現代川柳を味わおう
        ちたの風 第254号
         (平成13年5月号)
  
                雑  詠 
わが道は山の麓で行き止まる   英人 
つつがなく生きてすっきり模様替え    幸智子
       サクラ散るころから種を蒔き始め   八重子
            心配の種にお水は遣らないよ  美保子
合歓木は昼も眠ったままですか   順子
 傷口を見せ合ってなごむ同窓会   文子 
八重桜 きょうの私はピンクです   和子
 迷路からやっと抜け出て春になる   風子
          君が去りぼくの力も消え去った   靖一
      ちょっと怪我 自由を奪われた日々   恵美子
        妹と遅い桜を見に行こう   愛
     椿落ち 平均寿命全うし    昌利
地下鉄に着メロ三つ鳴り出した   白紅
それぞれの老い方があって故郷は   典子
    坂道を上れば待っているあした   千津子
    さまよってもと来た道へ出てしまう   和尾
沢 英人が鑑賞する今月の2句
|  大仕事をやり終え、ほっと一息、 力を抜く。そうして、また気分新たに 準備に入っていく。力の入れっぱな しではゴムも伸びきってしまう。 人生とは力を入れる時と抜く時をう まくかみ合わせて渡っていくものだ。 桜には力を蓄え、見事な花を咲か せたそのあとがそんな時間なのであ ろうか、作者はふとそう感じた。  | 
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|  初孫を持った作者があやしていて ふと知った仕草であろう。こうして赤 子も力を付けていく。また、的確な 反応もするようになる。 赤子とは受けた愛情を見事に写す 鏡である。 作者には至福の時間であろう。  | 
    
課 題 「 力 」
肩の力を抜いている花の下   風子    
雑巾をしぼる程度の力持ち   昌利     
 全力で鉄扉押してる夢の中   典子
   力での支配に二歳の子が背く   千津子
 力なく国旗が揺れる倦怠期   英人
      力などないがなんとか続いている   八重子
  土壇場になって芽を吹く花もある   昌利      
道の草摘んで大地も引っこ抜く    順子    
力抜く 緑と風に包囲され   和子   
子どもには勝てず孫と勝負する   民夫
              その中に力を隠す深い山    靖一   
                力まずにできることからやりだそう   恵美子
力もち パパはまりちゃんをもちあげる   万紀子    
力ずくで抜いている春の草   愛
力こぶすらなくなって夏来る    和尾
|   (随想) 娘二人連れての奈良旅行 周 三 4月1日から2泊3日の日程で、5年ぶりに奈良に 出かけた。運良く桜はほぼ満開だった。花見をかね ての家族旅行を妻とも満喫できた。 「幼い子ども二人連れての古寺巡礼なんて」と思わ れる方もあるかとは思うが、どうして、どうして、広い 境内を遊園地がわり?に走り回る2人の姿を見ると、 彼女たちなりに今回の旅行を楽しんでくれているも のと思われた。 3日目は私の趣味で、飛鳥の遺跡を巡った万紀子 はあたかも探検家になったように、酒船石や亀形石 造物などの奇石を楽しんでくれた。最後の檀原考古 学博物館では、ほぼ1人で約1時間飽きもせず館内 を見学していた。 我が家は、亡き義父の蔵書も含めて、約500冊の 古代史の本を抱えている。娘たちが川柳に続いて歴 史の世界にも目を開き、これらの蔵書を読み伝えて いってくれることを、私は期待してやまない。  | 
    
    共 選 「雑 詠」      
1席  ぬくいなあ 肩の力も抜けてるよ  靖一
    2席  菜だ仕事終わらないのに眠くなる  八重子  
   3席  桜散る世代交代 思うとき  風子
     3席  見上げればやさしい顔になる 桜  幸智子