2015/03/01(Sun) (第2076話) 見慣れた景色 |
寺さん |
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“積雪がある寒い週末、その人はわが家の前の道端で絵を描いていた。翌週末も絵を描きに来ていた。たまたま自宅の二階の窓から見えた。温かい飲み物でも差し入れようと思ったら、帰る支度を始めた。絵の道具を丁寧に片付け、手際良くまとめた荷物を持つと、描いていた景色の方を向いて直立し、ゆっくり深く一礼した。そして、別れを惜しむかのように景色を見ていた。 その人の一礼には、いろんな思いが込められているように感じた。その人のおかけで、人にだけではなく、物や場所に対する感謝の気持ちも教えてもらえた。二階から見ていたことが申し訳なく思えた。 表に出て、その場所に立ってみた。見慣れたいつもの景色だ。四方が山に囲まれている。おまけに今季は雪が多くて、うんざりしていた。そんな時に、絵を描きに来たその人のおかげて、見慣れた景色がいとおしく思えた。四季を肌で感じ、景色で感じることができる場所。ここで暮らせることに感謝し、毎日を大切に過ごそうと思った。 その人のまねはできないけれど、私も生活の中で人・物・場所に対して一礼ができるようになりたい。この次、その人に会えたら、一礼してお礼の気持ちを伝えたい。そして、描いた絵を見せてくださいとお願いしよう。”(2月10日付け中日新聞)
長野県大桑村の会社員・早川さん(女・50)の投稿文です。絵を描く、そしてその対象物になる自然物に対して感謝の頭を下げる。絵が描けないボクには分からないことであるが、そんな気にさせるのであろうか。ありがたい気持ちは起きても頭を下げるところまでなるのはこの人だからであろう。感謝の気持ちを持つ、そしてそれを態度で示す。大切なことである。 早川さんにしたら見慣れた風景が、人によっては頭を下げるほどに尊い風景に見えることに、改めてその有り難さを教えられた。住んでいる人にはなかなか気がつかないこともある。人の振りで気づかされることもある。どうせ離れられない土地ならば、少しでも良さを見つけて愛着を持って過ごしたい。「住めば都」である。必ず良さがある。 ボクはどうか。災害の心配も少ない、交通の便はいい、風光明媚とは言えないが回りは田畑、自然の中である。ありがたく思っているが、ただその環境も近年非常に悪くなってきている。
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