現代川柳を味わおう

        ちたの風 第251号
         (平成13年2月号)

                  雑  詠 

まず一歩前に歩こう新世紀   ほしみ          
  凄いこと世紀を跨ぐなんて   美保子       

        客布団まだ積んだまま十日過ぎ   八重子
           きのうとは変わらぬはずの初日の出   靖一


人並みに雑煮を食って新世紀   愛
体温の同じ家族で撮る写真  昌利   


みぞれ降る お汁粉の餅焼いている   恭子    
目をこらし見えたつもりの新世紀   千津子
冬を越す餅菜の太い太い軸   三千子   

     割り算の余った部分食べている   裕子
     働いても遊んでいても腱鞘炎   幸智子

子が寄れば母らしくなる手も口も   典子
入念にハンドクリーム塗る新年   順子

そしてまたミカン一つ食べている   民夫
足元が冷えて話が続かない 
  英人


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

考えるより先に指が動いてしまう、
それもよく動くのである。慣れた作業
だからであろうか?それとも、何事に
おいてでもあろうか?
いずれにしろ作者はこの指を愛おしく
思っている。そんな指をいつまでも
大切にしてください。
「川柳東浦の会」はその指を必要と
しているのです。
新しい年には、今年こそはと決意も
新たにする。しかも今年は新世紀の
始まりの年でもある。大いなる決意
をしたいものである。
作者は「笑顔」を決意とした。
そしてすぐに実行した。これに勝る
ものはない、素晴らしい決意である。
笑顔の決意の先には素晴らしい
人生が待っている。
              



課 題 「先 生」

暖かい場所を陣取る先生と猫    ほしみ        
先生の苦しみ生徒感知せず   美保子            

          哀しいときに思い出す先生の顔   風子
  
   先生の後ろの風はやわらかい   八重子

 この空を先生として仰ぎ見る   靖一

九十の先生 八十五に生徒    順子
      
先生も家に戻れば家庭の人    恵美子

  先生が来る 回り道して帰る    英人                
先生も私も眼鏡かけている    和子               

ばあちゃんの味で作ってみるおせち   愛
 先生の悪口言って帰ろうよ    裕子
 ゴミ出しの先生と会う朝の公園   幸智子

            不覚にも我が先生を見失う    昌利
            健康相談をラジオで聞く午後三時    白紅
                数学の先生 短歌をやっている    恭子

先生に二十年目の賀状出す    千津子
先生の肩書きは捨て鬼ごっこ   典子
夢を語れば先生の背広かな   三千子

                

         

      共 選 「雑 詠      

1席  不確かな舌で味見を繰り返す  八重子和子

    2席
  遮断機が静かに降りてはなればなれ   靖一

3席   
きょうもあすも歩いて少しだけ進む    和尾

3席  
思い切り叫びたいから穴を掘る  裕子

 

        (お知らせ)
           朝日新聞社・川柳みどり会主催の
           『第10回朝日中部川柳大会』平成13年3月31日
           朝日新聞名古屋本社15階朝日ホールで開かれます     

                                   (平成13年2月3日作成)