ちたの風 第252号
         (平成13年3月号)

                          雑  詠 

存在の飾りボタンが付いている   和子
   手の平を広げても小さな自分  靖一

   生き甲斐は見つけるものよ寒椿   恵美子
      寂しさも春の陽射しに溶けてゆく   八重子

大粒のアサリあなたのお椀へと  典子
   この音符 飛んでいるから好きなんだ  風子  


アイロンをかけつつ思う過去未来    千津子
ベランダで百八十度の景色見る   白紅

     太っても食べたいものがあり過ぎる   美保子    
目に入る冬の寒さをポケットに   愛
 

     春近し 春を捜して散歩する  英人
    汚れもの多い日に出る雨予報  幸智子

薬局のバーゲンで買う紙オムツ   昌利
 竹の林で未来のことを語り合う   和尾


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

 細部に気を取られて全体が見えなく
なる、細かな欠点を取り上げて全体の
良さを台無しにしてしまう、日々の生
活の中で往々に陥ることである。
 個々の問題に行き詰まったとき、
常に全体を見渡したり、原点に戻って
解決を図りたいものだ。
 大いなる人生訓の句。 
 野次馬根性も節度を守っていれば
必要なことである。何事もあたって
みなければ始まらない。
 何事にも興味や関心を示す作者、
そんな性格がいつまでも若さを保つ。
 それがいい川柳を作る原動力にも
なっている。  
              



課 題 「そっと」

夢で見たことは誰にも言いません    千津子        
      風船を手放し空を眺めている   八重子            
 今の自分はそっとしておこう   靖一
  
   そっと笑った人がそっと逝ってしまった    和子

 さりげない友の気遣い電話から   風子

      
おねだりは耳元にそっと手を添えて   恵美子
           そっと聞くあなたの悩み雨の日に   美保子       
          窓越しに啄む鳥を見ていたり   典子      

茶柱の立ったお茶です そっと飲む   白紅
垣根越し春に一輪いただいて    昌利
 思い出の小さなウラヤブ 秘密基地 
  愛

            そっと吹く風にわが町の匂いする   英人
               春が来る 足音立てぬように来る   幸智子   
膨らんだ梅が教える春のこと   民夫
春の海囁くように呟くように   和尾

 
   (随 想)    雛 祭 り      
                             愛

   2月20日 お雛様をことしも一人で出している。
 娘たちが喜んで飾っていたのは、ずいぶん前のこと。
 口のある人形は必ず出してやらないとね。亡母に注
 意されて面倒だなって思っていたのに。この頃は自
 分がそんな言葉を口にするようになってきた。やがて
 は娘がこのようにするのだろうか。時代は変わっても
 続けて欲しい行事である。

      

         

      共 選 「雑 詠      

1席  守れない約束多し 鬼は外  風子

2席
 橋渡る向こうの春を見てみよう  英人

3席 しっかりとがっちりと蕾膨らんで  和尾

4席  キーを打つ指先 春はまだ遠い   八重子