現代川柳を味わおう

        ちたの風 第245号
         (平成12年8月号)

                  雑  詠 

乱雲にいまの心を引きずられ   ちづ          
  早起きをして朝刊を待っている  八重子       

        蟻がたかっていたので埋めた暑い日   靖一           消息を聞くのが恐い友である   美保子

誠実でありたい 口が重くなる  千津子
ゆっくり歩いていたら君に出会った  和子   


梅雨空にためらう足をじっと見る   英人    
七月は草にも負けているわたし   幸智子
竹笹にことしも付けた願いごと   愛   

      一笑に付された夢を温める   昌利
     三匹のメダカとあそぼ 夫は留守   典子

新しい時代に入りバスに乗る   あきこ
改札口挟んで話まだ尽きず   まい

謎々のように歩いているのです   和尾
髭を剃る時間も短くなってきた 
  民夫


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

 雲の流れるのを見ていて、人もまた
流れていることに気づく。一所不住なる
のもまた人間。
 今日は良いこと無かったなあ、しか
し、作者は「またあすに」と続ける。この
言葉には明日に期待するものが感じら
れる。明るい気持ちでもって明日を見
続けよう。あきらめないのもまた人間で
ある。
 夜店の金魚すくい、すぐにすくい上げ
られるような金魚では生き残れないだ
ろう。生き残れるような勢いの良い金
魚はなかなかすくえない。無理をすれ
ばすぐたもが破れる。
 これだけ沢山の金魚の中で生き残れ
るのはわずか、この宵祭りの中を歩い
ている沢山の人の中で生き残れるの
はどれだけであろうか?納得しながら
生きていきたいものだ。
              



課 題 「雲」

入道雲のように私も奮い立つ    八重子        
ちぎれ雲 なにを急いで飛んでいく   美保子            

          雲行きが怪しくなってお茶にする   風子
  
   センベイの音も鈍って重い空   白紅

 あすは虹を渡って雲を掴むんだ   靖一

      
子が二人いるのに空を見ず歩く    千津子

  ひと休み雲の行方を見届ける    恵美子                
入道雲が近くにいたころの 夏    和子               

願望を打ち明けている入道雲    英人

 飛行機雲わたしも旅に連れてって   幸智子

            ちちははを懐かしむ日の千切れ雲    典子
                雷雲が嫌い 犬も猫もあなたも    愛

煙突のその上にある夏の雲    昌利
青空に定規で引いたような雲   まい

 
   (随 想)          い い 旅
                               幸智子   

 御講組の仲間で、一泊旅行を始めて15,6年になる。当初は30代だった私は、つき合いとはいえ、この旅行がいやでいやで仕方がなかった。何しろわたしが14人中で離れて1番若かったからだ。しかし、回を重ねるうちに気心も知れ、毎年楽しみなってきた。この旅行だけは、姑に対しても「村のつき合いだから」と、大きい顔で参加できる。嫁同士、ほくそ笑んでいられるのである。
 今年も、6月末に箱根・湯本温泉へ出かけた。姑をショートスティさせ、頭の中を空っぽにして、旅だけを楽しめた。
      

         

      共 選 「雑 詠      

1席  焼き増しの集合写真でまた笑う  和子

    2席
  ひとつまみ加えて変わる豆の味   典子

3席  
あしたには赤く色づくミニトマト  幸智子

 

        (お知らせ)
        川柳みどり会主催の 『第9回センリュウトーク』
           平成12年10月28日
           朝日新聞名古屋本社15階朝日ホールで開かれます