2011/08/11(Thu) (第1485話) 娘だけの家の墓 |
寺さん |
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“現代では、子どもが「娘だけ」という家族は多い。その娘が結婚して夫が長男というケースも、少子時代にはざらにあるだろう。この娘だけの家の墓は誰が守るのか。 実は私の生まれた家族も、「両親に姉と私」という家族構成。三十年前、母が亡くなり墓を建てることになって、問題が起こった。長男と結婚した娘が実家の墓を継いだとしても、娘の子の代になると母方の墓まで継承できず、無縁化するというのだ。三十年後の今、継承者の性別はさほど問われなくなったが、当時、戦後の教育を受けた私にはとうてい受け入れがたい事実であった。 学んでみれば、民法にも「娘では墓を継げない」とは書いていない。「墓には継承者がいなければいけない」という条文もない。問題は、父系男子で家を継いできた戦前の「家」意識が、墓地に関する法律や使用規則等に色濃く残っている点である。日本の墓は継承者が必要で、その人が管理料を払う限りにおいて永続使用できるが、継承者が絶えれば無縁墳墓として片付けられるのである。 少子高齢化、核家族化、生き方の多様化が進んだ現代社会で、どれだけの人が代々継承者を確保できるというのか。「家」意識の残存による、永続規範に支えられた墓の継承制が、いま制度疲労を起こし人々を縛りはじめた。”(7月26日付け中日新聞)
「紙つぶて」という欄から東洋大の井上治代教授の文である。墓にもあまり興味のなかったボクであるが、今年地元霊園の管理委員長を仰せつかってこのことに多くの時間を費やしている。そして、考えさせられることも多くなった。 日本の慣習が次から次へと変容を見せているが、お墓などと言うものは最も長く残る日本の慣習だろうと思っていた。ところが管理委員長をやってみて分かったのは、近年毎年10件近くの墓地返還者が出ていることである。継承する人がないのである。全部で700区画程度の霊園であるが、返還する人もあれば購入する人もあるので今のところ20区画位の余りであるが、今後どのようになるであろうか。少子化がこんな所に大きな影を落としていたのである。 ボクの家庭も筆者と同じである。娘2人は相手の姓を名乗っている。我が家の墓には3代7人の墓碑銘が記されている。このことについてまだ娘と話したことはないが、近くにいるので面倒を見てくれるだろうと勝手に思っている。お墓のあり方についてよく考えていかないと無縁仏ばかりになってしまう。
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