sotoku1
川柳連れ連れ草 5周年60号達成
 記 念 特 別 号



平成14年1月からこのホームページ上で始めた川柳作品の掲載が、
おかげさまで平成18年12月で満5年60号を達成できました。
この期間をふり返ってみますと、一度でも参加された方は31名に昇ります。
その内訳は、1年以上投稿し現在も継続されている方14名、
1年未満の現在投稿者1名、1年以上継続しながら中断された方6名、
1年未満で中断された方10名となっています。この達成記念に
1年未満中断の方を除き、この間の秀句を選び、特別号として掲載します。




***  ヒロ・アキニレ  ***

いさぎ良さ散り行く花に学ぶこと
凛と咲く赤き椿が我を見る
紫陽花にひととき心預けてる
人も木もみんな色づきたそがれて
別れても赤いルージュが目に残り
一日の苦労を夜が包み込み
生きている赤い想いをホウズキに
風の色心の色が見えてくる
くれないの生き方さぐる友ありて
悩み捨て野に出て春の音拾う
緑葉に心整え生き直す
解ってよ五月の空のやさしさを
絵手紙に赤い実描いて友訪ね

どの絵にも強き心があふれ出る
若者の踊る手先に色香ある
和紙便り送ってみたい思い添え
老いてゆく姉の姿に先を見る
神様がボケぬ様にと仕組まれる



****   靖   坊  ****

外套を脱いでわたしの春を待つ
泥水に映る青空澄んでいる
恋心奪い尽くして散る桜
風の中自分の風を待つばかり
刈り取れぬ草が一本胸の中
電車から遠ざかるのは僕の方
デジカメで切り取りこれは僕の空
さあ笑おう明日はきっと良い天気
この気持ち空の高みへ伸びていけ
夢消えて弛んだ右手持て余す
冬の日と同じ青さの夏の空
思い出によく似た苦さ海の水
飛ぶ鳥はわたしなんぞは見ていない
思い出に閉じ込められている私
咲けば散るそれでも咲こうとするつぼみ
足跡を残さず歩く影ぼうし

伝えたい言葉 マスクで遮られ
風からは爽やかな息お年玉



**  みいちゃん  **

薔薇色の好きな女の好奇心
揺さぶるものあって私忙しい
出来ぬ事出来ぬと言えた気持ちよさ
青空に感謝し植える花の苗
夜更けて瞬く星はあなたです
カスミソウあなたも夢を見てるのね
ラッピングしたいあなたの笑い声
言い切った分だけ火の粉浴びてます
雑草に弱気の心見抜かれる
しなやかな昔の心取り戻す
雑草が心の中に生い茂る
まだ少し夢があるから生きてます
雑巾を時々洗う丁寧に
わたくしの半分とても怠け者
ある時の自分が嫌いそして好き
私はわたし誰とも競わない
人間の心底にある幸・不幸
善人の基準なんてあるかしら



***  ぺ 天 使  ***

お歳暮のりんごに秘密入ってた
小康を幸せとして今朝の汁
知りたいのは夕べの夢の笑い声
晴のち晴 分かって傘を持って出る
うたた寝の夫の呼吸は単調で
観る桜聴くさくらあり花のとき
忍ぶとき決まって雑草抜いている
留守番の夫を時には誘ってあげ
キリストの話を聞いた玄関で
これ以上吹けば私の花が散る
染められて鏡に映るあなた色
お互いに孫を語れる日向ぼこ
一日のリズムに狂った長電話
年明けて忘れずに来る誕生日
手を胸に私の心このあたり    
シーソーで軽い貴女が跳ね上がる
雨の日は花占いをして過ごす
張り替えた網戸世間がよく見える

    


**  ぺ天使兄  **

乱れる世に花は黙って咲いている
明日来れば明日のことをするゆとり
野の花を花見の客が踏んで行く
秘めしことおしゃべりしたくてお茶を出す
姿見の姿を見れば歳相応


**  ぺ天使妹  **

明日には笑顔の君になっている 
水打って父の靴音待った日よ
結論は空回りして夜が明ける
哀しみに果てはあるのか今日命日
懐かしき声をまどろみの中に聞く


   
  

***  酒   仙  ***

呼ぶ声でたそがれを知る 妻が待つ
雨足が遠のくように友が逝き
雨雲は近くで見ると古い綿
いい人を 見つけたときに風が吹く
旅にでて自分自身がわかるもの
一年がすぎまた街で逢う安堵
時間帯違う列車で出会いある
なんとなく声をかけ本音見透かされ
先行きが不透明でもまだ生きる
男とは好きなことして汗をかく
梅雨だから無理して渡る交差点
行く人で想いが違う旅の中
うなぎ屋はうちわでおいしさ作り出す
人ごとと言ってしまうのはただの人
触れ合って仲間が増えてぬくもりに



***  柳   立  ***

おぉ友よ やや白めの月に会う
大空に 朝日に向かう翼あり
不来方の夢の彼方に雲迷う
三日月の厳しく小さく独人住む
むね深く乳飲み子眠る母よ海よ
紅梅の萌える血潮を我も受け
独り居て若葉のささやきなお静か
花一輪見初めし頃も雨のなか    
蝉しぐれ 聞いちゃいけない矢も外れ
この手にもひとすじ降ろせ蜘蛛の糸
サンマ焼く 丁度六時に暗くなり
雨音が静かに消える雪の上
椿咲く静かな雨にただ一人
入学の声も新らし花も舞い

雨ごとに笑うがごとし山若葉


***  悠   澪  ***

粉雪からぼたん雪へ私は私
希望持ち踏ん張ろうにも地が揺れる
ふじつつじ出ておいでよと誘ってる
新しい浴衣で彼を誘うかな
かくしごと? 彼の視線が定まらぬ
日が昇るまでが勝負と草を刈る   
宛名のない手紙書いてる長い夜
やり残しないですかと除夜の鐘
雨に思う青でよかった空の色
夢ひとつ二人で追ってきたけれど
 

***  美 智 優  ***

それぞれの部屋にこもって一家です
「嫌いだ」と言ってくれなきゃ忘られぬ
誰かいる君の心の片隅に
誕生日私のためにワイン抜く
夢ひとつ明日につないできたけれど
指先から鶴が飛び立つ昼下がり  
都合などおかまいなしに冬が来る
新年の抱負を語りぞう煮食う
雪の上光は春へ向かってる
懐メロが忘れてた過去呼び起こす


**  ぺ天使叔母・華芳  **

君逝きて語る術なししのぶ草
親王雛老いしふたりに笑み給う
沈丁花我がもの顔に咲き匂う
五月晴れ五月の風に追いつかれ
眠れぬ夜届きし新茶その色香
二人いて無言劇を続けます
影踏んで遊んだ秋の日差しです
初夢やほのかに匂う若竹が
夜更けて未来に向けて朝が来る
春立てば希望の明日が輝いて
風花と遊んで老いを自覚する

目覚めれば庭の千草を友にして


***  さ く ら  ***

子供よりあなたを見たい年賀状
恋心ラッピングして届けたい
旅立ちに待ったをかけるなごり雪
幸せのそのまた先を探す春
つくしんぼ知らぬ顔してすくすくと



**  まつぼっくり  ***

逆らえどいつしかもどる母の手に
窓磨く空がどんどん近くなる
夕焼けに指きりげんまんして帰る



***  摩夢多絽  ***

蓮台に乗っても悟れぬ我があり
明日よりは晴耕雨読 幸不幸
苦も楽も絵空事なる今日の絵
爪を切る じっと考える明日の事
亡き母が今も宿るこの耳に
さりげなくテーブルの上に予約表
それぞれに過ごした月日手に残る
見送りの妻に感謝 地平の月
幸せを いつも心に会話する
もう少しもう少し 夜が明けて雨
気だるさを春の日差しが突き通す
あ〜今日も零時の音で疲れ知る



***  楽   子  ***

春の夜等身大の影笑う
欲しかった自由 無責任な自由
ことさらに無表情なる検査技師
口紅を塗って元気な顔にする
歩こうと車に乗ってやってきた
旅に出ることを黙っていられない
遠ざかる船は明日しか見ていない
ストレスが解消した頃帰宅する
五往復するころ人魚になっている
親であり子でもあるこの不確かさ
傲慢なわたしに天地揺れている
うまいもの食べて被災のニュース見る



***  瑞   希  ***

つくしの子伸びた先にある油断
人生はこんなものだと桜舞い
よどんでる川は我が身と思う秋
蝉の声今ひとたびの命燃え
五十代黙って通れぬ道もある
模様替えしてみたくなる胸の中
この道は母を忍んで通る道
雨上がり名残の涙落とす花


***  こ ゆ る  ***

菜の花が私の色に染まってる
開きたくない引き出しが2つ3つ
風向きを道しるべにしひとり旅
今日の日が伏線となる未来有り
花が散る裏も表も見せながら
パスワード入力しても梅雨明けず
うろこ雲一枚剥がせば血がにじみ
涼風が流してくれる今日の悔い



***  綾 太 郎  ***

年毎に鬼を追い出し生きていく
探し物鏡の中で見つけたよ
夢うつつ書いた句にある本音です
主人公になりきったまま街歩く
ゆらゆらとあなたと一緒青い時
約束を破ると慣れになる私
気晴らしの話しの先はいつも雨
青い実を日に向け熟す時を待つ



***  も り ぞ う  ***

赤い糸たどっていくと君がいた
笛吹けば遠方からも友がくる
のんびりと年を重ねて眠くなる
たまに聴くメロディー 朝は新鮮に
虫の声鳴り止んだのを見定める
文づくり想いが先で誤字があり
雨風が打ちつける音幾度なく
昨日より今日が幸せ思う日々



***  桃   華  ***

良いことをいっぱい連れて春が来る
よその子がママの膝に座っている
泣きそうになったら空を見るんだよ
鏡見る僕とは違う人がいる
なにごとも反対言葉で抵抗し
パパママに反論できるようになり
おだやかにああおだやかに日は暮れる
ボクの方見てよボクもいい子だよ
風がくるボクに走れというように
ひらがなが読めて世の中おもしろい
身内にはガキ大将になれるけど
温かいものが詰まった箱もらう
園のこと聞いてくれるな話すまで
気に入った友ができたよ手をつなぐ
髪切った指切った梅雨の始まり
兄貴だといえる男になってやる
弟に見つめられると兄になり
痛いとこないかと問われ泣けてくる



***  英   人  ***

昨日ときっぱり別れ初日の出
花嫁の父という演技苦手です
遺恨かな古い手紙が燃え残る
トンボ舞うススキが揺れる詩ができる
欠けた月何か不服があったのだ
窓際で可もなく不可もなく生きる
流れ星流れ気がかりひとつ増え
新しい風が吹き靴買いかえる
背を伸ばし歩くと春が近くなる
一面のタンポポ 確かな友情
捨てるもの捨てきれず君見失う
口笛を吹いて気楽になりますか
列車不通 生かされていることを知る
カギ括弧自己主張がある手紙
目があって縁があると思ってしまう
紙一枚ちっぽけな心もてあそぶ
拝啓の次の言葉が見つからぬ
早足の秋に歩幅はやや広め



ほぼ投稿数に応じた句数で選んでみましたが、いかがでしょうか。
特に意図して選んでいませんが、それぞれの個性を感じませんか。
それでこそ川柳ですし、それでこそ書く意味があります。
そして、結構良い句ばかりと思われませんか。
数作れば、当然きらりと光るものが生まれています。
目指すはただ継続です。気楽に臨んで続けてください。

正月の1日をかけてまとめました。疲れましたが、楽しい時間でした。
投稿者の皆さん、また5年後目指して頑張りましょう。
読者の皆さん、参加しませんか?   (平成19年1月2日)


川柳&ウォーク