2014/12/08(Mon) (第2038話) 急がば回れ |
寺さん |
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“「息子はこんなに練習しているのに、なぜあの子に勝てないのか。もうやめさせたい」。最近、ある地域の柔道教室で、少年選手の親が指導者に向かって、こう言ったらしい。言われたベテラン指導者は「昔はこんなことを言う保護者はいなかった。そもそも、試合に勝つことだけが目的じゃない」と困惑し、子どちたちが目先の勝ち負けにこだわり過ぎることへの弊害を心配する。武道なのだから、試合結果だけでなく礼儀や所作の美しさにも価値を置く。そう思っていただけに、門外漢の私も驚いた。 この話を聞いた同じ日に、青色発光ダイオード(LED)を発明した日本人三人のノーベル物理学賞受賞が決まった。新聞には「停滞は実験につきもの」「失敗千五百回」「根気よく」と名城大の赤崎勇教授らの言葉が紹介され、長年の苦労の一端がうかがえた。もし、三人が早々に「成果が出ないからやめたい」と投げていたら、新世紀を照らす大発明は生まれなかった。 急がは回れ。目に見える手っ取り早い成果を追わず、別の価値を信じて耐えることの大切さを、別々の話から学んだ気がする。偉人たちだけの話ではない。(11月20日付け中日新聞)
「ぺーぱーナイフ」という記事欄からです。今の世の中、実力主義、成果主義を礼賛している。客観的に評価できるもので価値を決めている。礼儀や所作はなかなか評価できない。その流れがこのような話になるのではなかろうか。 実力や成果に見合った見返りを出す、非常に理に適い、納得しやすく思える。しかし、これを喜べるのはほんの5%、10%の人であろう。誰もが自分を高く評価しがちである。その結果ほとんどの人が評価に不満を覚える。そしてこれはまた短期決戦を強いる。赤崎教授らが言われることはますます難しくなる。またできる人とできない人の格差を大きくする。例えば勤労者の話になれば、生活が保障されての上の格差であればいいが、そうでなければ生活できない人を多く生む。それが進んでいるのが現在の社会ではなかろうか。社会はいろいろな実験を経ていく。他国のよい制度を取り入れようとするとき、その国の他の制度や習慣もよく見なければいけない。企業等の都合のよい部分だけを取り入れた実力主義や成果主義の社会がどんなことになるか分かってきたと思う。ボクはそろそろ見直す時期ではないかと思っているが、現実はますます進んでいるのである。
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