2012/12/23(Sun) (第1702話) 粋な計らい |
寺さん |
|
“名古屋市西区の森茂伸さん(六〇)は目が不自由で、通勤はもとより外出するときには白いつえが手放せない。しかし、休日には精力的にイベントや旅行に出掛ける。中でも夫婦で温泉へ行くのが一番の楽しみという。その森さんの知り合いで、弱視の女性Aさんの話。Aさんも温泉が好きで、全盲の女性の友人と温泉に出掛けた。宿に着くと早速お風呂へ。誰も入っていなかったので、二人で湯船に漬かって話が弾んだ。 しばらくして、宿の従業員が入ってきた。「ここは男風呂ですよ」と言われてびっくり。二人とも目が不自由なので、入り□を間違ってしまったのだ。聞けば、後から男性客が脱衣室に入ってきたところ、浴室から女性の声が聞こえてきた。男風呂であることは間違いなく、そのまま入っても問題はないかもしれないが、この男性は引き返してフロントに知らせてくれた。 実は以前、森さん自身も危うく女風呂に入りそうになったことがあり、人から注意されて冷や汗をかいた。障がい者のために、ずいぶんバリアフリーの建物が増えたが、浴場の入り□に男女の区別を知らせる点字表示がなされたホテルは皆無に等しいという。 さて、二人の女性が慌てて上がろうとすると、従業員にこう言われた。「このままゆっくり入っていてください。準備中という札を掲げておきますから」と。先程の男性客も事情を知り、二人が上がるまで風呂に入るのを待っていてくれた。申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、好意に甘えさせてもらった。粋なはからいに、心まで温まったという。”(12月2日付け中日新聞)
志賀内さんの「ほろほろ通信」からです。何と粹な計らいであろう、何と機転の利いた計らいであろう。いい従業員、いい宿である。障害者のバリアフリーカーはいろいろ図られているが、それでもいくらやっても十分とは言えず、障害者にはいろいろな間違い、分からないこともあろう。大目に見ると共に、助力も必要である。浴場の入り□に男女の区別を知らせる点字表示がなされたホテルは皆無に等しいといわれるが、ホテルの構造は様々であり、点字をつけてもそこまで行き着かないであろう。従業員に申し出てもらい、そこまで案内する方が一番手軽いのではなかろうか。 先日小学校の同級生6名で安曇野のあるホテルに泊まった。玄関で靴を脱ぐのである。今はほとんどのホテルが靴を脱ぐのは部屋に入ってからである。皆帰るときに部屋で靴を探していたのには笑えてしまった。それくらい一般化しているのである。ところが玄関に行ってこの利点が分かった。靴が磨いてあり、消毒がしてあるのである。部屋置きであったらこんなサービスはできない。またホテルの中を靴で歩かないので汚れも少なかろう。これも粋なサービスと言えよう。
|
|