成の楽しみは表裏一体、どちらが表で裏かわからなくなっています。●私の口癖は「歴史を訪ね、自然に触れ、友と語らう」、これがウォーキングの魅力です。この魅力を大いに活用したいものです。 (第8回)事故なく歩くために 【会報第18号・2006年12月発行】 ウォーキングはただ歩くだけですから危険の少ないスポーツです。でもスポーツですから危険もあります。一番多いのが熱中症だと思います。暑さに体が慣れていない夏の始めや真夏が特に危険です。例会等で毎年数人見かけます。予防はこまめに水分補給をすることです。そして、失った塩分も補給します。熱中症は気をつければ防げますので、日本ウオーキング協会の障害福祉制度でも熱中症は適用除外になっています。なったときには涼しい場所に移し、体を冷やします。●蜂に刺されることも時折あります。黒いものを好むようですので帽子をかぶる。来ても手で払わないで、静かに避ける。捻挫もあります。起こしてしまったら、患部を20〜30分冷やす。伸縮包帯で圧迫します。足の肉刺(まめ)の予防はできやすいところにテーピングします。休憩時には靴を脱ぎ、靴の熱や汗を取り除くと共に、足を乾かします。●準備運動をしっかりします。伸張や弛緩をゆっくり繰り返すストレッチングをします。例会や大会では必ずします。歩き終わったら、明日に疲れを残さないためにクールダウンストレッチングをします。たかが歩くことと軽くみるのは何より危険です。20km走れる人が20km歩けるかと言えば、必ずしもそうではありません。多くは歩く方が大変と言われます。 (第9回)ウォーク名言集 【会報第19号・2007年2月発行】 日本ウオーキング協会では「あるけあるけ」という月刊の機関紙を出していますが、毎号第1面片隅に「歩歩笑美抄」という欄をもうけ、ウォーキングに関する言葉を掲載しています。●@足元を見つめて歩き強い心を、周囲を見渡して歩きやさしい心、遠くを見通して歩き美しい心を(476号)A歩けの8020運動は80歳になっても20km歩ける運動(475号)B歩く楽しさ元気と出会う、歩く楽しさ自然と出会う、歩く楽しさ仲間と出会う、歩く楽しさ心と出会う(474号)Cバス電車は一駅分は歩く、車に頼らず二キロまでは歩く、階段は常に三階までは歩く(451号)D健康で百年生きて、寝込んだら一週間でサヨナラする。「ウォーキングで一世紀一週間を目指そう」(438号)E楽しみながら歩けば、風の色が見えてくる(419号)F人歩かずんばすなわち病み、歩かばすなわち健やかなるべし(390号)G走る人はつまずきやすく、つま先立つ人は倒れやすい。堅実なる一歩ずつを進めよ。進めたる足は堅く踏みしめよ(387号)●日本ウオーキング協会では「ウオーキングマナー五ヶ条」を定めています。@やぁ!お早う 明るい挨拶さわやかにA信号であわてずあせらず待つ余裕Bひろがるな参加者だけの道ではないC自分のゴミ自分の責任持ち帰ろうD歩かせていただく土地に感謝して。 (第10回)お気に入りのウォーク 【会報第20号・2007年5月発行】 私のお気に入りで、誰でも気楽に参加できるウォーキング大会を3つほど紹介しておきます。●滋賀県の高月町では毎年8月第1日曜日に「高月観音まつり」が開催されます。この日は21寺社の観音様が一斉に公開されます。滋賀県ウオーキング協会ではこの日に、3年で全寺社回るように計画して例会が持たれます。暑い真っ盛りですが、観音様を拝観しながら、また地元の人の厚いもてなしを受けながら歩くのは、本当に清々します。距離も10数キロ、ペースもゆったりでどなたでも参加できます。●これも滋賀県ですが、近江八幡市で3月第2土曜日に左義長まつりが行われます。これに会わせた大会です。コースは3コースくらいありますが、私は毎年25kmコースに参加しています。琵琶湖や西の湖などコースが良いし、もてなしも良いし、特に日牟礼神社に勢揃いした左義長が素晴らしい。●毎年8月16日、京都の「五山送り火」に併せて京都府ウォーキング協会が大会を開催しています。昼間歩いて、夜送り火を見る。名古屋からなら少し強行軍ですが、青春18切符を使用した日帰りもできます。前日の15日に送り火の「火床」を見るウォーキングが開催されるようになってからは、毎年そちらに参加しています。普通では見る機会のない火床を、毎年一つずつ見る楽しみも良いものです。 (第11話)思い出のウォーク 【会報第23号・2007年11月発行】 平成13年9月から14年10月にかけて開催された、京都の宇治・興聖寺から福井県の永平寺まで歩く「道元さん慕古の道 七街道ウォーク」という大会に参加しました。250kmを5ステージ延べ11日をかけて歩きました。当初は無理と思っていた、全コースを歩くという幸運に恵まれました。この大会は、班を構成して歩き、私が属した班は毎回同じ顔ぶれが同じ宿に泊まりました。北は千葉県から南は福岡県までの18人ほどですが、この大会が終わってからも、毎年どなたかの地域に集まりウォーキング会を開いています。こんな例は他に知りません。さらに私にとって記念となったのは、私のホームページに掲載したこの大会の記録が、第3ステージ以降大会誌に掲載されるという栄誉に浴したことです。●10年連続「鎌倉歴史探訪ウォーク」に参加しました。鎌倉の7つの切り通しを毎年一つずつクリアーしていきます。一宮から10人前後を誘って、青春18切符を使い、ということは普通列車に乗って、ほぼ22時間で鎌倉を往復してきます。かなり強行軍の少し狂気じみた行動ですが、10年も行えば一つの誇りでしょう。●その他、初の遠出となった「瀬戸内倉敷ツーデー」、沖縄まで行った「名護やんばるツーデー」、そして「日本スリーデー」なども思い出の大会です。スペースの関係で紹介できないのが残念です。 (第12話)振り返って 【会報第24号・2008年1月発行】 2年半に渡って「ウォークの勧め」を書いてきましたが、少しはウォークの世界を理解し、その気になっていただいたでしょうか。他のスポーツをけなす気は毛頭ありませんが、私にはウォーキングが何よりも素晴らしく思えます。「歴史を訪ね、自然に触れ、友と語らう」、知的欲求や情緒的豊かさを満足させ、その上健康によい。健康はウォーキングの副産物と私はいっています。他人との競争がないところに物足りなさを感じられる方も多かろうと思いますが、それが返って良さです。自分との競争はあります。●平成14年より6年間「愛知県ウォーキング協会」の役員を引き受け、平成18年からは私が会長をしている「一宮友歩会」でウォーク例会を隔月で実施しています。おかげで裏方の苦労や楽しさ、問題点も分かってきました。また、平成15年にウォーキング指導員の資格も取り、普及活動もしています。●「国際ウォーキング宣言」の第5に、ウォーキングとは「自然と調和し、資源は限られたものであり、環境は守られるべきであるという理解を進めるスポーツである」とあります。私はウォーキングとグラウンドワーク活動が、どこかで結びつかないかなと考えています。そんな知恵がありましたらお教えください。 |