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第83号  2011年3月

2011/03/30(Wed) (第1427話) 鏡台の椅子 寺さん MAIL 

 “今年の11月4日は20回目の結婚記念日になる。それを記念して今年を「記念イヤー」と決め、家族で様々な体験などをする企画の検討に入った。
 まず目に入ったのが寝室の鏡台セットだった。妻の嫁入り道具のひとつだ。本体は作りもしっかりしていて現役だ。だが、セットになっていた椅子は座面と背面の張り布がすり切れ、座れる状態ではなく現役を引退している。お陰で椅子は代用品で我慢していた。セットの椅子も使わなければ邪魔になるだけだ。修理するか廃棄するかの選択に迫られていた。でも妻にとっては親がそろえてくれた思い出のひとつだ、と修理の道を求めた。
 早速インターネットで検索したら、名古屋市が開いているリサイクル講座があることが分かった。夫婦で「椅子の布張り替え教室」に参加した。参加する前に指示された布やスポンジなどを買い込んで出かけた。職員やボランティアの方の協力もあって廃棄寸前の椅子は3時聞で見事に蘇った。
 業者に修理してもらうのとは違い、夫婦共同の手作業で蘇った椅子には愛着がわいた。少々くたびれてきた夫婦の関係も、この作業で再生された気がした。この椅子を20年後?再び修理できたらどんなに幸せだろうか。”(3月2日付け朝日新聞)

 名古屋市の高校教員・山本さん(男・51)の投稿文です。結婚20年で、結婚記念イヤーとは味な発想である。そして、その最初が嫁入り道具だった鏡台の椅子の張り替えとはまた味なことである。それを夫婦でするのだから、何とも息のあった夫婦である。ボクにはただ脱帽である。
 山本さんの発想で行けば、僕ら夫婦は今ちょうどルビー婚式イヤー中である。山本さんのちょうど倍である。この1年は外国旅行と思ってきた。すでにイタリア、カンボジアと行った。これをルビー婚式記念と考えよう。このイヤーは10月まで続く。あと半年ある、まだ行けるだろう。次の計画を立てねば。




2011/03/28(Mon) (第1426話) 自転車の整頓 寺さん MAIL 

 “私は電車を使って学校に通っている。私が毎朝乗る駅は無人駅である。でも、その駅の自転車置き場には、一人のおじさんが立っている。そのおじさんは、いつも自転車の整頓をしている。私は電車通学になった最初のころは、整頓をしていることに何も思わず、当たり前のように自転車を止めていた。
 だが、おじさんの立っていない休日に自転車を止めようとしたとき、自転車置き場がぐちゃぐちゃであることに驚いた。自転車置き場の入り□をふさぐように置いてある自転車や、堂々と横向きに置いてある自転車がたくさんあった。この時、私はそのおじさんに対して感謝の気持ちでいっぱいになった。そして、おじさんが整頓していなくても、きれいにそろえて並べることを心がけるようになった。
 私だけではなく、自転車置き場を利用する人はきれいに並べることを心がけてほしい。それに感謝の気持ちを持ってほしい。”(3月3日付け中日新聞)

 愛知県刈谷市の高校生・佐藤さん(女・16)の投稿文です。駅で自転車の整理をしている人がいる箇所は結構ある。ボクの乗る駅もそうだ。こういう人がいて綺麗になり、多くの自転車も停められる。そして佐藤さんが言われるように、こういう人がいない日はすさまじいものだ。人が通れないほどにはみ出している。佐藤さんはよいことに気づかれ、良い心がけを持たれた。一事が万事である。自転車のこの気遣いからいろいろな気遣いができるようになるであろう。
 それにしても自転車の横暴はすさまじい。このような自転車の放置や歩道の人がのけとばかりの運転、車道の無理な横断、車の指導より自転車の指導の方が必要という気さえする。車には運転免許が要り、罰則もある。自転車にも同様の対応が必要な気がする。




2011/03/26(Sat) (第1425話) 高年大学 寺さん MAIL 

 “卒業シーズン到来の三月です。それぞれの思いを込め、晴れの日を多くの人が待ち望んでいると思います。
 夫はこの春、七十二歳にして何年ぶりかの卒業式を迎えます。定年を機に二年前、仕事一筋だった夫は家族に背中を押され、高年大学へ入学することができました。倍率の高い抽選にも見事に当たり、晴れて二年間の学生生活を送ることになりました。最初は慣れない生活にとまどい、少々きつかったかと思いました。「オレ、もう行きたくない」と登校拒否を宣言されたら・・・、と思いながら、お弁当を作って送り出しました。
 体育祭に文化祭、修学旅行など多くの行事をこなしながら、楽しい学生生活をおう歌するまでになり、気の合う学友にも恵まれました。文化祭の舞台の上で演技する夫の姿を初めて見て、私にとっても良い思い出となりました。ありがとうです。晴れの卒業式を頑張った夫と共有したいと思っています。”(3月2日付け中日新聞)

 名古屋市の主婦・笹山さん(68)の投稿文です。家族に背中を押され高年大学に入学し、本人も家族も頑張り無事卒業式を迎えられた。笹山さんに、ご家族に「おめでとう」の言葉を贈りたい。70歳にして弁当を持って学校に出かけ、再びの青春であったろう。高齢者にこういう過ごし方もあるのだ。ボクの知人にも今年1年、自然環境を学ぶ教室に通った人がいる。今は元気な高齢者も多い。無為に過ごすのは本人も社会も得策ではない。「倍率の高い抽選にも見事に当たり」とあるが、これこそ入学したい人は誰でも入れるようにして欲しいものだ。
 ボクも4月から会社勤めを週3日にしてもらった。今までに比べ少し余裕ができる。この時間を何に当てるか、考えねばならない。




2011/03/24(Thu) (第1424話) 民生委員の苦労 寺さん MAIL 

 “今までこの欄で民生委員の大変さを目にしてきたが、人ごとのように思っていた。ところがわが身に降りかかり、聞きしに勝る大変さを実感している。
 活動を始めて三ヵ月。毎回たくさんの資料を説明される福祉課の方との協議会、独り暮らしの高齢者の方へのお弁当の注文に配食、高齢者宅への訪問、地域行事への参加などを体験してきた。しかし、相手からの連絡を待っているだけでいいのか、動くとしたらプライバシーの侵害にもなりかねないので、どこまで介入していいのか、気持ちが揺れ動く。
 それに何より民生委員の仕事と自分の楽しみ事(器楽、伊勢型紙、絵手紙など)のはざまで、心は大きく揺れ動いている。引き受けたからには三年間の任期、責任を果たしたいと思っているが、ほかからこの地に移り住み、担当地区の様子もあまりつかんでいないのにできるのだろうか。不安の方が大きい。”(2月26日付け中日新聞)

 岐阜県各務原市の五藤さん(女・68)の投稿文です。五藤さん、ご苦労様、民生委員の方のご苦労も計り知れないものがある。やって始めて実態や苦労が分かるのがほとんどのことである。いろいろ体験することは人の成長に重要なことだ。68歳もまだまだこれからだ。民生委員もやり手がなくてかなりの定員割れを起こしているようだ。
 ボクには役所の合理化、経費削減によって地域役員の負担が大きくなっている気がしている。住民の声を聞くという美名の元での負担もあると思う。それだけに誰でもいいという訳にはいかない。当てられた人は仕事に影響が出たり、時には辞めざるを得ないことも生じている。役員になりたくなくて町内会を脱退する人が増えているとも聞いた。少々の経費が出ていることがあってもあくまでボランティアである。解決策のひとつは多くの人で分担し、一人当たりの負担が少なくなるようにするのも方策であろう。
 人間関係が疎遠になっている。少子高齢化社会にもなっている。個人情報保護のこともあって住民のことが益々分からなくなっている。それだけに住民の係わりは大切なことである。ボランティアの役員では対応しきれない。役所がもう少しサポートしないと結局は役所に戻っていくことになりかねない。
 実はこの4月からの役員で、ボクに大役の噂が流れ、会社勤めをしていてできないからもう数年待って欲しい要望を伝え、免れた経緯がある。ボクの家は妻も含めもうかなりの役をこなしているが、この3、4年は地元と向き合う正念場と思っている。




2011/03/22(Tue) (第1423話) バレンタインデー(その2) 寺さん MAIL 

 “バレンタインデーの2月14日は、私の誕生日である。子供のころから、私が誕生日を教えると、いつも相手はほほ笑んですぐ覚えてくれた。
 32回目の誕生日となった今年は、これまでとは違う感覚を昧わった。子供ができて、初めての誕生日だったからだ。昨年8月、家内の出産に立ち会った。無事に出産を終えるまでの家内の苦しんだ様子を見ていて、きっと母も同じようなつらい思いをして、私を産んでくれたのだと思った。32年前の2月14日の母の頑張りに感謝しなければならないと考えた。
 そこで、先日のバレンタインデーに、私は神奈川県に住む母親にメッセージカードを添えて花を贈ってみた。突然なので驚いたと思うが、母には喜んでもらえた。これまで、成人式を迎えた時、一人暮らしを始めた時、社会人になった時など様々な場面で親のありがたさを実感してきたつもりだったが、子供を持って改めてそれを一番重たく受け止めた。
 来年以降もバレンタインデーは、母親に感謝する気持ちを再確認する日としていきたい。”(2月27日付け朝日新聞)

 名古屋市の会社員・磯貝さん(男・32)の投稿文です。前回は奥さんからご主人へ、今回は息子さんから母親へ、いろいろなバレンタインデーがあるものだ。
 「子を持って知る親の恩」とはよく言ったものだ。普通には子供を育てながら、その苦労を実感して知る親の恩であろうが、磯貝さんは奥さんの出産を見ながら母親に感謝の気持ちを起こされた。早い気づきである。磯貝さんは悔いのない親孝行ができるであろう。そして奥さんにも感謝されるであろう。バレンタインデーは女性から男性へ贈るものとされているが、感謝の気持ちを現すのに時も場所も関係ない。




2011/03/20(Sun) (第1422話) バレンタインデー(その1) 寺さん MAIL 

 “毎年、長男と主人にささやかだがチョコレートをみつくろってプレゼントしていました。お返しなどもらったこともなく、おいしそうなチョコレートを買ってきては、長女と2人で「少しちょうだいね」と言いながら味見をしていました。
 そんな主人は、昨年秋、突然亡くなり、もういません。でも私は今年もチョコレートを買いました。1月の結婚記念日にケーキを買ったように……。
 口数の少なかった主人ですが、私は今さらながらに、もっともっと、おしゃべりをしておけばよかったなあと思います。今も泣きながらペンを走らせています。バレンタインの14日は、主人の誕生日なのです。今年は少し奮発して、おいしいのを選んで写真の前に供え、おいしいコーヒーでもいれて、味見をしたいと思うのです。”(2月24日付け朝日新聞)

 大津市の主婦・高岡さん(61)の投稿文です。震災の影響はまだこれから延々と続きます。時折話題にしながら平常の話題に戻していきます。そして、バレンタインデーの話題とはホワイトデーも過ぎ、かなり時期遅れの話となりましたがUPします。
 世間ではバレンタインデーでとなると何かと喧しいが、歳を経ると共に縁遠くなっていく。まあ、そうなっていくのが自然の姿であろうが・・・・。そんな中、高岡さんの家では奥さんがご主人にずっと贈ってこられた。これは平和な家庭の姿であろう。そして、その恒例の行事も早々にできなくなってしまった。でも、こうして語れる思い出があって、少しは慰めになるであろうか。人間60歳も過ぎると、いつどうなるか分からない。今回のような災害もある。ひとつひとつの行事、思い出を大切にしたいものだ。
 ボクももう長いこと妻しかくれなくなった。それもクリスマスプレゼントのように、ボクが寝た後机の上に置いてある。もちろん愛の言葉などなく、かわいそうだからと言うのが言いぐさである。そして、お返しをしないのも高岡さんと同じである。褒められたことではないか・・・・。




2011/03/18(Fri) (第1421話) 東日本大震災(その3) 寺さん MAIL 

 “最悪の大震災が起きてしまいました。政府には対策が後手に回らないよう、的確で素早い行動を求めます。各国からの支援の申し出も心強く思います。被災された人々のために簡易トイレの設置や寒さ対策など、温かい手を差し伸べていただきたいです。
 停電が続けば不安も増すでしょう。阪神大震災のときのように、近隣住民が協力し、この困難に立ち向かってください。まだ余震が続いています。関係者は安全な場所への避難・誘導に万全を期してください。住民が冷静に行動するには正確な情報提供が必要です。被災住民が今知りたいのは、自分たちがどんな状態に置かれているかということです。時回がありません。命にかかわります。報道機関は被害状況や行方不明者の情報をできる限り細かく知らせてください。”(3月14日付け中日新聞)

 愛知県春日市の主婦・田中さん(47)の投稿文です。田中さんの願いはどれも穏当適切だと思います。本当にそう願ってやみません。
 過去経験のない、また想定外の大震災です。対応する人も多くは初めてのことです。いろいろ助言や要望することはいいのですが、批判は止めましょう。例え以前の対策がまずくてもそれを言うのは止めにしたいものです。今の批判は何も生みません。萎縮して事態を更に悪くするのが落ちです。反省は落ち着いてからにすればいいのです。今は対応する人に勇気と元気を持ってもらうことです。テレビの出演者等にボクの主張が届かないのが残念です。




2011/03/16(Wed) (第1420話) 東日本大震災(その2) 寺さん MAIL 

 “【ニューヨーク】十二日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは「不屈の日本」と題した社説を掲載。「母なる大地の急襲を切り抜けるため、日本人がどれほど立派に備えてきたかを指摘せずにはいられない」と、日本の地震対策をたたえた。
 社説は「日本を襲った規模の地震ではいかなる国も傷から逃れられない」とし、「その被害にもかかわらず、人口ー億二千六百万人の島国が大地震に適切に対応している」と評価。一八九一年の濃尾地震をきっかけに耐震建築を進めた経緯や、二〇〇七年導入の緊急地震速報などを紹介し、「他の地震国にも日本に似た警戒システムの開発、導入を期待する」と指摘した。
 一方、最近の日本の情勢について「経済成長の低迷や政治家の不手際が、高い生産性を誇る多くの国民を困惑させている」としながらも、「間違ってはならない。日本は今も偉大な産業力を有している」と強調した。
 【台北】「緊急事態に直面してもいつもの笑顔と礼儀を忘れない」。十三日の台湾紙聯合報は、震災後一夜明けた東京が眠そうな目をした「帰宅難民」であふれながらも混乱のない様子をルポし、「先進国の尊厳を保持している」と称賛した。
 記事は、携帯電話の不通で公衆電話に殺到した人々が整然と順番を待つ様子を紹介。NTT東日本が無料サービスで応じたとした。また「道路は大渋滞になったが誰もクラクションを鳴らさない」と驚きとともに伝えた。”(3月14日付け中日新聞)

 前回に続いて海外メディアの扱いの内、アメリカと台湾の記事を紹介します。アメリカは日本の今までの地震対策を、台湾は日本人の礼儀正しさを称賛している。この称賛にも恥じないような行動をしなければならない。
 地震国日本である。その地震対策は何度もの体験をしながら積み重ねられてきた。特に阪神淡路大震災からは対策のレベルも上がり速度も急ピッチになった。その対策があってこの被害である。自然の驚異を改めて感じる。
 この震災に対する援助が凄い勢いで広がっている。ボクも昨日義援金を送金した。これが世界でも広がっている。オバマ米大統領は「国際社会が一致団結して日本の支援をしていかなければならない」とまで言っている。何か世界がひとつになっていく気がしてくる。日本の災害が機縁で世界が仲良くなれれば、ただ悲しい災害で終わらない。そんなことを願うのはあまりに愚かしいだろうか。




2011/03/14(Mon) (第1419話) 東日本大震災(その1) 寺さん MAIL 

 “【北京】中国メディアは、非常事態にもかかわらず、社会秩序が保たれ、被災者らが救援物資を奪い合うことなく冷静に対応する様子を絶賛。インターネット上でも「中国人は日本人を見習うべきだ」という論調が目だっている。
 「日本人は災難に直面してもどうしてあんなに冷静なのか」。十三日付の中国紙・新京報は、避難所の被災者が大声で言い争うことなく秩序よく並び、弱者優先で助け合っていると紹介。同日付の中国紙・第一財経日報は「民衆の冷静さは国家として最良のPRになる」と伝えた。
 仙台市の被災地をルポした新華社通信の記者は「信号機が停電し交差点に警察官も立っていないのに、ドライバーは互いに譲り合い、混乱は全くない」と驚きを隠さず、「そこからは再建の希望が見える」とつづった。
 一方で中国各紙は日本の防災意識の高さも評価。建築物の耐震を徹底していることや学校や職場で日常的に防災訓練を行っていることを紹介し、「国民に自助、共助、公助の意識が身についている」(第一財経日報)などとたたえ、中国も見習うべきだとしている。”(3月14日付け中日新聞)

 今朝の記事からです。3月11日に起こった東日本大震災については、日本中はもとより世界中を驚かせた。まだ余震が起きている状態だし、被害の全体状況も分かっていない、原子力発電所が危険な状態にある。まだ地震災害の最中の感じであるが、今朝の新聞には海外メディアの扱いを紹介した記事があった。それは日本の防災意識の高さや冷静沈着な対応を称賛するとともに、不屈の精神を期待する論調が目立っているとして、各国の記事を紹介していた。ボクも勇気を持ってもらうために用意していた話題を後にして、早速にその記事を取り上げることにした。
アメリカ、中国、韓国、ロシア、フランス、イギリスなどの記事を紹介していたが、まず中国の記事を紹介する。この文が日本をいつも非難している中国の記事かと疑がってしまう。これほど称賛されていいのか・・・いいと思う。中国の何か騒動のある時の状況を見て、今の日本を冷静に見れば当然このような見方になろう。この称賛をしっかり受けとめ、恥じないような行動をしなければならない。そうすれば、日本との関係も改善されると言う副産物も生まれよう。




2011/03/10(Thu) (第1418話) 愛知環境賞 寺さん MAIL 

 “二〇一一愛知環境賞で、三菱自動車の電気自動車「アイ・ミーブ」が最優秀の金賞に輝いた。そして創設以来初めて、中小企業が同時に金賞を受賞した。環境ニッポン、すそ野は広く、層は厚い。
 愛知環境賞は万博開催の二〇〇五年に愛知県が創設し、先駆的な企業や団体をたたえている。最優秀の金賞は、トヨタのプリウスやコカ・コーラの省資源ボトルなど、名だたる企業が受けてきた。(中略)
 もう一つの金賞は、アルミ部品鋳造の富士金属(大治町)と産業設備の大弘(清須市)の省エネ保持炉。県内の町工場とベンチャー企業の共作だ。溶かしたアルミをためるルツボの材質を鉄からセラミックに変更し、内側から保温する方式にして、使用電力とCO2を六割カットした。富士金属専務の高橋達三さん(46)は「中小企業も地球環境に貢献できる。これを世界に広めたい」と野心を持った。
 温室効果ガスの高い削減目標や、新興国のあおりを受けて、「日本はもうだめだ」という弱気な空気が強すぎる。だが、例えば環境という地球規模のトレンドや、そこから生じる課題をばねにして、これから世界に羽ばたく技術やアイデアを秘めた企業は、地方にも決して少なくない。
 そんな企業を発掘し、強く背中を押すような、仕組みと舞台を工夫するのが、行政や経済団体などの役割だろう。歯車さえかみ合えば、日本の隠れた環境技術は、もっともっと、世界へ飛べる。”(2月23日付け中日新聞)

 社説からです。フィランソロピー賞に続いて企業の賞の話である。日本は資源の少ない国である。技術で豊かな国を築いてきたと言っていい。愛知県の製造業はその代表である。そして今はその技術も環境に配慮した物でなければならない。愛知万博を記念して愛知環境賞を作ったという。自然の叡智をテーマにした万博にふさわしい賞である。愛知県民でありながらこのような賞があることを知らなかった。
 日本の製造業は中小企業に負うところが大きい。大企業もすそ野は中小企業に負っているのである。しかし、その中小企業が怪しくなってきている。その中小企業に賞が与えられた。素晴らしい、良かったという思いである。日本の全就業者の内、給与所得者(サラリーマン)の割合は8割以上という。企業が元気にならないことには国民も元気にならない。そして企業は企業の利益を計るだけでなく、国民が元気になるような施策をして欲しいものだ。




2011/03/08(Tue) (第1417話) 占い師 寺さん MAIL 

 “いつもの場所で商売していると、思案顔の女性が席に座った。
 「何を占いましょう」「今の人生がつまらなくって・・・間違った選択をしたように思えてならないんです」「では、この神秘の鏡を覗いてください。別の人生を選んだあなたの顔が映るはずです」
 女性は思いつめた表情で鏡を覗きこんだ。そして、大きく息をついた。「なあんだ、今と全く変わらない」
 女性は憑き物が落ちた顔で帰っていった。その姿を見送り、占い師はつぶやいた。
 「変わらないに決まってるさ。これは、ただの鏡なんだから。結局、迷う人間は、どんな選択をしても迷うもの。これで割り切って生きてくれればいいんだけどな」占い師の前に、また新たな悩める女性が座った。”(2月20日付け中日新聞)

 「300文字小説」から名古屋市の主婦・司馬田さん(34)の作品です。なかなか含蓄のある作品である。こういう人は作者が言われるように、別の人生を歩んでいたとしても、また同じように悩んでいるのだろう。どうにもならない過去を悔やんでも何もならない。過ぎたことは過ぎたことと割り切り、先を見て歩むより我々には方法がないのだから。言うは易し、行うは難し。しかし、学んで行うのである。先回の「一灯あれば」で斉藤一斎先生が言われるが如くである。そして、失敗も財産である。
 この女性は「顔は人生を表す」という言葉を知っていたのだろう。だから鏡をみて、自分にはどういう生き方をしてもあまり変わらないのだと、納得したのだ。ボクは占いと言った類は全く信じないが、人に安らぎを与えられればそれもまた役割があると言えよう。そういう意味でこの占い師はその役目を十分に果たされた。




2011/03/06(Sun) (第1416話) 一灯あれば 寺さん MAIL 

 “   「一灯あれば暗夜もこわくない」   佐藤一斎
 人間の一生には暗い闇のなかを歩くようなことが、しばしばある。というより、そのほうが多いかもしれない。しかもだれも頼れる存在がなく、たったひとりで心細い旅をつづける。そんなときに、ほんとうに頼れるのは自分だけだ。自分は自分のちょうちんなのだ。暗い足もとを照らし、安全な道に導くちょうちんなのである。(中略)
 かれに有名な三学のいましめ、というのがある。意訳すると 
・子どものときから学べば大人になったときに、世の中のためによいことをなしとげられる
・大人になっても学びつづければ、活気を失うようなことはない
・老人になっても学んでいれば、世の中のために努力したことを、多くの人がおぼえているので、死んでもほろびることはない。
 つねに前むきなのだ。したがってかれの教えは「実行」を前提とする。いたずらな字句の解釈への没頭などしない。「学んだことは必ずおこなえ。おこなえないようなことは学問ではない」と唱え続けた。
 現在、恵那市では、この ″三学″を″まちづくり″にリンクさせて、子どものときからその趣旨を浸透させ、環境づくりの土台にしている。「まちづくりは心づくりだ」ということだろうか。”(2月19日付け中日新聞)

 堂門冬二さんの「先人達の名言録」からです。前回に続いて名言を紹介します。佐藤一斎は岐阜県恵那市岩村の出身で、晩年に幕府の昌平坂学問所で教授を務めた幕末の学者です。人は一生、学んで学んで実行しようという訳である。よく分かるが、一生学ぶことは難しいし、それを実行することは更に難しい。学んで実行しなければ意味がないと言われるが、意味がないとは思わぬが、実行しなければ意味は小さい。きつい先生である。
 一斎先生の出身地の恵那市がこの「三学」を子供の頃から浸透させているという。恵那市は3回ほど前に紹介したフィランソロピー大賞特別賞受賞の加藤製作所のある中津川市の一つ名古屋寄りの町である。地方都市も頑張っているのだ。
 ボクは下手な議論をしているよりまず行え、と言う主義である。行う前にいくら考えてもそのようになることは少ない。行いながら考えればいい、修正していけばいい。と言いながら、ボクはこれでよく失敗をしてきた。失敗も財産である。




2011/03/04(Fri) (第1415話) 時というもの 寺さん MAIL 

 “   「時というものはあるんじゃない つかむものなんだ」  安田理深
 時は平等に与えられている。その時をどのように活かすかは個人によって異なる。過去現在未来の三世に渉って続く時は、また唯一・一回性の時でもある。その時をチャンスとして活かすかどうがは大事なことである。
 よく時は金なり、ともいわれるように、時間はまた金銭と同様の貴重なものだから、無駄にしてはならないといわれてきた。時を自分のものにするタイミングを失ってはならない。例えば、まだ湿った木を集めて、それによって火を得ようとしても、それは無駄な努力に終わる。それはいまだ火を得るだけ乾ききっていないからである。
 安田先生は、時はただ単に与えられているというものではなく、つかむものといわれる。それは積極的な事柄でもある。”(2月19日付け中日新聞)

 中村薫さんの「今週の言葉」からです。考えてみれば、寿命のあるものにとって時間は何よりも大切である。与えられた時間が過ぎれば死ぬのである。死ねば金どころではない。しかし、その時間も働きかけねば無為に過ぎていく。取り戻しはきかない。働きかけてつかむものなのだ。そうして時間が生きてくるのである。もちろん働きかけ続きでは疲れてしまうので、そんな時に過ごす無為は無為ではなかろう。
 この時とはチャンスと言い換えても出合いと言い換えてもよかろう。するとボクが平生よくいっている言葉と同じになる。このチャンスは平等に来るとは言い難いが、それでも多かれ少なかれ誰にも来る。つかむかつかまないかによって人生は大きく違っている。つかむには能動的な心がけがいる。その心がけは誰もが持っているが、その心がけの大小が違いになるのだと思う。




2011/03/02(Wed) (第1414話) たこあげ祭り 寺さん MAIL 

 “一宮市光明寺の138タワーパークで13日、全国の創作だこがそろう「たこあげ祭り」が開かれる。日本の凧の会尾張一宮支部会長の沢木寛さん(60)が企画。「尾張地方のたこ文化を盛り上げたい」と、三世代の一家総出で祭りを支える。
 沢木家はものづくり好きで「必要なものは自分で作れ」が家訓。十年前、同所でたこあげを楽しむ凧の会東海支部メンバーと出会った沢木さんが妻都誉子さん(61)長男泰孝さん(37)を誘い、たこづくりに没頭し始めた。全国の大会を転戦するので、交換用に多い時は月30個以上を作る。多彩な絵柄を描き分けるのも楽しみだが、尾張のたこの特徴である骨組みの意匠性にもこだわる。
 泰孝さんの長男虹稀君(12)ら5人の子どもたちも、たこに囲まれて成長。「現代の子の遊びは携帯ゲーム機など下を向くものばかり。たこあげは常に上を向いているので教育にも良い」と泰孝さん。沢木さんとともに、近隣の保育園や小学校での出前講座にも″引っ張りだこ″だ。
 「ひ孫が生まれ、四世代でたこあげをするのが夢」と語る沢木さんは「それまでは、尾張のたこ好きをもっと増やすために頑張る」と意気込む。当日は全国30団体の競演やたこ作り教室がある。沢木さん一家は長女、次女の家族も含め14人がスタッフを務める。”(2月12日付け中日新聞)

 記事からです。家族、親族が総出で一つのことに熱意を燃やす、素晴らしいことである。これもありそうでなかなか難しいことである。たこ作りは絵柄から描くとなるといろいろな能力が必要となる。それぞれの能力に応じて分担されているのだろう。共同作業にもなろう。そして、祭には一家14人がスタッフを務められるというのだから、何とも晴れがましい。
 沢木さんがたこ作りを始められたのは10年前、たこを楽しむ人に出会ったのがきっかけと言われる。きっかけを上手につかまれた結果が今である。人生の成り行きを決めるきっかけは小さなものである。チャンスは毎日訪れている。ボクも次の人生に向けてまだまだねらっていきたい。
 どんな結果だったろう。記事にならなかったろうか、もし見落としていたら残念だった。



川柳&ウォーク