2013/11/26(Tue) (第1863話) 昔はよかった |
寺さん |
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“わが身の不明を恥じている。以前、電車の中で化粧をする女性がいつごろ出現したのかについて触れた。20年ほど前の本紙に、近ごろ多いとの投書が載っていると報告した。それどころではなかった。驚いたことに、1935年6月の本紙にあった。電車や人混みで顔をはたき口紅を塗る女性をよく見かけるが、感心しない、人の見ない場所でしなさい、と。実は戦前すでに珍しいことではなく、年長者は眉をひそめていたらしい。お年寄りや重い荷物を持った人に電車の席を譲ろうとしない青年をとがめる文章もある。眠るふりをしたり、読んだ新聞に再び目を落としたりという描写は今日でも通用しそうである。37年4月の本紙だ。こうした事例を集めて一冊の本ができた。コピーライターの大倉幸宏(ゆきひろ)さん(41)による『「昔はよかった」と言うけれど』。現代日本のモラルの低下を憂える声に疑問をもった。戦前はこんなではなかったって本当か、と。5年かけて材料を集めた。古きよき時代を懐かしみ、今時の若い者を嘆く。人の世の歴史はその繰り返しだろう。昔はよかったとは往々、印象論か個人的な感慨にとどまる。過去への幻想や錯覚をもとに「取り戻せ」と唱える危うさを、大倉さんの本は指し示す。(後略) (11月12日付け朝日新聞)
天声人語からです。この大倉さんは娘と小学校からの同級生であり、ボクの家の全く近くに住んでいる。ボクはこの記事が出る前に、その母親からこの本をもらって読んでいた。この天声人語でも紹介されているが、昔も今と全く同じような言葉がたくさん紹介されている。 ボクは昔の方が良かったとはほとんど言ったつもりはない。それどころか、今の方がどれだけ良いか、これはたくさん言ってきた。こんなに豊かな時代はなかったし、豊かな国もない。貧しい時代には人間性も貧しいのが当然である。不道徳なことも多かったろう。ごみポイ捨て、不法投棄、子供の虐待、もっと大きな事件でも、昔に比べ少なくなっただけに目立つ気がする。昔を美化してはいけない。今の時代を自信を持って過ごし、それでも悪い点は直していかなければいけない。
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