2015/09/15(Tue) (第2160話) 「ヨーコ」と呼ばれて |
寺さん |
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“結婚して32年。戦前生まれの夫は、私を「おい」と呼ぶ。戦後生まれの私は、それが嫌で、「私には、親からもらった名前があります」と反論していた。それでも、夫はいつも「おい」と呼び、何年も過ごしてきた。 それが、「ヨーコ」と、呼んでいることにふと気づいた。いつごろからかは、定かではない。子どもたちが独立し、長年介護をしてきた母が昨年102歳で天寿を全うし、夫と向き合う時間が増えた頃からのような気がする。 昨年は、78歳の夫と、新婚旅行以来、はじめて旅行した。お互い元気で動けるうちに、有意義な時間を過ごしたいと思ったからかもしれない。それが、正解だった。今年2月、夫は肺炎をわずらって体調を崩した。これからは介護の道を歩くことになりそうだ。夫には「ヨーコ」しか、頼れる人がいないから、名前を呼んでいるのかな、と思うとちょっぴり、いとしい気がした。出会ってから、初めての気持ちだ。朝のコーヒーをいれながら、そばでじっと持っている夫に「これからは、この気持ちを大切にしていきますからね」とつぶやいた。”(9月1日付け朝日新聞)
東京都の薬剤師・大西さん(女・68)の投稿文です。この文でまず気になったのは「昨年は、78歳の夫と、新婚旅行以来、はじめて旅行した」という所です。薬剤師と言われるので、薬局でも経営されているのだろうか。個人店を経営されていると長期の休みは全く取りにくい。それでも78歳まで夫婦の旅行をしたことがない、と言われるとその大変さを思うと共に、考えさせられてしまう。今ボクが思い出せる範囲で、夫婦で始めて遠出したのは平成3年の南九州である。40代半ばである。ツアーであったがこれが結構気に入ったので、その後毎年1回程度2泊3日位で遠出した。ここ数年は外国にも出かけている。このことを思うと大きな違いである。最近はいつ行けなくなるかも知れないと思って、より機会を多くしている。そして、大西さんは始めての旅行が最後になってしまうかも知れない。旅行の好き嫌いがあるかも知れないが、生涯を見通して考えたい。 名前を呼ぶことについては、この「話・話」で何度も取り上げた気がする。我々の年代は、テレからか素直でないからか、名前を呼ぶあう夫婦は少ない。ほとんどが「お父さん」「お母さん」である。ボクの夫婦もそうであったが、これは全くおかしいので数年前から止めにした。今では「お父さん」「お母さん」は子供の前以外では全くでてこない。
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