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第152号  2017年1月

2017/01/31(Tue) (第(2393話) 桜の木 寺さん MAIL 

 “葉をすべて落とし、丸裸になって一年の役目を終える桜の木。つぼみを膨らませ、寒い冬から、ピンクの花をつけ暖かい春の訪れを知らせてくれ、人々の心まで温かくしてくれます。夏には緑の葉を広げ、日陰を作り、涼しい風を運んでくれます。秋には紅葉し、人々の目に安らぎをもたらして役目が終わります。
 花びらが散り、葉を落とす。このころは学校の前の道路一面を汚して、私に仕事を与えてくれます。生徒たちが登校してくる前に、きれいな道路にしておきます。年々、目覚めが遅くなり、清掃にも時間がかかってきています。ありがたいことに、暑くなる前に、花びらが散り、北風が吹く前に葉をすべて落としてくれます。若く元気なころは、やっかいで迷惑な木と思って過ごしてきました。でも、年を重ねた今は桜の木を見上げ、何といとおしい、人に優しい、と感謝して暮らしております。
 丸裸になった枝に、小さな小さな花芽が寒い北風に吹かれています。暖かい春を運んできてくれる準備をして、頑張ってくれているように見えます。新しい年。今年も桜の木に元気をもらい、健康で清掃できますよう願っています。満開に咲く日を楽しみに。”(1月17日付け中日新聞)

 名古屋市の主婦・島田さん(71)の投稿文です。裸木から芽を出し、花が咲き、葉が出て紅葉になり、また落ちる、このような桜の1年をよく観察されていることと、情緒豊かなこの文書力に感心します。その時々に役に立つことがあり、気持ちも和やかにしてくれる。もうこれは見方です。心穏やかな人にこそできることでしょう。桜は虫がよくつきます。緑も紅葉ももっと綺麗な木は沢山あります。落ち葉の扱いも大変です。迷惑に思う人もあるでしょう。でも桜が咲き誇った頃にはここにもここにもと、こんなにたくさん日本には桜の木があったのかと驚きます。やはり桜は日本の木だと感じます。
 「学校の前の道路一面を汚して、私に仕事を与えてくれます」この受け取り方はいかがでしょうか。71歳の主婦です。することがないと言うことはないでしょう。というよりすることがいっぱいでしょう。でもこの言い方です。自分の庭を掃く訳ではありません。公道です。しなくてもいいのです。それを自分の仕事と捉えている。人は本当に様々です。島田さんのようにありたいものです。




2017/01/29(Sun) (第2392話) 新聞配達 寺さん MAIL 

 “元日の早朝、ドサッという重い音で新聞が届きました。まだ暗く、外気もジーンと冷えきっているころ。運んでくださる配達員の方々には、本当に頭が下がる思いでいっぱいです。
 私が四十年来、日課にしている早朝ウオーキングの途上、多くの配達員と出会い、声を掛けて励まし合っています。新聞を作る人、それを配る人たちの温かい気持ちに感謝しつつ、毎朝じっくりと時間をかけて紙面を楽しんでいます。
 欧州の古いことわざで、牛乳を飲む人より、それを運ぶ人の方が健康であるというものを思い出しました。牛乳を新聞に置き換え、まさしく至言と思いました。悪天候で、車両の事故の多い時節、どうぞ体に気をつけていただきたいと願っています。”(1月16に付け中日新聞)

 名古屋市の住田さん(男・85)の投稿文です。住田さんの早朝ウォークは40年来と言われるから40代からと言うことになります。当時はまだウォーク、ウォークと言っていなかったと思います。先見の明があるというか、先駆者というか、素晴らしいです。
 そして、新聞配達員の方との出会いがあります。お互い励ましあいの声をかける。こうして絆ができる。こういうのが嬉しいですね。ボクは毎日5時過ぎに起きます。起きるとすぐに新聞を取りに行きます。そして時折、持って来た新聞配達員の方に出合います。「ご苦労様」と必ず声をかけます。
 「牛乳を飲む人より、それを運ぶ人の方が健康」という諺は知りませんでしたが、うまく言うものだと感心します。健康には体を動かすことが一番です。いろいろな健康法が言われますが、体を動かさずに丈夫な体はできません。ボクもこの1年は、手術からその後不具であまり体を動かしませんでした。大分体力が落ちたと思います。落ちきる前に復活させねばいけません。頑張ろう。




2017/01/27(Fri) (第2391話) 「お父さん、ありがとう」 寺さん MAIL 

 “ぼくは勉強が苦手です。長い時間かけて勉強しても、いざテストになると、覚えた言葉や文章が出てこなかったり、書き間違えたり、簡単なミスをしてしまって、悔しい思いをしています。
 そんなぼくも中学三年の受験生になりました。夜遅くまで勉強していたら、父が仕事から帰ってきました。ぼくは戻ってきた数学のテストを見せました。あまりよい点数ではなかったので、怒られるかもしれないと、内心ドキドキしました。父は「これだけ空欄を埋められるのは、よく勉強した証拠や」とほめてくれました。その言葉にホッとしました。
 そして真夜中の勉強会が始まりました。間違えた問題のやり直しです。父はすぐに答えを教えようとせず、ヒントを出し、ぼくが一問ずつ解くのを待って、一緒に励ましながら教えてくれました。テスト直しが終わったのは、夜中の二時前でした。「お父さん、ありがとう」。そう伝えたとき、父の目は真っ赤に充血していました。父の仕事は翌日も早く、ぼくの寝ている間に出勤していました。
 ぼくの目指す高校では、情報処理が学べます。父は書類を作るのに苦労しているので、絶対に高校に合格して、今度はぼくが父のサポートができればと思っています。”(1月16日付け中日新聞)

 三重県鈴鹿市の中学生・伊藤さん(男・15)の投稿文です。本当に「お父さん、ありがとう」ですね。でもこういう感謝の言葉を素直に言える伊藤さんも素晴らしいですね。中学3年生がこういう言葉を吐くでしょうか。ボクの娘婿もこういうお父さんをやっています。長男の時は問題集を自分で作り、子供に与えていました。その長男は昨年、希望の高校に入学しました。次男は今小学5年生です。どうしているか、聞いてみると問題集は与えられているようです。ただ父親作成のものではなく、市販や兄のお下がりのようです。でも納得してやっているようです。学校の宿題以外のものをやっているのは、我が孫ながらなかなかのものです。親や兄、いろいろなことが影響しているのでしょう。
 先日娘が来て、大学入試やセンター試験について話していきました。今の時代、全く大変だと思いました。早い時期からの積み重ねが大切でしょう。そして賢明な判断でしょう。伊藤さんのお父さんならきっと良い助言をしてくれるでしょう。




2017/01/25(Wed) (第2390話) 入院生活 寺さん MAIL 

 “わが家には、家族が一生懸命折ってくれた千羽鶴が飾ってある。昨年、三ヵ月入院し、二度の手術を受けた時の物だ。
 妻は窮屈ないすに寝ながらも最初の1ヵ月は病室に泊まり、その後はほぼ毎日病院と家とを往復して、私のわがままを聞きながら付き添ってくれた。ベテラン看護師も「私には到底まねできないわ」と言われるほどだった。そして、なかなか良くならない病に負けそうな私を励まし、勇気づけてくれた。「二人で頑張ろうね。絶対に冶るから」。心細い思いを顔に出さず、いつも笑顔で言ってくれた。
 そんな献身的な看護もあって、何とか退院できた。子どもたちも随分心配してくれ、力になってくれた。退院しても元気がない私に、長男は初孫をよく見せに来てくれた。次男は私の退院祝いと復興支援を兼ね、九州旅行に連れて行ってくれた。今年は、家族に恩返ししようと決めている。”(1月10日付け中日新聞)

 愛知県一宮市の神戸さん(男・66)の投稿文です。ご主人が入院手術、奥さんは毎日病院へ通い、家族で千羽鶴を折る。退院しても元気付けるように孫を見せに来たり旅行に誘う心遣い。一大事の時、皆が気遣いし、助け合い、乗り越える、まさにこれが家族ですね。夫婦は、そして家族は人と繋がる最小単位です。一番身近なものです。いくら親しい他人でも家族にはなれません。法律でも他人とははっきり区別を付けています。分かりやすい例では遺産相続などがあります。
 家族は身近なだけに平常時にはいろいろなトラブルもあるでしょう。でもいざとなったら団結する。多くの家族は今でもそうでしょう。ボクも昨年は入院手術をしました。それ程の大事にはなりませんでしたが、妻は本人のボク以上に気を揉んだようです。子供達はあまり何も言いませんが、多分そうだったでしょう。今は家族崩壊も言われています。一般においても、昔より遠くなったかも知れません。でもいざとなったときには、一番身近な存在として、助け合える関係を保ち続けたいものです。




2017/01/23(Mon) (第2389話) 町内会脱会 寺さん MAIL 

 “名古屋市守山区の大川孝次さん(八二)はここ数年、四月が来るたび悩んでいた。町内会を継続しようか、脱会しようかと。いつも赤い羽根の募金や盆踊り、子供会の行事のお知らせが回覧板で回ってくる。だが、そのほとんどは自分の生活に関わりがない。年金暮らしで市民・県民税が免除されているにもかかわらず、町内会費が収入の多寡と関係なく一律というのも疑問に思っていた。
 もし脱会したら、奇異な目で見られ、地域で差別されるのではないか。以前、町内会を脱会した人が、収集場所にごみを持っていったら、町内会役員に拒否されたという話を耳にしたことを思い出した。だが、本年度、意を決して町内会長さんに理由を説明して脱会した。わが学区で初めてのことかもしれない。自分で決めたこととはいえ、不安な思いでいっぱいだった。
 さて、七月のある日のこと。組長さんが訪ねてきた。子供会のお祭りのお菓子を持って。地域の習わしで、子どもがいない家にも配ることになっているのだ。大川さんは「町内会に入っていないから・・・」と断ろうとしたがタイミングを失い、つい受け取ってしまった。でも「ああ、仲間はずれにされなかった」とうれしくなった。さらに、九月の敬老の日には、町内会長さんが高齢者へのプレゼントを持ってきてくれた。これには正直のところ参ってしまい、胸の奥から熱いものが込み上げて来た。
 「ひねくれ者にも温かな気持ちで接してもらい、少々反省しています。来年度にはもう一度、町内会に入らせていただこうと決めました」と大川さんは話す。”(1月8日付け中日新聞)

 志賀内泰弘さんの「ほろほろ通信」からです。少し長いですが、全文を紹介しました。町内会は一番身近な社会の組織です。そこから脱会してどうなるのでしょう。そういう人が増えていると聞きます。勘違いが多いと思います。この文から反論と共に思うことを少し書いてみます。
 町内会費が一律におかしいと言われることについて、町内会費に差を付けるほどの資料がありません。今は収入どころか家族構成も知らされません。そして差を付けるほどの大きな会費ではないでしょう。多くは月500円から千円ほどではないでしょうか。役所は、住民参加と言うことで町内会にいろいろなことを押しつけてきます。家族構成なども知らせずにどうやってやれというのか、腹が立ってきます。個人情報保護はいろいろな障害になっていますが、今の時代やむを得ないのでしょうか。
 子ども会や敬老の日のプレゼントがあったと喜ばれているが、これは多分町内会の行事ではなく、他の団体の行事を町内会が協力したと言うことでしょう。いろいろな行事が関係ないと思われていたと言うことですが、このようにそんなことはないのです。ゴミの収集でも町内会が結構負担しているものです。ボクが町内会長をしたときには、烏などの対策ネットを町内会費で買いました。防犯灯の多くは町内会設置です。補助金はありますが、町内会が負担しています。
 間違っていたと気づかれて本当によかったと思います。入らない人がでてきたら、あっと言う間に入らない人が増えていきます。ボクはそういう人を認めてはならないと言い続けています。地域のことを考えると心配事ばかりです。




2017/01/21(Sat) (第2388話) 苦手な合唱 寺さん MAIL 

 “僕は歌が下手だ。歌うことは好きだが、おんちだから人前では歌わない。いや、歌いたくない。これまでは毎年、「合唱コンクールなんてなくなればよいのに」と思っていた。僕にとってコンクールは最大の困難でもあったが、昨年十一月のこの前は違った。「歌いたくない」という思いはそのままだったが、「今回は頑張ってみよう」と思えたのだ。
 僕と同じく歌が得意ではない友人二人の存在が大きかった。彼らは、お世辞にも歌がうまいとは言えないのに、大きな声で歌っていた。そんな二人の姿を見ていたら、「歌いたくない」という気持ちが消えた。二つ目の理由は、実行委員の存在だ。彼は朝早く学校に来て練習の準備をし、やる気のない人たちにも絶えず声をかけ続けた。こんな彼の姿勢はクラスの人たちを変えた。日に日に歌声は良くなり、みんなの気持ちもそろい始めた。ぼくも合唱が楽しくなった。
 本気で努力している人は、周りを動かすことができるんだ。今回の合唱コンクールからそう気付いた。”(1月6日付け中日新聞)

 愛知県東浦町の中学生・寺崎さん(男・15)の投稿文です。苦手なことを一つずつ乗り越えながら成長していく、まさに若い人の行動です。好きなことだけをやっていては世界を狭くします。いろいろ挑戦して、その内自分の好きなこと、やっていきたいことが固まっていきます。それが見つかればその道を突き進みます。苦手なことも克服すれ自信になります。そして挑戦は幾つまで続けるのでしょうか。見つかれば終わりでしょうか。
 それがそうにはならないのです。挑戦は幾つになっても続きます。人生は常に変化をしています。その時その歳の状況があります。それにふさわしい人生を作っていかなくてはなりません。それを止めたとき、人生は終わります。実際には終わらなくても生気のない生活になります。生きている限り、可能な範囲で活き活きした生活をしたいものです。93歳の作家・佐藤愛子さんが1月11日の朝日新聞で「何が自分の幸福だと思うかというと、仕事ができる体力が90歳になってもある」と言うことだと語っています。体力と言われていますが、知力も意欲もあったと言うことです。ズッと挑戦を続けてきたと言うことです。
 ボクも今年7月に完全退職する予定です。することはまだありますが、大きな部分がなくなります。何もしなければ体力始めいろいろなものが衰えていくでしょう。替わりのものを増やさねばと思っています。と言っても70歳を過ぎたボクには限度があります。若い人は無限です。寺崎さんはいいことに気づかれました。苦手なことも得意なこともどんどん挑戦して欲しいと思います。




2017/01/19(Thu) (第2387話) とっさの手助け 寺さん MAIL 

 “昨年十月に次女が生まれました。二歳児の長女と新生児の二人の育児は想像以上に大変で、てんてこ舞いの毎日です。産休中で日中は、長女は保育園に行っています。しかし自動車の免許を持っていない私にとって、園への送り迎えは大変です。自我が芽生えてきた長女は、先日もバスに乗り込む直前、突然「いや!」と乗車を拒否しました。私は赤子を抱えているし、腕を引くのが精いっぱいで、諦めようかと観念しました。
 ところが、その時です。後ろに並んでいたご婦人が長女をひょいと抱っこして、バスに乗せてくれたのです。うれしかったのか、長女も素直に乗り込み、席に着きました。とてもありかたく、何度もお礼を言いました。
 子育ての大変さが分かっていても、私はここまで身軽には手助けできません。でも、少しの想像力と勇気で私も誰かを助けられるかもと心が軽くなりました。本当にありがとうございました。”(1月5日付け中日新聞)

 名古屋市の放課後児童支援員・森さん(女・32)の投稿文です。今年元日の「話・話」第2378話でもとっさの親切の話を書きました。今回もそんな話です。子供がぐずって困惑しているお母さんをとっさの判断で助ける。小さな子供を2人3人と連れているお母さんを見るといつも大変だな感じます。昔はそんな人はあまり出かけなかったと思いますが、最近はそんな訳にはいきません。核家族が多いし、外に出ないと用事が足せません。社会も整備が進み出やすくなりました。と言っても子供は周りには無頓着ですから元々大変なことです。周りの優しい目と対応が必要です。身軽に助ける、このことをいつも心がけたいものです。




2017/01/17(Tue) (第2386話) 親友と進む人生 寺さん MAIL 

 “親友とは保育所からの幼なじみで、向じ小中学校に通いました。高校卒業後はお互い就職し休日になるたびに会って、たわいのない話で盛り上がって笑ってきました。こんな私たちは去年、けんかをして約一年間、お互いの顔を見ませんでした。年が明けた一月、私は彼に心の内を話し、気持ちを伝え、和解することができました。
 その日から、また元のように頻繁に会うようになりました。楽しい時間を繰り返し持つようになれましたが、変わったことがあります。お互い、相手に遠慮をせずに話し合えるようになったことです。相手のためを思って、相手の良いところも、時には駄目なところも、素直に伝え合えるような関係こそが親友なんだと気付きました。
 十二月は私にとって特別な月です。私と親友は一日遠いで誕生日を迎えます。これからも、心から彼の誕生日を祝い、一緒に人生の段階を進んでいけることが楽しみです。”(12月31日つけ中日新聞)

 岐阜市の会社員・島戸さん(男・26)の投稿文です。親友とのけんか、そして仲直り、良かったと言うほかありません。自分から和解を言い出すのはなかなか難しいものです。島戸さんは親友とこのまま別れてしまうことが、残念でならなかった、その想いがこの勇気を出させたのでしょう。仲直りをしてしまえば、お互い必要な友と思っていればより親密になるのは当然です。「雨降って地固まる」とはこのことでしょう。
 人間一人では生きていけません。特に若い時は仕事のことや恋愛や結婚のことなど、次から次へと悩みが出てきます。親や上司など相談できる人もありますが、内容が限られてきます。逆に親や上司のことを相談したいことが多いのではないでしょうか。その時には信頼できる友人でしょう。まさに親友です。ボクも結婚では随分悩みました。その時頼ったのは友人です。その友人とは今でも付き合っています。今まで場合場合に応じていろいろな友人に助けられてきました。そんな友人を大切にしましょう。財産です。




2017/01/15(Sun) (第2385話) 喪中はがき 寺さん MAIL 

 “喪中のはがきが届く。誰が亡くなったか記載されていないはがきは気がかりでならず、気安く連絡を取れる相手にはメールや電話で確認する。数年前、故郷の同級生から「息子が交通事故で亡くなりました」と喪中はがきが届いた時は、どうしたらいいものか散々悩んだ。返事を催促する内容ではない手紙なら心穏やかになった時に読んでくれるかと思い、手紙を書くことにした。
 しばらくして届いた返事にはこう書かれていた。「手紙をいただきうれしかった。喪中のはがきを出したら、みんな心配して電話やメールをくれた。訪ねてきた人もいたけれど、まだまだ息子の死を受け入れられないから、ちゃんと対応できなくてつらかった。明美さんからの手紙に心が救われました」
 以来、同様のことに直面したら手紙を選ぶようになった。「哀」に寄り添いたい時、手紙は力を貸してくれると知った。”(12月30日付け中日新聞)

 愛知県清須市の主婦・仲吉さん(61)の投稿文です。「哀」からです。喪中はがきを受け取ったときの対応には悩むものがある。ボクは子供さんを亡くしたとか、特別と思われるときには後日手紙を出すこともあるが、多くはそのままである。先日投稿欄を見ていたら、喪中はがきは限られた親しい人に出すだけがいい、と言う意見があった。いろいろな考えがあるものと思った。
 年賀状も義理や年賀状だけの付き合いの人も多い。喪中はがきが年賀状の縁切れという場合もある。「今年限りで年賀状を失礼します」と言うものも届くようになった。社会から遠ざかれば年賀状も自然減っていく。ボクも最も多かった頃と比べれば半分以下になった。毎年、何枚買うか迷うことも多くなった。しかし、今は自分から出すことを控えることはしない、と思っている。今までくれた人には出す。出しそびれた人には後日でも出す。黙っていても自然減っていく。自分から減らすことはない。減っていくのは相手に任す。わが家は毎年妻と2人で川柳を載せている。ヒョッとしてこの年賀状を楽しみに待っていてくれる人があるかも知れない。今はこの姿勢である。




2017/01/13(Fri) (第2384話) 許せぬ詐欺 寺さん MAIL 

 “高齢者を狙う詐欺がますます巧妙化し悪質化している。許せない。私の知人でも、一人暮らしの高齢者が必要のないリフォームを業者に勧められて工事を繰り返してしまった。離れて暮らす家族が気付き、消費生活センターに相談してアドバイスを受け、事後処理に大変苦労されたという。
 高齢者の中には、他人の言うことを疑わず簡単に信用し、だまされたことにすら気づかない方もいるのだ。被害に気づいても「恥ずかしい」「迷惑をかけたくない」などの理由で、誰にも相談しない場合も少なくないようだ。
 「私は大丈夫。だまされないわ」という方こそ、注意が必要だ。家族や周りが日ごろ高齢者の様子を気にかけ見守ると同時に、高齢者本人の問題意識を高める必要もある。家族で詐欺の手口や被害について話題にし、不審な電話や訪問を受けたときの対応の仕方も話し合っていきたい。”(12月29日付け中日新聞)

 愛知県一宮市の嘱託職員・鵜飼さん(男・63)の投稿文です。今回は「怒」からです。詐欺には全く怒りを覚えます。最近は振り込み詐欺など詐欺のニュースが全く多い。詐欺の手口も増えた気がする。いろいろな対策がされている。今年に入って70歳以上の人が1年以上振り込みに使っていない通帳から10万円以上の振り込みができないようにした、というニュースもある。家にいると勧誘電話の多さにびっくりする。ボクが出るとつい話の相手をしてしまって妻によく叱られる。そこでボクは極力出ないことにしている。妻の対応を聞いていると全く見事にあしらっている。妻に出ていてもらえば当分は安心と思っている。しかしいろいろな詐欺にかかる多くは高齢者である。今やわが夫婦も立派な高齢者である。これだけ勧誘が多くては、いつかかるともしれない。その対応策は、鵜飼さんが言われる後半のまとめの部分であろうか。夫婦だけでは心もとない。子供達にも注意を払ってもらうように伝えねばいけないだろう。
 立派な高齢者と書いたが、高齢者を75歳以上とするという話が出てきた。高齢者というのはどんな意味合いであろうか。少し調べて見ると決まった定義はなさそうだ。元気な人だけを見ていれば、75歳どころか何歳でも全く元気である。でも男の健康寿命は71歳という。上げることのメリットデメリットをよく議論して欲しいものと思う。結構影響は大きいと思う。




2017/01/11(Wed) (第2383話) 病室で合唱 寺さん MAIL 

 “小学生のころから六十年余、私を頼ってくれた友人の通夜が秋にありました。会場入り口で友人の娘さんが走り寄り、こう話してくれました。「父は最後まであなたにメールを送っていました。手も動かなくなった最後の二回は私が代わりに打ちました。ありがとうございました」と。
 彼はがんの告知をされてからも、私が歌うゴスペルを会場に聴きに来てくれました。運転ができなくなってからは奥さんが送迎し「心が癒やされ、元気になれる」と喜んでくれました。
 彼が緩和病棟に入り余命が少ないと話すと、すぐにゴスペルの仲聞たち数人が集まって彼の病室に見舞いに行き「アメージング・グレース」を合唱しました。彼は動かすのが不自由になった手で拍手し、喜んでくれました。最高のプレゼントができたと思います。私のできることは、心から訴えるよう、元気が出てくれるようにゴスペルを歌うことです。”(12月28日付け中日新聞)

 愛知県岡崎市の会社役員・杉田さん(女・69)の投稿文です。中日新聞の投稿欄「発言」では、年末28日から4日間「喜怒哀楽」と言うテーマでの掲載がありました。その中から毎回1文を紹介したいと思います。28日は「喜」です。
 余命幾ばくもない親しい人の前で歌を歌い喜んでもらう。人に喜んでもらうことを自分の喜びとする、これはもう至上の行き方である。杉田さんはプロの歌手ではなかろう。素人が歌って喜ぶのは分かるが、死を前にした人が素人の人の歌を喜んで聞けるのは特別の気がする。関係が大きくものを言っているのだろう。「私を頼ってくれた友人」とあるので、長年かかってそういう関係になられたと思う。この関係を作られたと言うことがまた素晴らしい。人との関係で最も大切なのはまず家族である。自分や家族のためなら何でもできるという人は多かろう。人は家族と他人を切り分ける。他人となると親しい人でもかなり遠い存在となる。杉田さんの話はその他人との話である。人柄がこうした関係を作ってきたのであろう。




2017/01/09(Mon) (第2382話) 身辺整理 寺さん MAIL 

 “まだ早すぎると人には言われるが、元気な内にこそすべきだと、身辺整理を始めた。捨てられない性分の私が心にむち打つきっかけとなったのは、友人が涙目で語ってくれたおしゅうとめさんの遺品整理の話だ。友人は自宅でおしゅうとめさんをみとり、精いっぱいのことができたと思っていた。ところが、遺された品々を見て切なくなったという。自分のことは二の次の、つつましい暮らしぶりが浮かんできたようだ。
 その話を自分に置き換え、「遺すのは、子どもたちに『幸せな人生だったんだな』と思ってもらえるような物」と決めた。その視点で身の回りをチェックしてみると、捨てる決断は容易だ。半年ほどの作業で、身辺がずいぶんスッキリしてきた。これをキープしていきたいと思い、「誰かがステキと思って、引き継いで使ってくれそうな物だけ購入する」という基準を設けた。これは、衝動買いの抑止効果抜群だ。
 「とりあえず、とっておく」「なんとなく買ってみる」がなくなると、物理的にも心理的にも空間が広がる。そうして得たシンプルな暮らしで、心はとても軽やかだ。”(12月28日付け朝日新聞)

 愛知県刈谷市の主婦・藤井さん(63)の投稿文です。63歳でこの悟りと行動に唸ってしまう。残すものや買うものの基準も理解できる。こういう基準を持てば、判断はしやすいであろう。「シンプルな暮らしで、心はとても軽やかだ」と言われると、羨ましくも思う。しかしながら63歳はまだ早すぎると言われて当然と思う。まだ30年あるかも知れないのだ。しかしこの整理を死と結びつけるからそのように思うのである。生活習慣と捉えれば何の不思議でもない。理に適う基準である。
 身辺整理や終活とよく言われるが、死を身近に感じている人ならまだしも、その気配の無い人には難しいことである。置く場所のない人ならまだしも、ボクのようにいくつも空き部屋のある人には全く難しい。又もったいないで育った人には至難のことである。あったはずだと探すが、処分したと知って残念がることを度々経験すると、もう処分できない。これが今のボクである。妻が時々処分を促すが、死んだらまとめて処分してくれたらいいと、うそぶいている。しかし、生活空間の整理整頓は大切である。これは日常から怠ってはならない。わが家の日常の整理整頓はかなりできている方だと思っている。




2017/01/07(Sat) (第2381話) 家計簿 寺さん MAIL 

 “新しい家計簿を用意する時季になった。私にとっては五十七冊目。付け始めた時からずっと、婦人雑誌の付録の家計簿を使ってきて、今も愛用している。日記を兼ねているから、ここにはわが家の歴史のすべてが詰まっている。夫との昔話で食い違いがあると、私がすぐ「ちょっと待って、家計簿を持ってくるから」と言うので、夫は「分かった分かった」と降参するのだ。
 日記欄に書き切れないときは、別の紙を貼り付け書く。買い物をしない日でも、何も書かないという日はほとんどない。うれしいこと、悲しいこと、読み返すのもつらいような記録もあって、思い出はいっぱい。赤字の時も、黒字の時もちろんあった。内容が良くても悪くても、家計簿はいいもんだ。大好き。
 三日坊主の人が多いこともよく聞くし、最近ではパソコンで家計簿を付ける人も多いらしい。私は、至ってアナログ人間なので、そろばんとボールペンが落ち着く。家計簿は、しっかり付けていた母親譲りなので、妹も書き続けている。これまでの家計簿の処分に悩む年の暮れ。喜ばしいことをたくさん記せますようにと祈りつつ、やはり来年も書き続けようと思う。”(12月19日付け中日新聞)

 名古屋市の主婦・太田さん(78)の投稿文です。これはわが家の妻も結婚以来書いています。だからもう47冊が終わりになるでしょう。わが家は「明るい暮らしの家計簿」と言うもので、ズッとそれを使っています。毎日少しの余白があり、そこにメモ程度に書いています。ボクも毎日日記を書いているのですが、いつだったのかなどを知りたいときには家計簿の方が簡単に分かることがよくあります。そして妻は、そろばんと万年筆です。太田さんも多分結婚以来でしょう。10冊の差がありますね。妻には追いつけるように頑張って欲しいものです。もういろいろ処分の話がありますが、日記や家計簿など何冊あってもそれ程の場所を取るものではありません。あまり見ることはありませんが、これを処分したら過去を消し去ったような気分になるでしょう。生きている間は書き続け、取っておく。死んだらそのまま処分してもらえばいいのです。来年も書き続けましょう。大きなボケ防止です。




2017/01/05(Thu) (第2380話) 仕送りはがき 寺さん MAIL 

 “ 今月も、20歳の息子からはがきが来る頃だ。息子は京都で大学生活を送る。我が家には子ども部屋がなく、息子は高校3年と浪人時代の2年間、同じマンションに住む「バコちゃん」のお宅で、ほぼ毎日、勉強させてもらった。バコちゃんは88歳の女性で、一人暮らし。血のつながりはなく、このご時世にご近所というよしみだけで、息子が小さい頃からかわいがってもらった。
 おかげで息子は志望校に合格。恩人であるバコちゃんにお礼をせねばバチがあたる。そこで息子が下宿する際、「バコちゃんにはがきを書くこと。そうすれば仕送りをする。ついでに富山の両方の祖父母にも書く。そして入金後に父親にお礼を書く」と条件を出した。
 それ以来、息子は毎月、近況を書いたはがきを送ってくる。皆、はがきの到着を「もうそろそろだ」と心待ちにし、何度も読み返して頂いているよう。息子には小学生レベルの文章力を向上させる訓練にもなる。夫は、面と向かって言ってもらえない感謝の言葉を聞ける。
 恩人・祖父母・息子・私たち夫婦、すべてに良し! の仕送りはがき。息子の動向を把握できて、私もにんまりだ。”(12月17日付け朝日新聞)

 東京都の主婦・武隈さん(49)の投稿文です。仕送りをしている間、その度に手紙で近況を知らせる手紙を送らせる。これはまた有利さを活用した賢い知恵ですね。子供は手元を離れてしまえば、親の心配などどこ吹く風ともう疎遠になってしまう。子供は自分で育った気分になり、そしてしてもらことに慣れてそれも当たり前になる。また一度お礼を言えばいいと思ってしまう。これは何も子供に限ったことではありませんが。仕送りをネタに手紙の義務づけさせるとはいい知恵です。親の安心もありますが、本当は子供の為です。文章を書く力や習慣もできますが、自分を振り返る機会にもなります。感謝の心も育ちます。これも親心なのです。本当にすべて良し、竹隈さんはにんまりでしょう。
 ボクも先日、あることがあって墓参りを娘家族に約束させました。これも後悔させないように娘達を思ってです。本当は自分達が行くときに娘達も行く習慣をつければよかったのですが、怠りました。それに気づいて、いいチャンスと約束させたのです。先祖があって親があって自分があるのです。キチンとやってくれるでしょうか。




2017/01/03(Tue) (第2379話) 大事な人 寺さん MAIL 

 “仕事から帰った夫が「知人の女性にプレゼントせなあかんから買ってきたよ」と可愛い小さな紙袋をひょいとテーブルに置いた。変なことを言うなぁ。中身を取り出すと、きれいな紙に包まれた小箱に金色のリボンがかけてある。
 聞いてもないのに夫は「その人にはいつも世話かけてるんや。大事な人でね」。それなら、私に内緒で渡せばいいのに。「あのー、中を開けてみ。気に入るかどうかわからんけど」と夫。「大事な人に買ったんやろ?」と聞き返すと、「お前が俺の大事な人とちがうんか!」。
 え、びっくり。恥ずかしいやら、回りくどい冗談を真に受ける自分に腹が立つやら。照れ屋の夫にいつもこんな調子でだまされる。催促されて箱を開けると、革製のみかん色の財布が入っていた。実は気に入った。でもあまのじゃくの私はまたやってしまった。「何で買うたん? 財布はいっぱい持ってるよ」。受け流している夫は、お店で可愛い財布を見かけ、買ってきてくれたとのこと。
 「ありがとう」。自分の少ないおこづかいからプレゼントしてくれたのに、ごめんね。可愛い女になりたいわ。”(12月16日付け朝日新聞)

 和歌山県那智勝浦町の主婦・向井さん(63)の投稿文です。喜ばれることをしながら、それを素直に表せない。特に家族間でこれができない。もう何度も話題にしています。この習慣ができている夫婦や家族には全く不思議なことでしょう。わが家もできていない家族です。と言ってもできていないのはボクだけかも知れません。ですから何度も取り上げています。妻に贈り物などしたことがありませんから。
 向井さんのご主人は、何の機会にされたのでしょうか。そして回りくどい言い方をしながらも「大事な人」と告白しています。受け取った向井さんも素直に受けて取っていません。お互い慣れていないから、こんなおかしな話になるのでしょう。向井さんがこのまま終わったら「もう2度と買ってきてやるものか」となるのでしょうが、これだけ公に感謝の気持ちを表明されたら、ご主人はまた買って来ざるを得ません。夫婦はますます円満になります。投稿された向井さんにも敬意を表明します。




2017/01/01(Sun) (第2378話) 親切のバトンタッチ 寺さん MAIL 

 “愛知大に勤める梅村清春さん(六二)からの便り。通勤途中、名古屋駅地下街を歩いていたら、後ろの方から「お姉さーん、お姉さーん!」という高齢の女性の声が聞こえた。「どうしたのかな」と思って振り返ると、すぐ近くを歩いていた青年が「おばあさん、どうしたんですか」と近寄り、声を掛けた。息せき切って「前を行く若い娘さんのかばんから、この財布が落ちたんですよ。慌てて拾って追い掛けたんだけど、娘さんの足が速くて・・・」と言う。
 青年は「わかりました。僕がバトンタッチしましょう。任せてください」と言い、パッと財布を受け取り、顔を上げた。その瞬間、梅村さんはハッとした。青年に見覚えがあったからだ。教え子で今年入学したばかりのT君だ。向こうも、こちらに気付いたらしく「あっ、先生」と言い、お辞儀をしかけた。「あいさつはいいから、早く追い掛けて。頼んだよ」と言うと、T君は全速力で雑踏の中を駆けて行った。(後略)”(12月11日付け中日新聞)

 志賀内さんの「ほろほろ通信」からです。さて、その後どうなったのでしょうか。無事手渡しでき、喜んで頂けたと言うことです。しなければならないこと、できること、しかし、とっさの時にはなかなかできないものです。この場面はまさにそういった場面です。それも沢山の人がいる中です。まずは落とし物を見てもそのまま通り過ぎる人がほとんどでしょう。でも拾って係わり合いになれば、時間を取られます。人によっては会社に遅れます。高齢女性はそれをいとわれませんでした。そして混雑の中で大声を出すことです。人中でなかなか大声はでません。これもとっさながら大声がでました。聞いた青年がそれに答えた。雑踏の中をそれらしき人を探して追いかける。無事渡る。落とし物を渡すだけのことですからたいしたことでは無いかも知れませんが、それでもこれだけの幸運が必要です。良い人から良い人へバトンタッチされた結果です。
 落とし物でもゴミでも拾わなければ歩く人の邪魔になります。ボクは通り過ぎてしまって悔やむことがよくあります。とっさの行動が出なかったのです。気持ちの準備ができていないのです。常日頃の心がけの問題です。悔やむくらいなら行動に移すべきです。心がけたいと思います。


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