2014/06/04(Wed) (第1951話) 娘のはがき |
寺さん |
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“「お母さん、今日のはがきは、何だって?」。ベッドの上からこう尋ねることが日課になって、まもなく一年になる。長野県根羽村坂町の坂巻亮さん(八八)。村の公民館長を務めた後、悠々自派の生活を送っていた六年前、持病の糖尿病が悪化した影響で、両目の光を失った。それからは、妻すみさん(八九)の介護を受けながら、一日のほとんどをベッドの上で過ごしている。 そんな夫婦二人暮らしの元に、昨年五月末、名古屋市北区に住む長女の井戸勝子さん(六三)から一通の絵はがきが届いた。「昔、お父さんから頂いた絵はがきがいっぱいあるから、これから毎日、日記代わりにはがきを投函します。できるかぎりだよ」はがきは約束通り、ほとんど毎日。内容は、早朝のラジオ体操に行った時に桜がきれいだったこと、亮さん夫妻にとってひ孫にあたる三歳の孫が「おんぶして」と甘えることなど、ほとんどが身辺雑記。これをすみさんが亮さんに読み聞かせる。 すみさんは「特別なことがあれば電話がすぐに通じるのに、わざわざ毎日はがきをくれる。お父さんと私のふれあいの時間をつくってほしい、と願う勝子の思いやりの気持ちがうれしい」。亮さんは「毎日、いろいろなことを伝えてくれる勝子のはがきは、とても楽しみ」と笑顔を見せる。これまでに寄せられた三百通を超すはがきは一通も欠くことなく、夫妻の宝物になっている。”(5月12日付け中日新聞)
「虹」という欄から飯田支局・須田さんの報告です。少し長いですが全文を載せます。老いた両親に毎日ハガキを出す、またまた良い話だ。これが両親の触れ合いにも役立っているとは、副次効果も大きい。父親からもらった絵はがきを使うというのも面白い。この絵はがきは父親にも思い出の品であろう。思ってもいなかった展開になり、感無量であろう。 老夫婦だけの家庭は珍しいことではなくなった、と言うよりそれが普通になった。我が町内を見ても、2世代、3世代が同じ屋根の元に過ごす家庭は少なくなった。一昔前はそれが普通だったが、大きな様変わりである。老夫婦だけの場合、長寿命になっただけにより大変だ。更に1人が亡くなると1人住まいになってしまう。本人だけではいくら頑張っても限界がある。その高齢者をどうやってフォローしていくのか。家族にとっても社会にとっても大きな問題だ。マスコミも毎日のようにどこかで取り扱っている。そして社会と言ってもまず家族であろう。家族の気遣いが一番嬉しい。坂巻さんの嬉しさがよく分かる。人生終わってみるまで分からない。
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