so103
     (せんりゅうつれづれそう)


              
 第103号(22年7月)

紫 露 草 の 

(科 目)ツユクサ科    (花言葉) 快活、尊厳、尊ぶ、
高さ約50cm、葉は広線形の多年草。春から夏にかけ、紫色の3弁花が朝に開き午後にはしぼむ。
雄しべの花糸(かし)は細胞が1列に並んで観察しやすいので、細胞学の実験に用いられる。


6月末、満95歳の母が老衰で亡くなった。老衰とは与えられた命を全うした人間に
与えられる勲章と思う。しかし十数年に渡る介護であった。先を憂えても仕方がない、
できることは今を悔いなく生きることである。今月も川柳連れ連れ草を掲載できた。
                       (★印は英人の推奨句)


  課 題   「 痛 い 」

痛みさえ想い出になる夏の恋     ★さくら
君見れば忘れた傷が痛み出す     靖坊
階段を前に躊躇の膝がある     悠澪
友人の意外な言葉胸を刺す     まつぼっくり
ことわけを忘れて起こし痛み知る     酒仙
薔薇の棘痛いと知っていて触る     野のはな
産声に瞬時に消えたあの痛み    美智優
妹に話せば痛み和らいで     ぺ天使
この痛み石の地蔵さんに分かるかな    ぺ天使兄
それぞれの痛みは知れず朝の駅     ★ぺ天使妹
芸術に痛い一言「それ普通」     柳立
まちがって深爪にした握手の手    桃華
知力体力年相応に痛んでる     英人



 「 水 」   ぺ天使

★水鏡 写れば決まって笑顔する
餌をやれば水面に寄るメダカ達
スーパーで並んだ水が主張する
シャワーから水が吹き出て悲鳴あげ
この水が氷に変わる七不思議




「 ねじれ 」     野のはな

青空が恋しい雨読してばかり
★幸せと言うが何かが足りてない
炭酸の泡が溶かしてくれる欝
人生を損するもっと笑わねば
うちなんかかなり前からねじれてる




「  雨  」     美智優

楽しみにしてた日曜土砂降りに
見上げては空の青さを懐かしむ
水不足思えば雨も良しとする
★にわか雨走り出したら足がつり
喧嘩して飛び出したけど外は雨




 (随想)   「 我 が 庭 」  ぺ天使兄

この土地に引っ越してきた10年前の我が庭は、前の家から移植した数本の
木と転居後に買った松、拓植、紅まんさく、伽羅くらいの寂しい庭であった。
 ところが、今、実生の欅2本、柿5本、紅葉4本ヽ枇杷のほか、
名も知らぬ2、3本の木が次々に大きくなった。
いずれも、生えてきたまま、移植をしていない。

手抜きをすると、ごく狭い庭なのでたちまちあぱら家仕立ての荒れ庭となる。
風や鳥が運んできた種、食べた後の種から育ったものである。
そこで、この時期には思い切って切り詰める。
 知識もなく、盲めっぽう乱暴な扱いなのに、年々力強く大きくなる。
その生命力には圧倒される。

 今年初めて、枇杷が熟れ、柿が実をつけている。




「何を忘れた?」  靖坊

出た途端何か忘れた心持ち
立ち止まり忘れた何か考える
忘れてる自分が何者なのかさえ
何もかも知っていそうな猫の顔
★忘れた事忘れてしまえ青い空


   「梅雨の終わり」    柳立

  報道のゲリラ豪雨にただ畏れ
 雨宿り外に出ちゃだめピカにゴロ
★雲低く吹き出る汗に蚊取り焚く
  葉の裏に大きな毛虫雨を避け
    びしょ濡れの犬の一振り撒き散らす



「それぞれのご機嫌」............
 まつぼっくり


たまげたね息子口笛吹いている
気のせいか夫鼻歌うたってる
★ご近所に義母が私を誉めている
痛いとこなくて嬉しい朝目覚め
幸せを感じるゆとり今はあり



「ナツ☆ソラ」      さくら

窓越しの花火に乾杯夏の夜
虫も蚊も若者だけにしのびよる
気分屋の空の顔見て布団干し
サムライが日本を青く染めた夜
★友のため流したナミダ星になる




・・英人の20句抄・・ 「老母死す」
      
          父死すまで働き者であった母
          働いて働いて腰の角度など
 一筋に念仏世事は人任せ
  念仏の背に痴呆症見えてくる
    痴呆症進んで僕が分からない
                   今夜にも命つきると軽く言う
                  人の死を無造作に告げる聴診器
                 母逝きて命について考える
     父母送り子の責任を終えた夏
     人の死を追いかけている葬儀屋さん
     九十五歳の顔を粧う納棺師
            老衰という死を讃え瞑想し
            合掌して浄土の道へ送り出す
  葬儀終えゆっくり饅頭食べてみる
    張りつめた気力が失せる葬儀後
      長年の介護に疲れた妻の肩
        介護から解放されて猛暑来る
                  梅雨明ける忌明けも近い蝉の声
                 束縛を解かれ新たな出発点
                蓄積した疲労を癒す旅に行こう



「 何 故 」     酒仙.................

やることが手ずかりになる事起こす
★人に言い自分が間違い犯してる
あれやこれ起こしてしまい手がつかず
あれやこれながめて気がつき手がつかず
歳を取るあちらこちらに狂いくる



    「 七 夕 」    悠澪

 孫たちは見たことのない天の川
笹の中長生きしてねと孫の文字
  孫たちと鼻歌まじりで折り紙を
     曇り空空のふたりは逢えぬのか
  ★七夕に夫とデートうふふふふ




「 別 れ 」    桃華

さわやかに風吹き永遠の別れかな
★この空のどこにいるのか母二人
母が逝き義母が逝き介護解放
青空を探しに行って梅雨明ける
忘れる前に現れる母の顔



    (鑑賞文・感想文) 気ままに一言・・・ 

 ・出た途端何か忘れた心持ち(靖坊)     美智優
     ほんとにそうですね。私も毎度々々玄関を出たとたんに、忘れ物はないかしらと
    バッグの中を点検したり、火の始末や戸締りはちゃんとしたかしらと気になってきます。

 ・歳を取るあちらこちらに狂いくる(酒仙)     美智優
     最近とても歳を感じます。暑さに弱くなり、疲れやすくなり、目が悪くなり、医者知らず
    だったのに医者通いをしたり、あ〜ぁっ! 若い時はこんなことなかったのに・・・。

 ・それぞれの痛みは知れず朝の駅(ぺ天使妹)      まつぼっくり
      
朝のプラットホームの光景が浮かびます。あまり楽しそうな顔をした人はいませんよね。
    どこか疲れた兵士のような姿をしています。それはポーズかもしれませんが、皆ポーカー
    フェイスの下ではそれぞれの様々な葛藤を抱いているのでしょうね。

 にわか雨走り出したら足がつり(美智優)     まつぼっくり
     
可笑しいですね。私もそのものです。自分では若いつもりなのにいざ走ろうとすると
    足も体も気持ちについてきてくれません。日頃フットワークを鍛えずだらしなく過ごして
    いるせいなのですが(もちろん私の場合)、こういうとき己を省みてもう少し自分に厳しく
    しなくっちゃあとその時だけは思います。

 ・(随想)「 我 が 庭 」(ぺ天使兄)     まつぼっくり
 
     これだけの樹木が植わっているのですから、狭いと言われるがかなり広い庭だと
     思います。
       実家は新築したときに庭が半分くらいになりましたが、まだ棕櫚の木やその他たく
     さんの樹木が所狭しと植わっています。残念なのは庭が狭くなったとき、さくらんぼの
     なる桜の木を誰かが持っていってしまったこと。手入れをしないので先日行ったら
     ドクダミ草でジャングルになっていました。枇杷の実がなっているのを発見してもいで
     食べましたがちっとも美味しくありませんでした。

  幸せを感じるゆとり今はあり(まつぼっくり)      酒仙
      退職して10年が過ぎました。まだまだやらなければいけないとパソコン講座を習得
     したり、神主になるため勉強したりと、つっぱしっていましたが、今は自由の身になり
     ました。時間を気にせずゆとりがある一日を過ごしています。今までは1分2分と待ち
     時間があるといらいらしていましたが、待つことも一日を過ごす仕事と思うといらいらが
     なくなりました。20分30分の待ち時間も苦にならなくなりました。

 楽しみにしてた日曜土砂降りに(美智優)     靖坊
      これは本当にがっかりしますよね。特に前日までの天気予報で当日の降水確率が
     低かった時なんかは、怒りすらこみあげてきます。まあ、誰が悪い訳でもないので
     諦めるしかありませんが、簡単には諦められない!・・・そんな時は部屋の中で
     スクワット100回です。汗をかくともうどうでもいいやって気分になるから不思議です。

 ・母が逝き義母が逝き介護解放(桃華)     悠澪
      長い間お二人の介護、お疲れ様でした。親とは言えいろいろと大変だったでしょうね。
     私はこの歳で、全くといっていいほど介護の経験がありません。そのせいか、苦労知ら
     ずで、幾つになっても大人になりきれないような気がしています。

 それぞれの痛みは知れず朝の駅(ぺ天使妹)    悠澪
      朝夕の駅は人でごった返していますが、その一人一人に人知れず、何かしらの痛みや
     悩みがあるものですね。なんにもない人なんて、きっと世界中を探してもいないのでは
     ないでしょうか?

 ご近所に義母が私を誉めている(まつぼっくり)     桃華
      嬉しいですね!お互いに気を遣う嫁と姑、近所では特に話題になり注意が必要です。
     ちょっとしたことが面白おかしく語られてしまい、お互い気まずい思いをしてしまうことも
     何度か・・・。
      褒めてもらえるなんて最高ですね。あなたもお義母さんを褒めて話してみたら・・・・。

 虫も蚊も若者だけにしのびよる(さくら)     英人
       若者だけに忍び寄るのは、それだけ魅力があり美味しいからでしょう。浮かれて
     いないでここは十分に気をつけねばなりません。悪い虫も蚊も入り込むのは上手なの
     ですから。年寄りには俺俺サギか・・・これも全く上手に忍び寄るそうだ。

 この空のどこにいるのか母二人(桃華)     英人
       昨年8月妻の母が、約1年後私の母が亡くなった。一時、二人が同じ施設にいた時が
     ある。今頃はまたこの空のどこかで一緒にいるだろうか。そうであったらいいのに、妻は
     そんな思いでいるのだろうか。


     投稿をお待ちしています




       「川柳連れ連れ草」への投稿案内
             次の要領で川柳及び感想文を募集します。
             投稿をお待ちしています。


  1)毎月15日までに自由句を7句程度、課題句を2句程度
    メール(下記)で送付してください。自由句には題をつけて
    ください。課題の題は2)の通りです。
 
 2)2010年「課題」
      (1月)山  (2月)淋しい  (3月)一人  (4月)来る
      (5月)悲しい  (6月)胸  (7月)痛い  (8月)耐える
      (9月)昨日 (10月)捨てる (11月)古い (12月)手紙

  3)「川柳連れ連れ草」を読んでいただいた人から感想文
    (150字以内)も募集いたします。
  
4)発表は「川柳連れ連れ草」として本ホームページ上で行
    います。感想文もその句のページに随時掲載します。
    掲載方法は一任してください。

  5)始めて投稿される方は「川柳観」をご一読下さい。


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