2012/11/19(Mon) (第1688話) キンモクセイの香り |
寺さん |
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“夫が突然亡くなってから七ヵ月ほどたちました。二年前、庭の片隅に植えたキンモクセイが花を咲かせ、甘い香りを漂わせています。幹も枝もまだ細いのですが、十数本の枝にだいだい色のかわいらしい四つの花弁をつけています。どこか頼りなさそうですが、香りはよそさまの立派な木と同じように甘くてさわやかです。 西尾市では、子どもが生まれると「恵みの木」、結婚すると「愛の木」といって、好きな木を選ぶことができる贈り物があります。わが家では三人の子供が生まれた時は「恵みの木」を植えましたが、「愛の木」は植えるのを忘れていました。 そこで結婚二十四周年の時、キンモクセイを「愛の木」として選び、二人で庭に植えたのです。銀婚式はもちろん、金婚式の時も夫婦そろって見たいと思っていました。夫は銀婚式を迎えた時、背丈が伸びたキンモクセイは見ましたが、花は見ることなく他界してしまいました。 庭のキンモクセイは夫の分身のように思えて仕方ありません。これからも毎年秋が来て甘い香りに包まれるたび、夫との幸せいっぱいだった二十五年間を思い出すでしょう。”(11月7日付け中日新聞)
愛知県西尾市の主婦・山崎さん(51)の投稿文です。前回に続いて早い配偶者の死に関わる話です。山崎さんの場合はご主人の死です。結婚記念日にご主人と一緒に植えたキンモクセイがご主人の分身と思え、その思い出を大切にしていこうという。キンモクセイを見る度に、その香りを嗅ぐ度に哀しい中にも心が安まる時間でしょう。悲しさに耐えられず、それを乗り越えるために思い出の品を処分する人もあるようです。思い出の品を大切にする人、処分する人、様々なのも人間なのでしょう。いずれにしろ、生きている限り、その死を乗り越えていかねばなりません。 西尾市は子どもが生まれると「恵みの木」を贈り、結婚すると「愛の木」を贈るとは味なことをしているものです。家族の絆作りに大いに役立っているでしょう。我が市では小学入学記念に木や花の苗が贈られています。長女の時には市の花であるキキョウを、次女の時には市の木であるクロガネモチをもらいました。共にまだ健在です。いろいろな市町でこんな記念樹が贈られ、思い出作りに役立っているのでしょう。 以前にも何度も書きましたが、ボクが意図しないところで同じような話が続くことにびっくりします。今回などスクラップするときは全く気づかなかった。書き始めて同じ文章ではないかと改めて確認しました。
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