現代川柳を味わおう

        ちたの風 第253号
         (平成13年4月号)


                  雑  詠 

怒ってるよう濁ったままの川の色   昌利 
しんどいと言いつつ友とまた出かけ  美保子
        必要とされてなくても強い雑草  靖一
         君といて楽しいという顔をする  千津子


決断は花の咲くころ散るころに   愛
   エンドウが手を出したよね棚造り  恵美子 
制服を脱ぐと体が軽い帰路   英人
    空のいろ地のいろ風のいろも春   八重子

         
 草を取るいらないものはすべて取る   幸智子
  人間も休んでしまう日曜日   典子
        花の名も知らずにきょうもウォーキング  和子

姉が来て急に明るくなった部屋   白紅
   その先にあるものをすこしずつ剥がす 
 和尾


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

 今まで当たり前に思っていたこと
や重きを置いていなかったものが、
かなわなくなって初めてその重要
性が判ったり、それが欲しくなった
りする。人間の身勝手な性である。
しかし、その時はもう遅い。常日ご
ろから感謝するものには感謝し、
大切にしていかねばいけない。
作者はそれをスープ皿にたくしてい
るが、それが親であったり、配偶者
であったり・・・・川柳はそれとなく
警告を与える。
  先日もウォーキングの最中に、
季節はずれの雪に出会った。寒さ
と風で散々なウォーキングになっ
た。それでも苦労だけで無事に終
われば、忘れられない思い出に
なっている。人生の悩みの大半は
時間が解決する。やれるだけやっ
て良い思い出にしておこう。
              

課 題 「楽しい」

ミスした手品 笑顔で切り抜ける   美保子    
一人でいても楽しかった元気なころ   靖一     

          おしゃべりに疲れて眠るバスの旅   風子
  
   窓の外見ているだけで気が晴れる   白紅

 
楽しみの旅の終わりも独りで   恵美子
      子や孫と並んで見てた梅の花   愛

  ご機嫌な日に口ずさむ四季の歌   八重子      
ポケットから楽しいことはすぐ零れ    英人    


楽しくね 話題の中に僕もいる   昌利

楽しいね楽しいねと咲くサクラ   幸智子

              楽しさを小さく長く続けている    民夫
                子らが来て食後も続く笑い声   典子

このまんま楽しい振りで逝きますか    和子
楽しいぞ空は晴れたぞ心晴れたぞ    和尾


 
   (随想)    ハイ 肩を揉みましょう 
                             典 子

  毎朝、仏様にお参りしたあと夫は丁寧な言葉で
    「ハイ、肩を揉みましょう」
  と。私もついつい丁寧に
    「ハイ、お願いします」
  と言いながら二、三分肩を預けます。
  疲れが残っている朝は思わず
    「天国、天国」
  と、口からこぼれます。それを言うなら
    「極楽、極楽ではないのか?」
  と、夫。
  しかし、ときどき
    「ハイ、肩を揉みましょう」
  が聞こえてこない日があります。それはどうしてなのか、
  どんな日なのか、今の私には判らないのです。
  ご機嫌な日も、そうでない日も、言ってくださいナ!
    「ハイ、肩を揉みましょう」
  と。
 
 
      

         

    共 選 「雑 詠      

1席  前列に出ると防寒着のない不安  昌利

    1席
  菜の花を抜けてくる風 膝あたり  典子  

   3席  
春一番気持ち揺さぶるほどの風  幸智子

     3席
  どちらでも良いのに挙手を求められ  昌利

      5席
  友達と覗く四月のカレンダー   昌利