ちたの風 第259号
         (平成13年10月号)
                            
                                
                          雑  詠 

絶叫をしたい心を持て余す  美保子
    夜は恐い夜明けはさらに恐い  靖一

          ダイコンとカボスが揃い秋刀魚買う   八重子
真夏の訃 とにかく切符二枚買う  典子
   階段に手摺りを探す現かな  風子  


     お寝坊なわつぃと犬の日曜日   愛    
 ベンチには病葉ひとつ待っていた  和子   
フルコース食べる両手がぎこちない   白紅

     ころんでから口が重くなった老人  英人
    ばあちゃんに仕事を与え買い物に  幸智子

日焼け止め使いきらないうちに秋   千津子
 縦割りの狭い視界で見るドラマ   昌利
 どこまで歩くどこまで月を追っている   和尾


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

雑草に似合う風ってどんな風?
強い風?吹き荒れる風?
それともやさしい風?
どんな風かはその人の
生い立ちに深く係わる。
私にとって雑草とは踏まれても
踏まれても耐えて耐えて
生き延びるもの。
そんな雑草にふさわしい風は
やさしい風である。
さて作者は? 
青空が似合う娘ってどんな娘?
さわやかな娘?冷静な娘?
それとも翔んでる娘?
どんな娘かはその人の
生い立ちに係わる。
ウォーク大好きの私にとって
好ましい青空は
さわやかな空であり、娘である。
さて作者は?  
              



課 題 「似合う」

似合うねと目も上げないで言う夫    千津子
   男にも似合うスカートがあるはずだ   靖一
  
   ふるさとに続く道にも彼岸花   八重子

誰にでもお似合いですねと売り場の娘   美保子
 ドレスよりエプロン似合う母になり   典子

      
萩が咲く帽子の似合う人といる   風子

藪の中でそっと咲く花ありました   恵美子
     お似合いの帽子を被り友が来る   愛     
        
長髪とギターが似合う ああ青春   和子

 盆踊り互いの浴衣誉めあって   白紅

            一陣の涼風似合う髪飾り   英人
               似合うのはわたくしよりも娘のほう   幸智子   

秋天に似合わぬ カーテンを開ける    昌利
秋の服 すべて似合って旅に出る   和尾

 
   (随 想)      引 っ 越 し      

                           森 風子

   
  今年の夏は特別暑かったが、その中で家の中の整理に
 追われていた。いまごろになって、疲れが出たのか体調が
 すぐれない。
  夫のアルバムも、笑っているものと家族で撮った写真だ
 けを残して、あとは全部処分することにした。
  一番困ったのが本の処分だった。煮え切らない私に代
 わり、娘と息子がブックオフに電話して引き取れるだけ引
 き取って貰うことに。530冊もあった。あとの半分は本棚
 と共に粗大ゴミに・・・・。
 夫の写真に一言ゴメン、と謝った。
  今度の家は、私の部屋が狭くなり、かなり処分しないと、
 寝る場所もない状況。
  私の合同句集なども、いずれ捨てられるであろうが、今
 は大切に段ボール箱に詰めた。

      

         

      共 選 「雑 詠      

1席  窓開ける隣の声がよく聞こえ  白紅

1席
 賛成と決まれば橋を渡ろうよ 美保子

3席 ぜい肉がついた腹にも心にも  靖一

3席 この雨も海へ流れてゆくドラマ  昌利

3席  足を伸ばせば小さな森もまだあって   八重子