so083
     (せんりゅうつれづれそう)

               第83号(20年11月)

公孫樹(いちょう)の

(科 目)イチョウ科    (花言葉) 詩的な愛、しとやか、荘厳、長寿、
中国原産。「公」は祖父の尊称で、祖父が種子をまいても 実がなるのは孫の代に
なることから「公孫樹」。 雌株には実がなり、いわゆる「ぎんなん」で 食べられる。

イチョウ並木が続く名古屋の大通りを歩いて通勤している。黄葉が始まった。
名古屋駅の大イルミネーションも始まった。暮れに近づいたことを感じる。
川柳連れ連れ草も秋の句になり、身近な幸せを詠う句が多い月となった。
                      (★印は英人の推奨句)


  課 題   「 帰 る 」

私より孫の帰りを待つ実家     さくら
帰り道月に送ってもらいましょ   悠澪
葉が落ちて帰らぬ人を思い出す   ★靖坊
旅に出て恋しくなって居に帰る    酒仙
ただいまと帰ってくるだろうこの連休   ぺ天使
帰りたい時代はすでに霧の中    ぺ天使兄
帰り来た家に人あり灯りあり   ぺ天使妹
古日記照り葉に帰る忘れ恋    柳立
帰りたくなったらいつでも待ってるよ    まつぼっくり
「ただいま」の声でその日を推し量る    ★美智優
黄のじゅうたん踏みしめ帰る親子連れ     桃華
待ち人がいて安堵する帰り道     英人



「 家 族 」    美智優

似なくてもいいとこばかりよく似てる
★ちゃぶ台に集ってその日振り返る
家族ってけんかをしても温かい
空気ゆえ夫と長年居られるの
返せない両親の恩大き過ぎ

(家族といる幸せ、幸せの根源)



 「待ってました!!」   さくら

初めての靴が出番を待っている
待ちわびた最初の一歩見逃して
★得意気にあっちこっちと大冒険
すれ違う人に微笑みふりまいて
ハイハイが見れなくなって母寂し

(待ってました!幸せの最たるもの)


  「初時雨」   柳立

不景気がジワリと重く初時雨
ストーブ出すその頃決まって初時雨
初時雨過ぎて紅葉の赤さ増す
紅葉狩り寒さも狩って初時雨
★露天湯に紅葉映して初時雨

   (初時雨、句にできる幸せ)



    (随想)   「松手入れ」   ぺ天使兄
      
庭に2m位の松がある。松がどうしても欲しかった。
知人と遠くまで行って買い求め、大変な苦労をして植え付けた。

毎年9月にもなると、どの枝も松葉が盛り上がる。
伸ばし放題の丸頭を見るようで、何とも落ち着かない。
10月半ばを待って、手入れに入る。
ふる葉を除き、いらぬ枝を落とす。
1本1本丁寧に検討して鋏を使う。
切るべきか否か、なかなか決まらぬ枝がある。
用事の合間、合間で1週間かけて終える。

終えると光も風も通る清々しい姿に変わる。
これを眺めるときの気分は格別だ。その時いつも思う。
「ところで松は喜んでいるのだろうか」と。



  「 人 生 」     悠澪

★子の数だけ喜怒哀楽をいただいた
もがいても所詮この世はこんなもの
ついてない人生だけどへこまない
人生のわき道にそれ散歩する
照る日曇る日あって人生

  (生きていることが幸せと言うこともある)


「 近 頃 」    酒仙

何処行く外国人が集団で
誰のせい景気低迷金送れ
★なぜなぜと問い詰めて行く食文化
食べたいが賞味期限が気にかかる
列車旅のんびり出来て酒進む
(酒進む、至上の幸せ)


「 庭 」    まつぼっくり

縁側を額縁にした庭があり
棕櫚の木を駆け上る猫たちがいて
鳥たちと分け合い食べるサクランボ
★一年中木々がざわめく物語り
勉強はせずに庭ばかり眺めてた

(庭眺めるも至上の幸せ)



・・英人の20句抄・・ 「 紅葉の頃 」
               
         紅葉に四季を感じる句ができる
      弁解をしながら落ちるイチョウ葉
      悔しさを秘めて落ち葉が舞っている
      側溝に落ち葉がたまる終着駅
      もみじ落ち不平は言わぬ後始末
 北からと思っていた冬に油断する
    冬支度次の休みに始めよう
    予定ある休みにいつも雨が降る
    冬支度終えぬ前に吹く木枯らし
             すずなりの渋柿沁みる過疎の里
             ギンナンを踏みつけ悔いが増えている
             空腹を覚える匂いが立ちこめる
       包丁が切れなく夫婦戸惑いぬ
       無駄口が緩衝材となる夫婦
                  白髪染め止めて自然に戻っていく
                  気温が下がって血圧上がっている
                  寒くなってすぐに恋しい夏の海
   秋の陽が弱まって意志が弱くなる
   会うだけで目的果たす旧友よ
   澄みきった空に新たな期待感


「 紅 葉 」   ぺ天使

一面のもみじに声が高くなる
紅の葉がフロントガラスの前で舞う
ギンナンを落としてイチョウ軽くなる
黄昏れた山が下山を促して
★燃え盛りはしゃいだ後の落ち葉たち

(四季のある日本の幸せ)



  「おさんぽ」  靖坊

窓の外小春空なり靴を履く
道連れはいつも一緒の影法師
★どこ行くの無口な影に聞いてみる
地の上をどこまで行っても空の下
伸びた影引きずり遠い帰り道
  
 (散歩できる幸せしみじみと)



「紅葉の中で」    桃華

競り合って見事に色づくサクラの木
仲間入りしたくて色づき出すイチョウ
紅葉に埋もれて美味いお茶を飲む
★イチョウ散る散り際までが父に似て
散る勇気見せつけるよう舞うモミジ

(紅葉の中で幸せかみしめる)



    (鑑賞文・感想文) 気ままに一言・・・ 

 ・列車旅のんびり出来て酒進む(酒仙)      まつぼっくり
    
いいですね〜。実にうらやましいです。やはりこういう身分になれるのにまだ
    20年は早いのでしょうか。しっかり年を取っていろいろなことに惑わされることが
    少なくなったとき、心を無にしてゆっくり旅が出来るのかもしれません。
    こういう旅のお酒はさぞかし美味しいことでしょう。


 ・仲間入りしたくて色づき出すイチョウ(桃華)     ぺ天使妹
    
「仲間入りしたくて」と受けとめられたことの感性に、心が“ほわぁー”と温かく
    なりました。樹木は芽吹きから始まり、最後には葉を落とします。散っても地面を
    色どり、もう一度楽しませてくれます。イチョウは赤い落ち葉と巡り合って、互いを
    ねぎらい合っているかも知れません。今年の紅葉はとっても美しい気がします。

 ・紅葉に埋もれて美味いお茶を飲む(桃華)     まつぼっくり
    
なんと美しい光景でしょう。紅葉の中でいただくお茶は何でしょう?シナモン
    テイー?ジャスミンテイー?それともハーブテイー?
     私はホントは珈琲が好きなのですが、紅葉の中でいただくお茶は何故か
    紅茶が似あうような気がします。たまには気持ちをう〜んとぜいたくにして、
    美しい景色の中でお茶をいただきたいものです。


 ・紅の葉がフロントガラスの前で舞う(ぺ天使)    酒仙
    
いいですね〜 いつもこの時節には風が吹くと落ち葉が舞い通勤するときや、
    家路へ急ぎ時にこのような情景に会い秋を感じています。私は櫻の花びらが
    盛んに落ちる時に犬山から木曽川の堤防上を走るときが大好きです。前方が
    見えないくらいに舞い落ちる情景を今から楽しみにしています。


 ・道連れはいつも一緒の影法師(靖坊)      桃華
    
一人、二人とさよならをした後、淋しい思いで帰宅途中、ふと気づくと私の影法
    師が私について来ている。私とおまえは一心同体、いつまでもよろしくね、とつい
    語りかけたくなる。強い味方を得たような句。

 ・燃え盛りはしゃいだ後の落ち葉たち(ぺ天使)     英人
    
真っ赤に色づいた葉っぱも、今では落ちてドス黒くなり、地面に張りついている。
    この燃え盛りはしゃいでいたときに、その後のことを知って楽しんでいたのか、
    知らずにはしゃいでいたのか、知りたいところである。
     川柳は人生観察である。作者の目は人生を見ている。


 ・葉が落ちて帰らぬ人を思い出す(靖坊)       酒仙
   
 暮が近づき今年お世話になった人への新年のご挨拶を送る時期となりました。
    落ち葉を眺めながら訃報の知らせを見ていると、中学校の担任の先生のことが
    昨日のことのように思いだされます。卒業後毎年届く年賀状が今年は届かなかっ
    た。また初詣にも神社へ顔を出してもらえなかったので、先生宅へ電話をしました。
    そうしたら肺腫瘍を患い抗癌剤投与をうけている時で、面会は今年の秋まで延ば
    されてしまいました。そうして秋を楽しみにしていた時に二月に治療の効果もなく
    亡くなり会う機会を逸してしまいました。この句を読むとあの時お世話になったこ
    とが走馬灯のように思いだされます。


 ・イチョウ散る散り際までが父に似て(桃華)     靖坊
   
 幼くして父を亡くしたために、父親の記憶は皆無に等しく、父を詠んだ句には今
    ひとつピンとこないのです。恐らく自分で父を詠むことは、課題で与えられない限り
    永遠にないだろうと思うのです。ただ、死の床にある父の姿はぼんやり覚えて
    います。色づいたイチョウが豪快に散っていく風景とは似ても似つかぬ、ひっそりと
    した散り際だったように思います。

 
 ・食べたいが賞味期限が気にかかる(酒仙)     靖坊
    
最近、産地や製造日、賞味期限の偽装が多いですね。メーカー側の偽装に対
    しては消費者はどうしようもない訳ですが、情けないのは自分で自分を騙そうと
    する時でしょう。たとえば冷蔵庫の整理中に、奥の方から、くたびれた納豆の
    パックとか、三個百円で買ってきたうどんの一袋が発見された時、モッタイナイ
    精神と張りに張った食い意地の為に、「きっと大丈夫に違いない」と自分に言い
    聞かせて食べてしまう事例が頻繁に発生しております。困ったものです。「独居
    男性、一年前の卵を食べて死亡」などという新聞記事にならないよう、気をつけて
    いきたいと思います。


 ・寒くなってすぐに恋しい夏の海(英人)      悠澪
    
人間は実に自分中心と言うか自分勝手と言うか、暑い時は冬が良いと言い
    寒くなれば夏が良いと言う人が多いように思います。この句でそういうことを思い
    出しました。


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       「川柳連れ連れ草」への投稿案内
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             投稿をお待ちしています。


  1)毎月15日までに自由句を7句程度、課題句を2句程度
    メール(下記)で送付してください。自由句には題をつけて
    ください。課題の題は2)の通りです。
  
2)2008年「課題」
      (9月)夢 (10月)遊ぶ (11月)帰る (12月)みやげ

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    (150字以内)も募集いたします。
  
4)発表は「川柳連れ連れ草」として本ホームページ上で行
    います。感想文もその句のページに随時掲載します。
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