2010/12/06(Mon) (第1372話) これを使って |
寺さん |
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“十年ほど前のこと。名古屋市中川区の高木千里さん(四五)が家族で岐阜県下呂市の温泉入浴施設へ出掛けたときの話だそうだ。 長男と次男は父親が、高木さんは二歳になる娘さんを連れて脱衣所に入った。ところが、財布には百円玉がなくてロッカーが使えない。娘さんに「困ったねえ」と話していると、それをそばで聞いていた湯上がりの若い女性がスッと手を差し出し「これ使ってください」と言う。百円玉だった。うれしかった。でも、突然のことで驚いてしまい丁重にお断りし、玄関の自動券売機の隣にある両替機まで千円札を壊しにいった。その後高木さんは湯船に漬かりながら考えたという。なぜ断ってしまったのだろうかと。そのころ、三人の子育て中で外出するのが大変たった。とにかく「人に迷惑をかけないこと」ばかりに気を使っていた。そのため、せっかくの厚意を素直に受けることができなかったのかもしれない。 そんなことを考えつつ湯から上がると、すぐ横で裸になった年配の女性が「あっ、百円がない」と声を上げた。高木さんは「これ使ってください」と百円玉を差し出した。無意識に。それも初めてのことだったという。おそらく「してもらった」から「してあげる」ことができたに違いない。そんな自分自身の行動にも驚いた。「人に甘えてはいけないと思っていましたが、みんなに支えられて子育てしていることに気づいた瞬間でした。今後も受けた恩を人から人へとつないでいきたいと思います」という。”(11月28日付け中日新聞)
志賀内さんの「ほろほろ通信」からです。突然の親切に戸惑うことは多い。そして、つい遠慮してしまう。時には裏心もあろうが、大方は親切心である。相手も勇気をふるって声をかけたのである。ここはその勇気に報いる為にも冷静に親切を受けた方が良い。 受けた親切は高木さんのように恩送りで次に伝えればいい。恩送りについては2007年1月9日の第709話や2009年7月2日の第1133話でも紹介している。 先日ラジオを聞いていて、日本人は助けを求めれば7割の方が助けてくれると言っていた。助けを求めなくても2割の人は助けてくれるとも言っていた。これはこの話からも頷ける。日本人は親切なのだ。あまり肩肘を張らないで自然体で生きることであろう。助け助けられていけば社会は和やかになり、無縁社会などということもなくなろう。
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