2014/11/10(Mon) (第2024話) 思いやりの上着 |
寺さん |
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“御嶽山の噴火で死亡した愛知県豊田市の小学五年、長山照利さん(11)が発見時に着ていた登山用ジャケットが二十二日、持ち主で同じ噴火で亡くなった横浜市中区の会社員近庄屋洋さん(26)の遺族に届けられた。近江屋さんは噴火直後、長山さんと別の女性と三人で岩陰に隠れ、女性を介して長山さんにジャケットを着せたという。 長野県警の警察官が同日、横浜市栄区の近江屋さんの実家を訪れ、両親に手渡した。ジャケットを手にした近江屋さんの父親(65)は「息子のものと確信しました。切迫した状態の中で、息子が女の子を守ってあげようとした勇気を褒めてあげたい。二人とも生還できなかったことは、本当に残念で残念でなりません」とコメントした。 近江屋さんは発見時、薄いジャンパーとTシャツ姿だったといい、父親は「寒くなかったのかな。頑張ったねと言ってあげたい」と話した。長山さんが大人サイズの緑色のナイロンジャケットを着ていたため、長野県警が持ち主を捜していた。 長山さんの父幸嗣さん(44)は「自分のことで精いっぱいの状況で、上着を着せてくれたのは本当にありがたい。照利は人一倍、臆病な子だったので、そばに大人がいてくれたのは心強かったと思う。感謝の言葉しかありません」と話している。”(10月23日付け中日新聞)
記事からです。御嶽山噴火のニュースには驚いた。その予兆になるニュースはどこにもなかった。こうした大きな噴火になる前には関係者から何かの警告が発せられるものと思っていた。人間にまだそこまでの予知科学はなかったのである。自然に対して人間の知識などまだ微々たるものである。 そして、多くの犠牲者が出た。そしていろいろなドラマが生まれた。御嶽山はボクの家からも見える。愛知県に近いだけに愛知県の被害者も多い。この話もその一つである。横浜の青年が豊田市の女子小学生にジャケットを貸してあげた。でも共に亡くなってしまった。貸すとき、青年はどこまでの結果を想定しただろうか。今では分からないことだが、いずれにしろこの切羽詰まったときに人を思いやる気持ちは尊い。悲しい中にも嬉しい話である。 人間にとって一寸先は闇である。1秒先のことも分からない。しかし、自分の予知を信じて生きている。その予知には自分の意に反することはあまり含まれない。悲観的に生きるより楽観的に生きる方がいいのかも知れないが、等分にやって来ることを忘れてはならない。
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