2009/09/04(Fri) (第1164話) あなたならどうする? |
寺さん |
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“右の乳房に嫌な痛みを感じ、乳がん検診を受けた。超音波、マンモグラフィー・・・と検査が進んだ。「乳がんです」と医師。七年前の直腸がんに続いて二度目のがん告知である。幸い温存手術が可能だという。 七月中旬、二時間ほどの手術を受けた。数日後、まだ残っているかもしれないがん細胞を死滅させるために抗がん剤治療を勧められた。副作用の一つとして髪の毛がほとんど抜けるという。エツと息をのみ《そんなの絶対にイヤ》と心で叫んだ。消灯時刻が過ぎた薄暗い病室で、《やっぱり嫌だ》という気持ちと(仕方がないのかなぁ)という気持ちが葛藤していた。 お見舞いに来てくれた友達に、迷っている気持ちを伝えた。そして聞いてみた。「あなたならどうする?」と。間髪を人れず、答えが返ってきた。「髪の毛ごときで何迷ってんの。そんなに嫌なら髪が抜ける前にツルツル坊主にして、ついでにかつらをかぶれば済むことじゃん」すごい迫力と説得力に、何だか気持ちがスーと楽になった。「なるほど。そうだよな」と、笑顔になれ。退院二日前のことだった。”(8月13日付け中日新聞)
愛知県豊田市の松波さん(女・64)の投稿文です。女性なら髪で迷う気持ちも分かる気がしますが、そこは周りの人の助言である。この友人は実にスッキリしている。今何が一番大切か、今何をしなければならないか、間違えないようにしなければならない。 実は妻の妹も昨年乳ガンと分かり、抗ガン剤で丸坊主となり、手術で乳房も取った。今年の7月には友人が喉頭癌で声帯を痛め、また別の同級生は直腸癌で肛門を取った。ボクにはショックが続いている。 そんな中、先日先輩と話していて関西大学の藤井美和准教授の話を聞いた。帰ってインターネットで調べてみた。その話は8月20日にNHK教育テレビで放映された内容であった。「死の疑似体験」というもので、ボクの理解で簡単に紹介すると「12枚のカードを用意し、自分の大切なものを書く。そして、2枚のカードを取り出し、そのうちの大切なもの(カード)を残し、他のものを自らの手で破る。次に残りの10枚の中からまた1枚を取りだし、先の1枚と比べ大切な方を残し、他を破る。それを繰り返していく。最後には最後に残った1枚も破り捨てる。」となります。カードには「両親」「友人」「仕事」や「愛」、「命」と言ったものが並び、死に近づくというのはそれらを順になくしていくことだと言う説明になります。この疑似体験はかなりなショックで学生の中には泣き出す人もあったとか。 ボクの年になると、この無くすものがどんどん多くなっていきます。「命」を書いた人は多分「命」が最後に残るでしょう。「命」を犠牲にしても残すものがある人はまた一つの幸せと言えるでしょうか。
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