ちたの風 第260号
    (平成13年11月号・最終号)


 雑  詠         

戦争の画面に慣れる恐ろしさ       森  風子
譲られて素直に掛けるバスの窓      *

天秤で歳月の重さ測りかね        沢  英人
ちたの風 明日につなぐ風になる     *

右肩を揉めば左肩が凝る         沢田 靖一
すでに日は暮れた 何をすればいい     *

丸顔のあの人何故か憎めない       吉川美保子
九十三歳のやる気の母に負けられない   *

大根が太くなったと兄の声        木村  愛
二つ目のアルバムに貼る孫の顔      *

冷え込みもひときわの朝立冬だ      小島恵美子
蜘蛛の糸切れて蜘蛛君宙に舞う      *

一人だけ覚める夜寒くなってきた     加藤千津子
来年の夢ほど先のことではなく      *


約束をせぬのに電話待ちわびる      米川 昌利
下書きの無い人生で面白い        *

眠い目をこすり日の出を待つ窓辺     丹羽 白紅
月の出も 日の出もほんとに美しい    *
  
                              

        課 題 「 猫 」           *

抱いて寝たはずの白猫がいない      加藤千津子
舌出しているのを猫は知っている            *

屋根の上 猫がひるねをしているよ    かとうまきこ
空き地でね 猫が集会しているよ            *

猫好きな人に犬の話しする        沢  英人
定年が近く猫でも飼おうかな            *

猫の目線に合わせると寄ってくる     森  風子
一円が詰まった猫の貯金箱             *


散歩道 子猫を見かけて歩を止める     丹羽 白紅
来年は可愛い猫のカレンダー             *

てのひらで多彩な夢を招く猫       米川 昌利
ペットには不向きな猫を飼っている        *

ウォーキングよく歩く猫も筋肉痛     小島恵美子
道端に誰にじゃれてる猫じゃらし          *

我が儘な隣の猫が闊歩する        吉川美保子
血統書付きの猫です蹴飛ばせない          *

野良猫になる勇気なく靴を履く      沢田 靖一
細い目が僕を見ているエサとして          *

暗闇で喧嘩している猫の声        木村  愛
晩秋の日向で猫も眠ります             *


 
             休刊のご挨拶

                            沢 英人

    突然なお知らせですが、今月号をもって「ちたの風」は最終号と
  することになりました。併せて川柳東浦の会も一旦解散することに
  なりました。名ばかりの会長でしたが、一言ご挨拶申し上げます。
   このようなことになった直接のきっかけは八重子さんが都合によ
  り、退会を申し出られたことにあります。会報の作成など事務的な
  ことを八重子さん一人に負っていただいていたことにより、八重子
  さんの退会はそのまま会の解散につながることになりました。八
  重子さん、本当にありがとう、ご苦労様でした。あなたの存在の大
  きさをしみじみ思うこのごろです。これからはご自分とご家族を大
  切にされてお過ごしください。
   また、最初に言わねばいけないことですが、この21年9ヶ月の
  間、和尾先生には本当にお世話になりました。一回の指導もおろ
  そかにされることなく、また、思いがけない重い病気にかかられた
  後も変わらぬ指導をしていただきました。先生の川柳に対する熱
  意の大きさをつくづく感じてきました。右も左も分からぬ会員をよく
  これだけの間、継続指導していただきましたことに厚く御礼申し
  上げます。ありがとうございました。
   会員の皆様は今後それぞれ新たな道を見つけて川柳を楽しみ、
  励んで行かれることと思います。ご健闘を祈ります。
   最後にこの「ちたの風」を愛読していただいた皆様に御礼申し上
  げます。読んでいただくことは作ることの大きな励みになります。
  長い間のご愛読、ご声援ありがとうございました。またどこかで
  お目にかかることがありましたらよろしくお願い致します。
   皆様のご多幸を祈念して挨拶とさせていただきます。