(第1集)


川柳東浦の会の会報「ちたの風」に掲載された句を
1980年4月の第1号から順に整理し、できた分から
掲載していきます。最終号(2001年11月・260号)
で何句になるのか私自身も楽しみです。

     (掲載月の説明 : 198004=1980年4月号)  


No 掲載月
751 春だから素直なままの未練です 199004
752 春一番 合格通知が遅れている 199004
753 小雨降る中で歯医者の言い訳 199004
754 父の日は知らぬ顔して雨が降る 199007
755 平和と呼ぶ日曜日 芝生刈る 199007
756 父だから責任という文字嫌う 199007
757 責任逃れに積み木つむ日曜日 199007
758 責任を逃れに逃れ人嫌い 199007
759 伸ばしすぎたと傷心の髪を切る 199007
760 沈黙を守って踏み石踏みはずす 199007
761 花しょうぶ一人で咲いて孤高かな 199007
762 疲れたと流れる雲を追う案山子 199010
763 雨音に男一人が騙される 199010
764 できるまで待っていましょう力こぶ 199010
765 真夜中にも力強く鳴く鳩時計 199010
766 優男の力限りの皮肉なり 199010
767 読書する女でいたい夕暮れ 199010
768 月食は悲しき 男は自爆する 199010
769 終戦の年の生まれで戦嫌い 199010
770 段階のひとつ手前は鬱々と 199010
771 影薄く団塊の世代に引き込まれ 199010
772 団塊の想いは深い古い井戸 199010
773 思い出が鮮やかになる蚊帳の中 199010
774 青年もおとぎ話に蚊帳くぐる 199010
775 セピア色の写真に捜す少年期 199010
No 掲載月
776 メロディが味付けしているロバのパン 199010
777 砂利道はロバも疲れる日銭取り 199010
778 薬売りうわさ話を売り歩く 199010
779 ばら売りの飴が嬉しい駄菓子屋で 199010
780 裏側から友情を見た紙芝居 199010
781 サトウキビ噛み続けての悔いばかり 199010
782 ゴムかんのゴム伸びきって失恋する 199010
783 紙芝居 木立の向こうで缶を蹴る 199010
784 抵抗をみせたまではよかった鬼 199010
785 缶けりのやがて寂しい夕暮れに 199010
786 浮き蓋のある風呂で父をなつかしむ 199010
787 情念は深くなって井戸枯れる夏 199010
788 箱だけが戸棚に残る置き薬 199010
789 メロドラマのメロディ残るロバのパン 199010
790 大掃除 今年も残る古い蚊帳 199010
791 あこがれのあの娘はどこにサトウキビ 199010
792 ゴムかんの感触どこへ指の先 199010
793 くぎさし・しょうや懐古の胸うずく 199010
794 堀井戸に蓋かぶせ前世は問いません 199010
795 いつまでも団塊のままで炎天下 199010
796 団塊の子は団塊でよく眠る 199010
797 知らぬ間に欠けていた月と情熱 199010
798 月食に残りの半生問うてみる 199010
799 傾いた絵をじっと見る孤独部屋 199011
800 重い穂が自慢げに見える案山子の目 199011


No 掲載月
701 未練累々 青信号が渡れない 198906
702 あれは愛です電話のベルが鳴る 198906
703 雨しきり義父の命が見えません 198907
704 本当に優しいのです注射針 198907
705 義父倒れ義母倒し雨降りやまぬ 198907
706 居留守かな隣の芝生は伸びたまま 198907
707 疲れた目で夢よ来い来い雲を見る 198907
708 気どらずに語り明かせよ夢の中 198907
709 水たまり あなた写して罠ですよ 198908
710 生き写しと言われて亡父がまだそこに 198908
711 夏姿鏡に映し鏡好き 198908
712 折り鶴を折りつつ壁は白くなる 198908
713 負った荷を一度に降ろし深く寝る 198908
714 コッソリと裸婦像を見る共犯者 198908
715 長雨と苦楽を共にダリア咲く 198908
716 ひまわりが思い出を秘め枯れている 198910
717 思い出が背中に重いカタツムリ 198910
718 思い出す亡父にある夜鳴きそば 198910
719 朝顔が咲かない朝の気が疲れ 198910
720 下り坂過ぎると出会う占い師 198910
721 芯から疲れて丸い鉛筆が 198910
722 醜男が詰めたスヌーピーの知恵袋 198910
723 歳末や はき慣れた靴脱ぎ捨てる 199001
724 晴天が続いて邪魔な靴一足 199001
725 靴底の痛みのわかる土踏まず 199001
No 掲載月
726 霜柱踏んで戦は前哨戦 199001
727 かくれんぼ頭隠して罪深し 199001
728 情炎や自己喪失の風景画 199001
729 日だまりにリンゴ置いて朽ちていく 199001
730 自己欺瞞白い目で師走が追いかける 199001
731 疑問符の多い子供の風景画 199002
732 朝から茶碗の割れる音 冬景色 199002
733 雪景色 雪見障子が曇っている 199002
734 リンゴ切るナイフでは縁切れません 199002
735 転がる先のわからない一輪車 199002
736 青春の夢を消しているインク消し 199002
737 愚痴話にノートの色が褪せていく 199002
738 四十肩どこかでだれかが噂する 199002
739 声高に叫ぶと椿落ちている 199003
740 声からし街宣車が過ぎあとは闇 199003
741 あこがれを深く抱いた無声劇 199003
742 恥ずかしさ持って案山子は生きている 199003
743 平和すぎて身の上話聞こえない 199003
744 少年に踏ませてみたい麦畑 199003
745 雑談が雑談で終わる午後の平和 199003
746 差し足で春やってくる心象画 199003
747 去る人は去る人として酒を飲む 199004
748 雨あがり ゆううつの神去ってゆく 199004
749 啓蟄に不安が増える僕の庭 199004
750 この冬の生きのびたと出た新芽 199004


No 掲載月
651 ペンギンを見ているつもりで見られている 198809
652 夢を見る町コスモスが咲き乱れ 198810
653 休耕田で育つ夢がありますか 198810
654 無精ひげ夢の続きが続きます 198810
655 空白の頭脳を埋める空鉄砲 198810
656 雨続き陳列棚に細い首 198810
657 夢話書いたノートを裏返す 198810
658 鰯雲父子は並んで夢をみる 198810
659 呼び子が鳴る俺が会長だそうだ 198811
660 寒くなったなもと老婦に呼びとめられ 198811
661 呼びすてにできる人が欲しい長い道 198811
662 遠雷は確かに俺を責めている 198811
663 アルバムを繰る明日のことは見えません 198811
664 夏過ぎて言い訳ばかりの夏草 198811
665 罪深し知らぬ間に落ちる柿 198811
666 耐えるだけ耐えてみせますもみじ葉 198811
667 言い訳が過ぎて来年がまだ見えぬ 198901
668 日々平凡 来年の干支を数えてる 198901
669 巳年は第九に賭けるうわさなど 198901
670 無意味に風が走る抜けて師走街 198901
671 風当たり強く年賀状は束のまま 198901
672 年は暮れ自覚のない柱時計 198901
673 悔いばかりほうきの前の寒椿 198901
674 夢を見る女の好きな赤い櫛 198901
675 ルビーなど欲しいと言わぬ夫婦仲 198902
No 掲載月
676 ルビーなど知らぬ女はよく笑う 198902
677 耳かきよ甘い話は聞きません 198902
678 気まずい話が続くパンの耳 198902
679 こだわりが消えて青い信号機 198902
680 スキップする娘に確かな熱がある 198902
681 笑わない顔を見つめる朝のバス 198902
682 葬列の中で今日を見つめている 198903
683 僕の足の弱さを問う水たまり 198903
684 ツキが落ちた椿から落ちている 198903
685 あぐらかく足は今日も孤独だな 198903
686 暖冬や休日の多くなる暦 198903
687 梅の咲く庭で雀と語るかな 198903
688 春は雨 笑い話が笑えない 198905
689 豪快に笑ってみせて転勤する 198905
690 ヘッドホン笑う仲間がおりません 198905
691 ぼんやりと通勤電車に身をゆだね 198905
692 その列車は昔のままで本を読む 198905
693 ふじの穂の先に未練な蝶がいる 198905
694 良いも悪いも土筆の穂がほける 198905
695 朝露に隣の芝生よく光る 198906
696 武士道を説かれて重い朝の足 198906
697 朝の洗髪に男が消えてゆく 198906
698 近づけば雑草の見える隣の庭 198906
699 女系家族で時間を持て余す 198906
700 目をつむれば誰でもない私です 198906


No 掲載月
601 部屋持ちの小鳥よ小鳥飛んでゆけ 198802
602 手中でコロコロ僕の反抗期 198802
603 逆風で逆らわぬ凧で年を取る 198802
604 老いた象は老いた芸で長らえる 198802
605 新聞を広げて他人になりすます 198802
606 夕焼けに足をとどめて詩人です 198802
607 それまでと思えば酒もよくまわる 198804
608 虫けらの唄が聞こえる回り道 198804
609 母と子のいくさ時計は空回り 198804
610 傘忘れひどくなるかな父の猫背 198804
611 競争に不慣れな足であぐらかく 198804
612 忍耐を忘れて果てたスリガラス 198804
613 髪を梳く娘に父の座を奪われ 198804
614 友の死を見つめてわが道をもどる 198805
615 手相見が手相を見ると嘘になる 198805
616 父の見る目が優しいね四月馬鹿 198805
617 春眠や親と仲良く許しあう 198805
618 子供というには大きくしすぎたね 198805
619 桜ちらほら 疲れが見えている 198805
620 浮気な旅が好きです 天気予報 198805
621 胸の火が四月五月によく燃える 198806
622 背中から胸に伝わる男の荷 198806
623 胸襟を閉じて五月の風の中 198806
624 いたわりの雨 少しずつ人嫌い 198806
625 パトカーを避けていいことなかったね 198806
No 掲載月
626 親不孝を重ねつつ靴のひもを解く 198806
627 茶柱がたって話題にことかかぬ 198806
628 すり減った下駄を捨ててバスが出る 198806
629 忘れたいことから先にメモをする 198807
630 メモ好きな女の暗い足もと 198807
631 一行のメモに傷つく背の低さ 198807
632 出勤拒否を誘う朝のメロディ 198807
633 少し欲しいといったばかりの大雨よ 198807
634 蝶が飛ぶこだわりの中で白く飛ぶ 198807
635 疲れきった肩があなたの肩にある 198807
636 忘れたいことばかり多く飯を食う 198807
637 長い足で歩いて桃を踏みつぶす 198808
638 桃の実が色づいて戦は終章 198808
639 平和な町に住みついて桃を植え 198808
640 役割を忘れた蓋が割れている 198808
641 父と子が雨のち雨に負けている 198808
642 捨てぜりふのように聞こえる遠雷よ 198808
643 仲直りきっかけが欲しいにわか雨 198808
644 役割を終えた母のランドセル 198808
645 妻は留守一人ながめる高い山 198809
646 山また山を前に書けぬ半生記 198809
647 笑わない顔が山をなすバス停 198809
648 停止したままの思考で赤道越え 198809
649 気楽な旅を楽しむ野球帽 198809
650 赤道を越えてかわらぬ血液型 198809


No 掲載月
551 泣いて笑って聞き出す子の秘密 198706
552 泣き顔を妻子に見せぬサングラス 198706
553 サングラス騙しはじめて騙しきる 198706
554 ショパンが流れて切り札に手をのばす 198706
555 重たげに紫陽花 君の苦悩など 198706
556 反逆の臭いがする今朝のみそ汁 198706
557 人間の顔がある 古い写真帳 198707
558 人間を見ている間に視力低下 198707
559 笑って笑って素直な人です 198707
560 鬼ごっこ鬼が見つからぬ昼下がり 198707
561 四度目の仏の顔を見てみよう 198707
562 もういいと言い出せないかくれんぼ 198707
563 知らぬこと多くてうすめのコーヒーに 198707
564 六根清浄 日曜日にペンキ塗る 198708
565 それとなく触れてみたい「ペンキ塗り立て」 198708
566 鈍感な神経でいこう薬塗る 198708
567 空梅雨や後の祭りを祝うかな 198708
568 苦味のきいたコーヒーは卒業しよう 198708
569 不意の客アリバイつくってすぐ帰る 198708
570 口車に乗れば冷えてゆく飯 198710
571 西風に乗って吉報おもむろに 198710
572 悪乗りをしてやってくる秋祭り 198710
573 烙印を押されて楽な帰り道 198710
574 雑犬の遠吠え月が傘をさす 198710
575 行き先のない未練を旅に出す 198710
No 掲載月
576 青い鳥あこがれだけでは描けません 198710
577 浅知恵がよく走る晴れのち曇り 198711
578 君のため走り続ける郵便車 198711
579 闇雲に走った後の半熟玉子 198711
580 雑踏の中で次第に他人となる 198711
581 電話ひとつならぬ僕の留守番の日 198711
582 もみじひらひら償いはまだ済まず 198711
583 泣くことになれて秋の長テレビ 198711
584 列をなす訳知り顔の絵画展 198711
585 秋の陽に光る白髪は染め頃よ 198712
586 光線の具合で仲のよい夫婦 198712
587 朝だから機嫌がよかろう海光る 198712
588 父だから無言のままで旅に出る 198712
589 闘犬を見て人間も終わりかな 198712
590 夕焼け小焼けだめな自分がひとりいる 198712
591 平和かな手打ちそばを売っている 198712
592 うれしさ哀しさがあってノート買う 198712
593 絶対反対の杭は深く打つ 198801
594 深い傷抱いて閉じた日記帳 198801
595 信頼は確か 早めに咲く椿 198801
596 師走まで待って迷わぬ風が吹く 198801
597 割り箸がパリッと割れてよい兆し 198801
598 葉ボタンを三本買って春が来る 198801
599 暖房にきいた部屋で血がうすくなる 198802
600 哀しさのわかる時計などない部屋 198802


No 掲載月
501 子供は子供新しい靴に慣れぬ足 198609
502 日々悶々 一番風呂には入らない 198609
503 厄年は九回裏の奇跡を信じ 198609
504 ラッパ飲み会いたい人はもういない 198609
505 そして秋 妻はますます冗舌に 198611
506 一夜明けそしてむなしい秋の酒 198611
507 口答えの息子そうして母老いる 198611
508 筋書きに素直になった老母よ 198611
509 酔うほどに寂しくもなる人生論 198611
510 みそ汁が甘く不吉な予感する 198611
511 コスモスの波うろたえる万歩計 198611
512 みごとな秋空 秋刀魚を焼こう 198611
513 正しさを言い張る独楽はすぐ倒れ 198612
514 正しい子はもの静かにやってくる 198612
515 我が子の正しさを説くに弱い腰 198612
516 降雨ゼロ都会の子らはよく騒ぐ 198612
517 あっさりと未練捨て去り落ち葉です 198612
518 ざくろの実はじけてばれる嘘ばかり 198612
519 戦後生まれの親ですみません 198612
520 生き生きと知多に風が吹く討入りの日 198701
521 多産系の女がゆっくり街をいく 198701
522 本日も晴天 野心を捨てきれず 198701
523 雪一面 男の意地が錆びてゆく 198701
524 悔しさの染みた辞令と雪見酒 198701
525 ライバルをなつかしむ冬の風鈴 198701
No 掲載月
526 冬の地図 迷路ばかりで朱を入れる 198702
527 追憶のかなたに地図帳を置く 198702
528 初恋と古びた地図がある本棚 198702
529 値踏みする価値はある冬の訪問者 198702
530 昔へ昔へ切々と雪は降る 198702
531 多数決に負けていません知恵の輪 198702
532 吊し柿昔の人が振り向いた 198702
533 強運というにはほど遠い薬指 198703
534 神国の強さが残る庭の石 198703
535 強さは秘めたままがよいつくしん坊 198703
536 したたかに生きてゆくぞとロンドン塔 198703
537 衛兵直立 考えるのは家族のこと 198703
538 僕の道もローマに続いていたぞ 198703
539 凱旋門まわる寂しい道がある 198703
540 妻という人晴天曇天よく笑う 198704
541 曇天に想うこと多き沈丁花 198704
542 天高くすべてのことは他人ごと 198704
543 隣は何する人ぞ四月の電車 198704
544 平行線がいいという先の長い旅 198704
545 沈丁花隠すに隠せぬ下心 198704
546 忙しさに負けていますモーニングサービス 198704
547 転勤辞令 ふるさとという沈殿物 198705
548 母と子の密談 間に合う終電車 198705
549 勝って負けて厚くなる日記帳 198705
550 泣き役は僕にしようホームドラマ 198706


No 掲載月
451 泣くことはいつでもできる日記帳 198601
452 三年後が見える眼鏡がありますか 198601
453 急かされて懺悔といえぬ師走の風 198601
454 カタログが入りきらぬ玩具箱 198601
455 演技終了少し疲れて酒を飲む 198601
456 終わりのない旅をしている風車 198601
457 暖かい部屋で花が朽ちていく 198601
458 呪文解け亀の速さで逃げている 198602
459 亀になりきろう海が好きである 198602
460 夢うつつ亀の甲羅を売りに出す 198602
461 冷えた電車の中で他人がよく見える 198602
462 父だから衝動買いを慎もう 198602
463 霜一面 弁解はしない足跡 198602
464 妻の洗う大根を切る 静けさ 198602
465 素面では終わりの書けぬメロドラマ 198602
466 天高くモグラと同じ空気吸う 198604
467 無駄話空気清浄器を置いて 198604
468 戦う意欲をなくした軽い空気 198604
469 父だから攻められている腰の弱さ 198604
470 腰痛やしばしながめる裸体の画 198604
471 私語の飛びかう電車でよくねむる 198604
472 ブランド嗜好の女もいく駄菓子屋 198604
473 孤高を守って腰から痛くなる 198604
474 口べたで化粧はうすい赤にする 198605
475 化粧する女から聞く百の愚痴 198605
No 掲載月
476 雑貨屋にある化粧品がよく似合う 198605
477 卒業式終えて気をつけよ水たまり 198605
478 絵本を閉じて無口なコーヒータイム 198605
479 空気を吸い続けて身軽になれますか 198605
480 口答え朝からゆれる父の座 198605
481 早咲きのバラが父を刺しにくる 198607
482 遅咲きと信じ墓穴を掘ってみるか 198607
483 無駄話が咲いてやわらぐ腰痛よ 198607
484 六月は雨 雑草になりきろう 198607
485 ダラダラと坂を下ると父の日 198607
486 竹とんぼ母とキッチリ離別する 198607
487 涙ぼうぼう父という端役よ 198607
488 観客のいない芝居は戦だな 198607
489 悔しさの染みた鍋で芋が煮えた 198608
490 雨の染みた手紙が届く無感動 198608
491 誤報が身に染みる今日の雨模様 198608
492 好奇心が失せると白髪よく増える 198608
493 無口な子がどしゃぶりに濡れている 198608
494 父の椅子が軽い暖衣飽食 198608
495 他愛ないざれ言がうける梅雨明け 198608
496 愛という字がみつからぬワープロ 198608
497 涼しげに打ち水をする終戦日 198609
498 耳打ちの耳に涼しい風が吹く 198609
499 夕涼み益ない話どこまでも 198609
500 巷の中でさまよう古い靴 198609


 

No 掲載月
401 居留守が上手になって女の年輪 198506
402 壮烈な海を振り返る地蔵尊 198506
403 スーパーで余生の話を聞いている 198506
404 空念仏 根のない草が伸びたがる 198506
405 どこまでも列車に乗ってさみしがりや 198506
406 列をくずして列車を待つ深情け 198507
407 中年を意識して蟻の列を見る 198507
408 列をなして受験地獄に堕ちる母子 198507
409 青春の苦さを思い起こす 迂回路 198507
410 各駅停車に乗ってよく見える身のまわり 198507
411 父の日に小さな風鈴買う父で 198507
412 貧農の出を忘れて石を蹴る 198507
413 左手で蚊を追いながら書く懺悔録 198508
414 歩くたび靴が重くなって夏 198508
415 路地に咲く朝顔ひとつ僕の朝 198508
416 耳たてるロバになりきり路地を行く 198508
417 ふりかえればやはり路地の中の青春 198508
418 無風順風父の心が旅をさす 198508
419 不惑を迎えて話す過去がある 198508
420 せみがらを見つけた日から鬱になる 198509
421 点滅信号の前でためされる 198509
422 少々の暑さになびかぬ父の風鈴 198509
423 暑さは暑さとして戦後の話する 198509
424 終戦日に暑中見舞いが一二通 198509
425 ほおずきの中味は知らぬままでよい 198509
No 掲載月
426 四百四病 私はいくつ許される 198509
427 今一度老母の話聞いておく 198510
428 今一歩妻のリズムに乗りきれぬ 198510
429 今にくる戦後生まれの反抗期 198510
430 寡黙なり真夏の旅の同伴者 198510
431 善意を信じて満席のバスに乗る 198510
432 銅婚式を意識せぬ夕餉だな 198510
433 包装紙の中味は絵本だと思う 198510
434 動かぬ足を叱っている体育の日 198511
435 目をそらすと電柱も動いている 198511
436 飽食の村で動かない番犬 198511
437 楽天家でラストシーンは見ない癖 198511
438 四十才を迎えて箸が新しい 198511
439 軽くなった父親の位置でどっと疲れ 198511
440 少しずつ父が好きになって父描く 198511
441 小さな秋をとりそろえて人を待つ 198511
442 鉛筆の倒れた方から寒波くる 198512
443 親不孝続けて鉛筆の短さ 198512
444 ふところに折れた鉛筆持ち歩く 198512
445 川向こうになるリンゴが僕の好み 198512
446 ライバルが胃腸薬を飲んでいる 198512
447 熟し柿やさしい罠なら落ちてみる 198512
448 いまだに捨てられぬ亡父の定期券 198512
449 手品師のハンカチからは愚痴ばかり 198512
450 靴みがく子に行き先問えぬ 父 198601


No 掲載月
351 付き添う妻は世間の風を知る 198410
352 あとはまかせてと娘の目玉焼き 198410
353 男は男 何もせずに守っている 198410
354 風鈴を降ろして誤解まだとけぬ 198411
355 冬近くまだ鳴く虫の自己嫌悪 198411
356 目には目を父親不在で子は育つ 198411
357 厄年の男が瞳閉じていく 198411
358 半眼でホームドラマを見る長い夜 198411
359 何万年の無駄とは知らぬ赤い星 198412
360 ネクタイが嫌いで焼酎飲んでいる 198412
361 少年の木が倒れたり鎮守の森 198412
362 母は強くて森を見ないで子を育て 198412
363 ほんものの森知っている劣等生 198412
364 水不足 四十男がやさしくなり 198412
365 じゃんけんに勝っても負けても親心 198412
366 冬近く愚痴ばかりの酒を飲む 198412
367 放浪の果てにゆきつく赤い屋根 198501
368 喜劇が好きで屋根に登りたがる 198501
369 屋根裏を期待していた骨とう屋 198501
370 批評家になれぬ男が餅をつく 198501
371 自尊心を抱いて倒れたやじろべえ 198501
372 朝もやの中で世間が好きになる 198501
373 独楽ひとつゆっくりまわり不惑です 198501
374 全盛時の想いを抱いた冬の河 198501
375 冗舌な夜で哲学書を取りだす 198503
No 掲載月
376 夜には夜の話題の沈丁花 198503
377 星月夜静かにみつめ人嫌い 198503
378 地球儀の丸さを信じるえせ学者 198503
379 娘二人いて黒子になりきれぬ 198503
380 人恋し漬け物石を抱いている 198503
381 四面楚歌に沈丁花はよく似合う 198503
382 別世界に逃げてしまった画集 198503
383 ピエロになり切れぬ男でラジオ好き 198504
384 転勤のうわさ流れてラジオ聞く 198504
385 真夜中のラジオに戸惑う父となり 198504
386 僕の前を良寛さまが通りすぎ 198504
387 ランドセル背負っていた子見あたらぬ 198504
388 うたた寝は寂しい旅の続きです 198504
389 老夫婦休耕田にれんげ蒔き 198504
390 ふるさとの匂いがしみて優しくなり 198504
391 リンゴを丸かじりにする自己主張 198505
392 坂道に踏みとどまってリンゴの意地 198505
393 黙ったまま季節はずれのリンゴ食う 198505
394 妻あり子あり休耕田に水をひく 198505
395 酔うほどに世の中が見え転勤す 198505
396 乞われれば歌うばかりのピエロです 198505
397 素直に写すこと忘れた古鏡 198505
398 リンゴに魅せられた少年は脱皮する 198505
399 留守の家で時計は早めに時を打つ 198506
400 吉兆と思う留守時にかかる電話 198506


No 掲載月
301 秋雨と罪の重さに負ける案山子 198311
302 天高く盗られるものは何もなし 198312
303 盗品を堂々と売る駅前店 198312
304 自転車を盗られ出勤拒否になる 198312
305 生きのびる案山子もいる僕もいる 198312
306 悲哀ありゆっくり落ちて落ち葉たり 198312
307 念願をいくつも抱いたぬいぐるみ 198401
308 願うことひとつずつ消す通信簿 198401
309 願い事多くなりまして暦繰る 198401
310 冬日さす背中に重い履歴書あり 198401
311 玉子酒亡父亡父と飲みにけり 198401
312 木の橋にふるさとさがす風景画 198403
313 理論ずくめの橋があり渡れない 198403
314 原点を求めゆきつく橋の下 198403
315 休日に国旗ゆらめく貧困よ 198403
316 こたつから出ようとしない哲学者 198403
317 自分史を書いて自分で幕を引く 198404
318 踏切に来て引き際を考える 198404
319 引き下ろす緞帳のないわが頁 198404
320 雪が溶け明日はライバルやってくる 198404
321 悪評を背中にうけひなたぼこ 198404
322 限界を悟り聖書と笛を買う 198405
323 女でよかったと女が口笛を吹く 198405
324 母の吹く笛には黙す人形達 198405
325 足一本隠して案山子春を迎え 198405
No 掲載月
326 引き際を考え考え亀となる 198405
327 ヘッドホンをつけて王様は裸 198606
328 妻子を愛して一芸といえますか 198406
329 塀のむこうに我が影茫々とあり 198406
330 ブロック塀築いて単眼思考となる 198406
331 他人の塀に落書きをする不眠症 198406
332 旅に出てまで標準語を聞いている 198407
333 蛍かごは空で通勤電車に乗る 198407
334 蛍狩り四十路に甘い話がある 198407
335 飽食の家庭に見えぬ蛍の火 198407
336 焼きなすを並べ 円卓父を待つ 198408
337 待つことを止めてから口軽くなる 198408
338 忘れ物に気がつくバスを待つ間 198408
339 身から出た錆を炎暑に晒している 198408
340 夏に疲れて岬巡りの舟に乗る 198409
341 終戦記念日に岬に出かける老夫婦 198409
342 岬まで渋滞続く終戦っ子 198409
343 積乱雲 平常心はなくすまい 198409
344 ライトフライそして猛暑が過ぎてゆく 198409
345 自己批判をしいる妻と胃腸薬 198410
346 学歴偏重武蔵の本が閉じてあり 198410
347 静寂を破る男一匹虫一匹 198410
348 虫よ鳴け上司批判は許します 198410
349 コオロギの合唱盛ん敬老の日 198410
350 病んで母 臥して念仏繰り返す 198410


No 掲載月
251 自然淘汰そうして私に家族がある 198301
252 暗闇の長さに負けた蝉の殻 198301
253 その先を無心にみつめ駅に着く 198301
254 口車に乗っているきのう今日明日 198301
255 不況風にさからいきれぬ凧の足 198301
256 老母は読経えんえんえんと冬をゆく 198302
257 西高東低わたしの進路定めかね 198302
258 魑魅魍魎それでも時計は刻を打つ 198302
259 世の中が素直にみえる初詣 198302
260 油田捜しに向かいます通勤列車 198303
261 石油一滴二滴と母がいてくれる 198303
262 石油商の不協和音に慣れた耳 198303
263 足の冷え想いはどこまで続くこと 198303
264 バスが揺れ腰の弱さを見破られ 198304
265 この町を知りつくしたとバス走る 198304
266 終バスが遅れ夫婦がまだ続き 198304
267 髪の毛を染めると見える他人のこと 198304
268 夕焼けに染まる優しい父です 198304
269 愛児らをかってに染めるブラウン管 198304
270 春や春 反抗期を控えてます 198304
271 大地に鍬を入れ五月病は知らぬ 198306
272 大地からもらった命老母とあり 198306
273 履歴書を大地にしるす父の遺産 198306
274 父になろうと玉子焼き覚えます 198306
275 ドアホンを二度とならさず父帰る 198306
No 掲載月
276 鉢植えの松そのままに父の旅 198306
277 竹やぶに竹の子見えぬ核家族 198306
278 私ばかり叱る父の日の父の手 198307
279 雨合羽に包む身は戦好き 198307
280 自爆剤を秘かに包む老農夫 198307
281 包装紙をいく枚求め共稼ぎ 198307
282 遠景のライバルとなら握手する 198308
283 幸せですと堂々言いきる手があって 198308
284 梅雨空やふところ手して男いる 198308
285 絶縁状も運びます老郵便夫 198308
286 少年の前で止まった道路工事 198309
287 学期末思考の止まる凡夫凡婦 198309
288 鳴きやまぬ蝉をとがめるああ夫婦 198309
289 猛暑猛暑うわさ話は続きます 198309
290 盆踊り踊りぬき明日がやってくる 198310
291 泣き寝入りするころの顔我が子です 198310
292 泣き顔を手鏡にうつす鬼がいる 198310
293 新盆を過ぎて泣き顔見せません 198310
294 空箱の意味がわからぬ浦島太郎 198310
295 絵のない絵日記を責めるカウンセラー 198310
296 週末に背負うもの無く旅に出る 198310
297 虹は虹母は我が子を許したり 198311
298 虹を背に下り坂を下りきる 198311
299 虹色のネクタイ前に細る首 198311
300 月白く夫婦の会話とだえがち 198311


No 掲載月
201 ひかえめに長生きをしたと大樹なり 198205
202 病名を隠して老いた木をなでる 198205
203 秋は去年と同じで気を持ちなおし 198205
204 一日の看病の後獏捜す 198205
205 慰めの言葉に曇るガラス窓 198205
206 星の数と余命ひそかに比べている 198205
207 知らなかったとは言えぬ氷柱の命 198205
208 父が逝くその夜時計の音がする 198205
209 その家の不幸を知らぬ蜘蛛の糸 198205
210 父を迎えて律儀になった墓の石 198205
211 冬草は今やすらかに土となり 198205
212 鬼がわら大きな夢をみているか 198206
213 父が逝きひとまわり大きく 母 198206
214 行商人大きな話置いてゆく 198206
215 贈与供応この池に青い鯉泳ぐ 198206
216 彼岸からやさしい風を贈られる 198206
217 吉凶を問わないままの贈答品 198206
218 青葉青葉に目薬を買い求め 198206
219 肩丸め反核を言う やがて夏 198207
220 なで肩の男に太い生命線 198207
221 四十肩論語を少し読んでみる 198207
222 傘さして教会の前に男立つ 198207
223 反省を促す傘が駅にある 198207
224 人恋しベンチに傘を忘るるか 198207
225 彼岸前 母のコスモス咲きました 198210
No 掲載月
226 にわか雨母とコスモス濡れている 198210
227 体制の中を通勤列車がつぎつぎ 198210
228 ライバルのケーキを贈る終戦日 198210
229 その先を問わないままにケーキ喰う 198210
230 手作りのケーキで絆が買えますか 198210
231 胃が痛く残暑確かなせみの声 198210
232 ぶどう狩り帰りの友は三人となり 198210
233 雨一滴ぶどうを抜けてぶどう色 198210
234 何気なくもいだぶどうが青かった 198210
235 ぶどう畑に登校拒否児はいない 198210
236 ぶどう喰う罪の数ほど食べてみる 198210
237 酒こぼれやはり貧しき腹にしむ 198211
238 陽ざしがこぼれ明日は信じます 198211
239 恩知らず手から水がこぼれ出す 198211
240 早々と答えを出して無信心 198211
241 台風がそれて今年の答えなり 198211
242 イチたすイチの答えがない夫婦です 198211
243 山脈越えて山脈に居る壮年 198212
244 山また山で男は早起き続けます 198212
245 山脈を前に口数重くなる 198212
246 さみしさを内に秘め柿渋くなる 198212
247 さみしさの束がある宝くじ売り場 198212
248 流行を追いかけ女さみしくないか 198212
249 椿落花 大地の痛みわがものに 198301
250 自然体好きな男の厭世観 198301


No 掲載月
151 信号機に来て白髪は増えつづけ 198110
152 妻と子のサインは知らぬままでよい 198110
153 サインひとつで秋はまもなく君の背に 198110
154 終戦日からブランコはこわれたまま 198110
155 ブランコを忘れた頃より傷をもち 198110
156 ブランコの止まる朝まで待てよ父 198110
157 貧弱な指で描いた桃太郎 198110
158 指輪のない指で正夢描きます 198110
159 罪状は美しさとあり葉鶏頭 198111
160 子供の目で見る絵本が美しい 198111
161 美しさに溺れた花から落ちていく 198111
162 僕の背後から始まる広い道 198111
163 道幅を飛べるまで待つかえるの子 198111
164 親子不和 東へ続く道さがす 198111
165 若くして西へ西へと続ける旅 198111
166 柿の実は落ちて安らぎ覚えたり 198111
167 半生をすぎて庭には菊植える 198112
168 菊の香に負けぬ愛なら買いましょう 198112
169 菊の香に無縁に父が日記書く 198112
170 公園にひとりたたずむ旅も終わり 198112
171 旅だった青年に罪なお残る 198112
172 旅と念仏に秋深くさまよいぬ 198112
173 鈍痛のままに大根白くなれ 198112
174 大根の白さに似たり悔いている 198112
175 老夫婦いのちの辞書をひいている 198112
No 掲載月
176 ガラス拭いて内緒話は聞きません 198201
177 艶聞にビンビンうなるガラス窓 198201
178 絵表紙の裏を見ているガラスの目 198201
179 雪降って序章迎えるつるし柿 198201
180 雪が降る不吉と思うおもわない 198201
181 少し早めに少しやさしい雪が降る 198201
182 目刺し食う男の本音見せぬよう 198204
183 親不孝の批判の中で魚焼く 198204
184 壮年を過ぎた 魚拓になれぬ 198204
185 浮力とは 信じてしまう棺かな 198204
186 家族団らん歌手と父とが浮きあがる 198204
187 嘲笑に耐え水に浮く落ち葉たり 198204
188 おいたちを順々に解く聴診器 198204
189 似顔絵師の前に立って善人になる 198205
190 真夜中を見続けている自画像よ 198205
191 絵馬に書く願いは本音はずします 198205
192 父落ちてふと知る枝のしなやかさ 198205
193 占い師の枝話だけ信じます 198205
194 広い海を見た反骨の戦後かな 198205
195 備中をひとふり父はまだ負けぬ 198205
196 今こそ怒れ怒れ父の足よ 198205
197 鈍行を乗り継いできた鰯かな 198205
198 大樹には大樹の誇り風を喰う 198205
199 曇天も父の行方も定かなり 198205
200 幾ばくの命であるや餅を喰う 198205


No 掲載月
101 別れ際にスルリとみえた赤信号 198103
102 念仏を唱える母のくちびるの色 198103
103 独断が走り続ける老骨者 198104
104 気まぐれな走法に子は膝から負け 198104
105 汗が走り背筋から冷える教育者 198104
106 水面にうつる己のしたたかさ 198104
107 水を汲む妻の背ななお戦いつ 198104
108 水に浮く椿の赤は母の情 198104
109 雨が降るやはり税金おさめよう 198105
110 帰り道を消してしまった雨の罪 198105
111 雨だれが素直にひびく別れです 198105
112 雨だれにふるさとのなまりを思う 198105
113 背な子が泣くとき思う家計簿よ 198105
114 ふるさとの思いがつのる雨あがり 198105
115 風船が子から離れる父ばなれ 198105
116 風船をみあげる顔のまんまるさ 198105
117 風船はどこへ行くのも風の意志 198105
118 ふるさとを焦がれぬ魚ばかり泳ぎ 198106
119 帰り道いつでも出会う雑魚がいる 198106
120 村八分の魚は左へまわっている 198106
121 嘲笑の中できゅうりがよく曲がる 198106
122 沈黙の休耕田で笑う月 198106
123 ライバルが笑い袋を持参した 198106
124 赤い服着て論争がおさまらぬ 198106
125 くちびるの赤さを聞かぬ古かがみ 198106
No 掲載月
126 さようならを一滴で言う赤インク 198106
127 重い荷になってしまったらくだのこぶ 198107
128 生真面目な男で吉日を待とう 198107
129 老木と古い話を始めた悔い 198107
130 人形に知らせてならぬ舞台裏 198107
131 舞台なら大きな夢をえがきます 198107
132 熱狂がやがて哀しい舞台裏 198107
133 墨絵の中を駆けぬけ寂しくなる 198107
134 さみしさがみそ汁の底に沈みこむ 198107
135 ブランコがいつまでもゆれさみしいよ 198107
136 野仏がうたれるままに雨は降る 198108
137 夕立が帰りの道を消してゆく 198108
138 にわか雨良薬しだいににがくなり 198108
139 過去を問うことにもあきた白い髪 198108
140 前髪をかきあげ敗北認めない 198108
141 友情が揺れてもつれる長い髪 198108
142 平和にして団地住まいに飽きた鳩 198109
143 団地からふるさとに嫁ぐ女がいる 198109
144 団地の白さに目があり耳があり 198109
145 まっすぐに夕焼けを見よ現代っ子 198109
146 夕焼けにちちははがいる我がいる 198109
147 夕焼けが罪の意識を隠し持つ 198109
148 離縁状と暑さに狂う信号機 198109
149 遮断機の向こう側では涼しかろう 198109
150 暑い日にどこまで狂う机上論 198109

No 掲載月
51 傷口をみせずに男夏に耐え 198009
52 父に便りを書こう遠い遠い夏 198009
53 真夏日は胸のあたりが痛んでくる 198009
54 あなたの自由にまかせても淡い命 198009
55 七夕にある淡い淡いメルヘン 198009
56 電話線が淡い火を吹く夏便り 198009
57 雑草のない庭やがて死んでいく 198009
58 父と子をつなぐオオバコを探す 198009
59 大らかに水面の影に石をうて 198009
60 遠来の客には妻はみせられぬ 198010
61 それが遺書なのか遠花火がはぜる 198010
62 木偶の坊と言うにはあまりに遠い過去 198010
63 写真の中にもどりやがて話があう 198010
64 残暑かな飾り写真をすげかえる 198010
65 秋迎え天にも過失あると思う 198011
66 秋深く父の行く手をはばむかな 198011
67 延命を考え秋の一人旅 198011
68 僕の駅は鈍行列車も通過する 198011
69 鶏頭の赤がいとしい通過駅 198011
70 無人駅野菊一本おいて出る 198011
71 月がこぼれその一瞬故人に会う 198012
72 月が照り父のゆくえは確かなり 198012
73 月あかく明日のゆくえを問う流人 198012
74 ふるさとのざんしが沈む胃のあたり 198012
75 勘当の背中に重い重い故郷 198012
No 掲載月
76 ふるさとの便りは母の笑顔かな 198012
77 結び目をひとつふやして秋の日に 198012
78 住みついた雲の罪問うおおみそか 198101
79 石うすにざんげのことばつきかため 198101
80 たこあがる少し晴れ間をあげましょう 198101
81 今少し妻の寝息と語りたい 198101
82 冬の陽が言葉少なに話しかけ 198101
83 冬の波許せぬ岩を打ちつづけ 198101
84 信頼は確かに波にゆらぐ舟 198101
85 寒月夜波の話を遠くに聞く 198101
86 夢を買う客はきまって二人連れ 198102
87 赤い花師走の客はひきとめぬ 198102
88 正月の客はオブラートを持参する 198102
89 うつむいた客は背中でしゃべり抜く 198102
90 ちちははの並ぶ背中の月光や 198102
91 星光り幾億年の愛があり 198102
92 胃袋に父の光りがにぶくあり 198102
93 月光は言葉少なに我をせめ 198102
94 行き先を見定めた傘に雪が降る 198103
95 降る雪にふるさと大きく語り出す 198103
96 背信と知りつつ無言の降雪よ 198103
97 反骨の父にふとんが柔らかい 198103
98 柔らかい陽ざしに挑む老夫婦 198103
99 カイロを背に柔らかい母の語り口 198103
100 赤々とした友情すぐに燃えつきて 198103

No 掲載月
1 朝露もただでは落ちぬ男の意地 198004
2 奮戦をとどめて静かな今朝の庭 198004
3 朝の陽がふとんにあって起きられぬ 198004
4 妻が臥し昨夜のままに今朝があり 198004
5 朝刊に不安を包みきっぱりと 198004
6 新築に自作の家具は捨て去られ 198004
7 計画を練ってるうちが意気盛ん 198004
8 雑念と戦うときに句を作り 198004
9 煙突がすっきりと立ち背を伸ばし 198004
10 知らぬ間につくし世に出てそれでよい 198004
11 春風に凡苦流して旅に出る 198005
12 信頼が春一番に揺れている 198005
13 春雨に流れる過去は忘れよう 198005
14 厳しさを忘れて進む春の夢 198005
15 春の陽はおばあさんと地蔵のもの 198005
16 走りきって乗った電車の他人の目 198005
17 吊革のぬくもりがとりもつ仲である 198005
18 満員車孤独のままにすぎてゆき 198005
19 レールからはみ出る楽しさを知ろう 198005
20 十円の席が小さくなる電車 198005
21 終電車酔客一人生きている 198005
22 モクレンが空を仰いで耐えており 198005
23 葉桜でも今年も生きてきました 198005
24 泣きそうな空に今日も負けている 198006
25 塀の向こうを覗いてみても同じ空 198006
No 掲載月
26 五月の空絵の具の足らぬ子が育つ 198006
27 何気なく指輪をまわしてみせる妻 198006
28 スマートなあいさつで今日を閉じておく 198006
29 スマートに歩んでみようカタツムリ 198006
30 夕焼けに父待つ子絵本を見る 198006
31 かけこむ人を待つ余裕もつローカル線 198006
32 降り出した雨かけぬける母の声 198007
33 ずぶぬれのねこにかわいそうとだけいう 198007
34 雨降りにタフな男が薬飲む 198007
35 気の強い男が雨の港へいく 198007
36 歩き疲れてベテランと言われる 198007
37 優しさを求めるねこがただ歩く 198007
38 曇天を歩きました詩がひとつ 198007
39 無思想の男が今日も歩き出す 198007
40 今日会って明日も歩みたい人である 198007
41 父親の扉がほしいあまのじゃく 198007
42 曇天にあけきれないドアがある 198007
43 裏切りを数えているは古時計 198008
44 二十五時を持つ時計はおしゃべりや 198008
45 はと時計ものうげになる昼下がり 198008
46 今夜には沈黙の海がきっと襲う 198008
47 海の色君の言葉でかわるかも 198008
48 会話のない二人は海に助けられ 198008
49 新しい町いもせんべいの味知らぬ 198008
50 妻の菓子平凡な手順で円満なり 198008


【掲載開始:2003年(平成15年)3月20日】


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