川柳を味わおう

        ちたの風 第243号
         (平成12年6月号)

                  雑  詠 

同い年の笑い皺だよ肩組んで   和子

春霞はるかに都庁見える場所   ちづ

気ままさが自堕落になる一人暮らし   靖一

三百円で傘の修理が無事終わる   白紅

衣替え慌てて始めるダイエット   千津子

朝見れば昼間の牡丹より清楚   典子

植物園で案内人に間違われ   風子

これも縁 横断歩道で擦れ違う   英人

ポロポロとこぼれた種も芽を出して   愛

雑草の努力を指でつまみとる   昌利

約束の時間に灯りが点き始め   和尾

熱が出る あしたはゴミの収集日   幸智子

五月晴れに電車が走るワンシーン   あきこ


              沢 英人が鑑賞する今月の2句  

 青葉若葉を目にすると、若やいで
すがすがしい気分になる。
 そんな時期になって、60歳を過ぎて
大病を患った作者も少しやる気が出て
きたようだ。良い時期である。
 この青葉は初々しいものの代名詞。
初々しいものに多くお目にかかる生活と、
そんなとき感動する気持ちをいつまでも
持ち続けたいものだ。
 
    銀行の

   ビデオカメラに

    ピースしてあげる   


             和 子
 いつ役立つときがあるか分からぬの
に回り続けるビデオカメラである。徒労
の毎日である。もちろん役立つときが
あっては困るが・・・。
 そんなカメラに向かって「ピースしてあ
げる」というのは作者のサービス精神で
ある。またこんなことをするのは、作者
がまだ十分に若い証拠であり、誇らし
げな気持ちもみえる。その旺盛さが人
生を前向きにさせるのである。
              


課 題 「カメラ」

新生児にカメラ翻弄されている   ちづ

春の山の嬉しい景色にカメラを向け   恵美子

脇役の汗も写したカメラアイ   昌利

  
思い出の写真はみんなピンぼけで  幸智子 

 このカメラ 心の襞も写し出す  八重子

   カメラからのぞくと妻が美しい   英人

  つくり笑いレンズを通せば見抜かれる  千津子

写したり写されたりして花の下   愛

折角のポーズの足はカットされ  典子

 赤い花見るとカメラは歌うよう   美保子

 
   (随想)     拝啓 新緑の候
                               沢 英人

 
 東浦の会の20周年と合同句集発刊の集いも盛大に終わり、皆
 さんそれぞれ新たな出発をされたことでしょう。
  私は、川柳がホームページのネタにできたこと、また、ホームペ
 ージを作るために「ちたの風」を熟読しなければならなくなったこと、
 この二つの効果が私の中でこれからどう発展していくのか楽しみ
 になっています。
  これでまた、川柳と切れられない縁を作ってしまいました。皆さん
 方には「ちたの風」がどのように載せられているか機会をみて見て
 やってください。
  これから暑くなります。十分ご自愛ください。      敬具


              

         

      共 選 「雑 詠」      

1席  やわらかい土には夢も蒔いておく  昌利

    2席
  トラの目も緑に染まる 動物園   風子

3席  
鮮やかな緑にカメラ負けている  幸智子

4席
  ちょいちょいと洗濯バサミで春を留め   和子

4席
  手から離れた毬は帰ることもなく   八重子