川柳を味わおう
ち た の 風
川柳東浦の会合同句集第5集 (平成12年3月発行)
【 序 】 二千年二十年二十人 川柳東浦の会の例会は、少しの雨風には 曝されたが、滞りなく開かれてきた。集まりには たくさんの方が行き交わった。喜びも苦渋も遺した。 たくさんの作品も残してきた。作品展や作品集も 企画した。ともかくミレニアムの記念の花火下での このミニ合同句集の発刊。このことを燃焼源として、 さらなる歩みを続けたいものである。 2000.02.02 川柳東浦の会主宰 渡辺和尾 |
【 民 夫 】 18年の今になっても他人さまから「川柳って なに?」と聞かれて、返事をまともにできないまま・・・ 靴下の底からあすを眺めている 優しさを孫の手と比べ合い 松に雪 小さな決断をしよう 今朝もまた梅の蕾に見送られ 少しずつ目覚めて春についていく |
【 千 津 子 】 夫に言わせると私は「子どもの夢は見ない母」 とか。確かに娘二人のいるいまも、 頑なに自分の趣味を守り続けている。 私の歩幅 あなたに届かない 選択肢 どちらも外れの可能性 水鏡 こちらが幻かも 必然でなく偶然でここにいる 車窓から煙突見えてテリトリー |
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【 愛 】 世代が代わりつつある社会の中で、わたしの 川柳は良き友に守られ、明るい明日を見つめている。 鍵持って 四人それぞれ出かけます 三連発の花火が上がり暗闇に お隣とおんなじ花を植えてみる 老眼鏡かけて葡萄の品定め 青空の好きな友だち集まって |
【 ま き こ 】 3さいのころからつくったせんりゅうです。ころんだり したとき「なにかおもしろくいえないかな」とかんがえます はらっぱにおひさまがてるかにあそび こいしすべりこどもがひろうたいようのかぜ こうえんでこどもがあそびひのひかり ゆきのこり こどもがそりであそびけり ぺったんとようふくねてるふりをする |
【 八 重 子 】 この20年、川柳を作る楽しさや苦しさを味わい、 前を向いて歩くことができたと思う。私たちに乾杯。 鼻歌で二、三のことは切り抜ける 好きになる前は普通の桜の木 青葉若葉に衝動買いをしてしまう 草の勢い私の勢い まだ互角 あくまでも妻の立場で追う蛍 |
【 靖 一 】 一番大切にしているのは、自分も含めた この世界から、なにかを切り取ろうとする心の動きです。 川沿いの小道の上に立っていた いつまでもここに留まっていたい キラキラと川面は揺れる 音もなく 音はないが水はゆっくり流れている 歩きだす 川の流れよりゆっくりと |
【 英 人 】 何となく走ってきたこの20年、人生の中で重要な 年代であったろう。そう気づいた今、愕然とするが、 自主的に生きられるのはこれからだ。 雨の中ゆっくり歩き探す夢 喜喜として青信号の罠に落ち 青い実が落ちて不安な夏を迎え 夜の客 言い訳をしてドア叩く 風過ぎる 一瞬優しくなる会話 |
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【 幸 智 子 】 <時>に生きて きみの母であることに きみの妻であることに感謝し きょうも川柳を楽しむ 川上が濁り始めた 秋のこと 気にかかる人がとなりの席にいる 森を出たところで待っている介護 ダメージの大きい顔を洗っている 鍋を磨くときはなんにも考えぬ |
【 白 紅 】 これからは、初心に返り、心に 余裕を持って、勉強を続けたいと思っている 鶯の初音につられテレビ消す スーパーで買った土筆で春を食べ 水鳥もペアーになって春の川 雨音に予定ふたあつほど消えて 三階までよくぞ登った蝸牛 |
【 和 子 】 どこまでが空なんだろう いつまで 空があるのだろう空を仰いでいるわたし 煌めきのように開幕ベルがなる 西暦二千年がどうしたって 秋の天 お隣の駐車場から朝が来る 病院で順番通りに待っている いつもの薬を貰って帰るおばあちゃん |
【 ち づ 】 20年、無我夢中の連続でした。76歳で 句集のお仲間に入れていただけますこと、夢のようです 童謡を歌えば春の心地する 来年も生きる望みをしっかり持つ 思うばかりで流されてゆく落ち葉 人並みの暮らしが欲しい蓑虫でも 意地捨てれば浮かぶ瀬もあり笹の舟 |
【 典 子 】 心豊かな日、優しい気持ちを川柳に。また、 つもった怒りは、それなりに一句に。 夢で逢う君はいつでもシャボン玉 きょうの夢 きのうの夢と繋げない 置き去りにした夢捜す花畑 夢いくつ近くなったり遠くなったり 風船を放せば夢も風の中 |
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【 風 子 】 一人になって二年が過ぎます。元気で好きなことをして いたら、哀しみを忘れるときがきっとくると信じています ふとん干す 思考もふわり小春日に 欅の木 耳を当てると水の音 芽吹く木の下で私も囀って 散歩道 わたしの地図が完成し 鳥影を追えば淋しさ増してくる |
【 美 保 子 】 小さな、小さな、些細なできごとを川柳に。5年ぶりに 発刊される合同句集に参加できる幸せを噛み締めて 優しさが身を滅ぼしていく定めとも 輪の中で我が全身を晒している 決心がつかないうちに背を押され 生きているからあなたにもまた会える もう一つ心の奥にある扉 |
【 昌 利 】 毎日の自分を素直に眺める<心>と、 <五七五の十七音字>は、これからも大切にしたい 友がいて境界線のない地球 確実な歩幅で丘に来たけれど プライドを畳んで見てる万華鏡 同心円 はずれた後の孤独感 少々の波は覚悟で先頭に |
【 和 尾 】 句集というと、構えてしまいがちだが、 作品ファイルからの自己を素直に提示するまでのことだ 美しく生きるしかない なにもなく 他人という水が集まり川となる 花を見ている 夕暮れが近くなり 朧なる果ての静かなものたちよ 真ん中に架けてあるのは夢の橋 |
【 川柳東浦の会 合同句集発刊の歩み 】 ・第1集 1981年3月1日 ・第2集 1983年12月1日 ・第3集 1986年12月10日 ・第4集 1995年5月18日 ・第5集 2000年3月15日 |
【 お 断 り 】 ・短文は掲載文から適度に省略してあります。 作者はご了解のほどお願いします。 ・一人ずつタイトルが付いていますが省略しています。 ・一人40句の掲載のうち最初の5句を紹介しています。 |